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なにを頑張ったところで、未成年の教師などが本職の教師にあれこれ意見出来やしないのだ。

ムーディがスネイプにどんな説明をして、マルフォイがどんな罰を受けるのかなど知りたくても、知ったところで口出しできるわけでもない。

雹は一日の楽しみの一つである風呂に浸かりながら、夕方のことを考えていた。




『・・・あの目、かなぁ』




怖かったのだと、思う。



彼が死喰い人の一人であることは確認済みだった。

近寄ったときにわずかに雪獅子が反応したし、彼の発する声が微妙に彼個人の本来の声でないことも注意していれば気が付いた。

彼はマッド・アイ・ムーディではない。

アラスタ―・ムーディ、何人もの死喰い人をアズカバン送りにした闇払いなどではない。

ポリジュース薬を一時間おきに摂取することで姿を偽っているだけの偽物。

本来の姿はその真逆に位置する死喰い人、バーテミウス・クラウチ・ジュニア。

母親を見代わりにアズカバンから脱獄し、先日のワールドカップでは闇の印を打ち上げた「あの人の最も忠実な下僕」。



それほどの人物が生徒たちのすぐそばで、あろうことか教鞭を取っていると思うと背筋が凍るような感覚に襲われる。

一年生の時には感じなかった危機感だった。

あの頃も同じような状況だったはずなのに。

三年前の闇の魔術に対する防衛術の教師クィレルは、死喰い人である事実に加えてターバンを巻いた頭に例のあの人をくっつけていた。

だがそれを知っていても特に恐怖は感じてはいなかった。

見た目がああであったのもそうだが、多分それだけではないのだろうと解っている。



『・・・・・・』



教師生活三年目。

生徒は守るべきもの、という意識が自分に染みつき始めているのだろう。

生徒はかわいい。

思い通りにならないところも面倒くさいところも全部かわいい。

その生徒のすぐそばをアズカバンの脱獄犯が歩いている。それが怖いのだ。



(ブラックは無実だと元から分かってたしな・・・・・・)



湯を数回顔にかけ、目を閉じて反芻する。

結構長いこと熱い湯に浸かっているが、雹はのぼせにくい性質だった。



(だけど、それを明らかにするのは今じゃあ無い)



いっそすべてを校長に知らせてしまって、説明も後回しにして城から追い出してしまいたい。

そんな考えが頭に浮かぶがすぐに頭の中から外へ追いやった。



『もっと、しっかりした方法で。成功させなきゃ』



ざばりと風呂から上がり、濡れた髪を後ろへ流せば気持ちもリセットされる。

肌寒い9月の初日。

梟がコンコンと窓をたたく音がしたので、さっさと浴場を後にした。












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