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一人じゃこの試練≪ゲーム≫からは脱出できない。

雹は切実にその言葉を噛み締めた。










「なんだよこの樹・・・・・・」





喉の奥が渇き、妙にかすれた声が発する。

この周辺に満ちている瘴気とでも呼ぶべき闇の魔力が少なからず影響しているのだろう。




自分の身長をはるかに超したそれを見上げる。

もしかしたらその全長だけで世界最大のクジラすら超越しているのではないだろうか。

実際は知らないが。









(なんていう、おどろおどろしさ・・・・・・)






どろりと垂れ下がる枯れ葉の束。

若い緑色をしていればご神木のように祭られても良いぐらいに立派な樹だ。

ただ、その表面は木炭を擦り付けたようにどす黒く乾き、悪臭を放っている。

枯れ葉に見える樹の先についているのは紫と灰色を混ぜた不気味な色。



おかしなことに、スズメやハトどころか、カラスさえもこの場所には存在しない。

もしかしたら土の中には微生物やバクテリアも生存してはいないのではないだろうか。






(樹・・・と呼べるのか?これは)





正確にはすでに植物ではないだろう。

雹は鼻をつまみながら観察を続ける。

これ以上近付いてはその場で気を失ってしまいそうだ。




これはもはや、樹の形をしているだけの、闇の力を練り集めて形創った巨大な魔法具≪物体≫だ。




(なんで、こんな場所に・・・・・・?)




ポケットに入った逆転時計を見る。

これの力で自分がどれほどの時間を遡ったのかは知らないが、現在地ぐらいは知りたい。



もう一度、黒い樹を見る。



これが一体なんなのか。

それ一つを考える。









(想像としては・・・多分、このあたりはもともと少しばかり闇の魔力が地理や風水的な理由で濃かったんだ。)


(それでその力をその辺にはえていた樹が吸って・・・吸収し、またその力に魅せられた闇の生き物が寄って来てまた濃度が高まったんだ。)


(けれどどういう訳か生き物が生きられないほどに濃度が高まって、とうとうこんな姿になった。というわけだろうか。)






だが、未来ではこんな植物の存在は知られていない。

これでも雹は東洋と西洋をはしごした優秀な留学生だ。

少なくとも表の世界にはこんな存在は知られていない。



ではなぜ、と。

考えて止まる。



まさか、と首を振る。

黒い幹を凝視する。








(まさか―――・・・)

(この樹が、あの『禁断の森』の―――・・・)

(過去の姿だっていうのか!?)






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