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ずる、ずる、とハリーは煙突から煤だらけになって這い出した。



眼鏡は割れ、硬い石の暖炉に仰向けでほうりださられて気分は最悪だ。

頭はガンガンと鳴り、胃袋の中身を吐き出しそうなのを無理に押しどどめる。



煙突飛行粉(フルーパウダー)での移動は失敗だった。

これきりにしたい。




そろりとほこりまみれの部屋を見渡す。


いやにリアルな人間の手首や頭蓋骨、血まみれのカードや刃物。

窓があって向こうの通りがみえる――どう見てもダイアゴン横丁ではない。



速くここから出なくては。そう思って出口を探す。


そこへ、最悪な客がやって来た。





ガラガラ、ガラガラ。


玄関ベルが鳴り、二人の親子が入ってきた。



よりによってこんなところでこんなときに。

そう思わずにはいられない顔。


ドラコ・マルフォイと、その父親らしき人物。





その男がカウンターのベルを鳴らし、するとそこへ店の主人が現れた。



なにやらマルフォイの父親と顔見知りらしい、媚々な声で話すその男はボージンと言うらしい。





マルフォイの父親はドラコに厳しいらしく、『輝きの手』に興味を持ったドラコに冷たく言った。





「あれを買ってくれる?」


「おお、坊ちゃまお目が高い!それは『輝きの手』と言いましてですね、蝋燭を差し込みますと手に持ってるものにだけしか見えない明かりになるのです、

泥棒や強盗には最高の味方でございまして」


「ボージン、私は息子に泥棒強盗よりはマシなものになって欲しいのだが」


「とんでもないですマルフォイ様!」




・・・と、言った後にマルフォイの父親はマルフォイを見、




「だだしこの息子の成績が上がらないようならば――行き着く先は、せいぜいそんなところかもしれん」




と。





ハリーは声を殺してマルフォイを笑った。


ハーマイオニーを贔屓するから自分が見劣りされるんだという言い訳をするマルフォイが口を開こうとしたとき、






ガラガラガラガラ、とベルが鳴った。

ハリーが隠れているキャビネット棚からは客の姿は見えない。


しかしマルフォイの知人らしい。


「・・おまえは!どうしてここに」



客はだんまりだ。

かわりにマルフォイの父親の方が口を開いた。



「・・・おまえは。いやその姿は・・」


「父上?」


「いや、なんでもない。・・彼とは知り合いか?ドラコ」


「え、そうだけど・・父上?どうされました?」


「もういい。後で話そう・・・先に外へ出ていろ」






ドラコとその客は店から追い出された。

先ほどの客もなにかを買いに来たのではないのだろうか。




ガラガラガラガラ!と古いベルの音が鳴って人の気配が消え、

マルフォイ氏もすぐに交渉を進め、いそいそと店から出て行った。



最後にマルフォイ氏の残した言葉を、ハリーは捕らえた。





「あのやろう。一体今までどこへ行っていたんだ」








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