桜 6 「・・君は、この鏡をどう思うね?」 『どうって・・どういう意味ですか?』 「たとえば・・この鏡がなぜ“みぞの鏡”と呼ばれるのか、それは分かるかね」 『のぞみ、を、みぞの、にひっくり返してるんですね。 溝にはまったように出てこられない、という意味もあるんでしょうけど。』 「・・・」 驚愕を覚えた。 この少女は、物事を客観的に、第三者視点で見たのだ。 11、12の少女の出来るようなことか? 「すつうを みぞの のろここ のたなあ くはなで おか のたなあ はしたわ=E・君はこれを読めるかね」 ダンブルドアは、鏡のふちに彫られている文字を読み上げた。 『この子供だましですか?』 子供だまし、と。 彼女は一瞥する。 『私はあなたの顔ではなくあなたのこころの望みを映す=E・こういった代物は謎めいた台詞が好きですね。』 『人の心に取り入るような物は恐れられるものなんでしょうね・・鏡に罪は無いのに。 でも校長がハリーにこれを探そうとしないように説得したことは否定しません。ロンが心配がっていましたし』 「・・そうか。・・では君は、それを覗こうとは思わんのか?」 『興味ないですね。』 現実にならない可能性の大きいものが映るなんて、虚しいだけです そう言ってスッパリと終わらせる。 しかし言葉とは裏腹に鏡に近付いていった。 『校長は何が見えたんですか?』 「・・つまらんものじゃよ。叶うはずの無いものが見えた。」 『フゥーン・・さしずめ、“失ったもの”ですか。』 ダンブルドアとしては、さらりと心情を察してしまうこの少女には脱帽だ。 そして彼女の願いがどんなものなのか、好奇心が涌いた。 「・・何が見えたのかね?」 『白いご飯に海苔と出汁巻き卵と明太子を食べてる自分です』 「・・“傲慢”を自称する君がかい?」 『そーです。・・というのは嘘でして。』 バレバレな嘘。 わざと、分かりやすい嘘。 『ニッコニッコに笑ってるハリー達が見えますねー。 あと校長と教師達と見たこと無い人までみーんな笑ってますー。』 笑っている自分、は見えなかったけど。 [*前へ] [戻る] |