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5・5


帰りたい。

その単語を雹は何度口の中で呟いたことか。


言い訳をするならまず隣でかぼちゃジュースを飲んでいる赤毛の美女さんの存在。

そしてこっちをなんともいえない、いうなら睨み付けているような顔をした真っ黒少年の存在。

ついでにつけるなら二つほどむこうのテーブルから負の念とオーラを飛ばしてくる男子生徒どもの視線。





・・スネイプにしてみればリリーからの食事の誘いは嬉しいに決まっているが自分の知らない野郎がくっついている状態。

まあわかる。女性との食事に男がまぎれていて嫌な顔をしない男性がいたらお目にかかりたい。



ついでにジェームス達なら。

リリーの正面にスネイプというスリザリンしかも男が座っているだけでも機嫌が悪いのに隣にはまた男が座っているのだ。

殺気立つのは止めて欲しいの一言に尽きるが。







そんなことをリリーの前で言えるわけが無いが、雰囲気を乱さないためにも顔には笑顔を作って会話をする。

リリーは雹にめっぽう興味があるらしいので随分と会話が弾んでいた。







『あー・・私、そろそろ寮に帰ろうと思うんだけど二人はまだ食べてる?』


「ううん。もう私は終わるわ、宿題をしなきゃ。セブは?」


「・・僕も、もう・・・」







帰る方法を調べるためとこの状況から抜け出したくて言ったのだが失敗に終わった。

リリーはなにも悪気は無いのだろうけど、スネイプは雹がリリーと2人になるというのが気にくわないのだろう。





結局、グリフィンドールの寮の前で別れる事になった。

後ろからジェームス達がストーカーしてきていることに気が付いてほしい。






『じゃ。おやすみリリー。』


「また明日ね、雹、セブ」


「・・また明日。」





ぱったん。


太ったレディの肖像画が描かれた扉が閉まり、雹はスネイプと2人きりというなんとも気まずい状態になった。







『・・じゃ、私はこれで』













雹はスネイプの傍にいるのことにいたたまれなくなり、逃げた。

逃げた先は中庭。人が居ないのが好都合だった。


走って原っぱに行ったら真っ暗だった。

びゅうびゅういう風が寒いけど構わなかった。


なにかここに来ないといけない、という感覚がした。










ばきっと小枝を折った音が聞こえた瞬間、あたりが本当に真っ暗になり・・真っ白になり・・気を失った。








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