桜
1
___幼稚園の頃、どんな風だった?
そんな事を聞かれても、覚えてないや。
小学校低学年の頃も、はっきりとは思い出せない。
小5、小6あたりがまだはっきりしている。
ただひとつだけ、
いまでも鮮明に蘇る記憶があった。
なんども続けて、同じ夢を見るのだ。
・・たしか、桜がキレイだった。
夢の中で、自分は夜の街を歩いていた。
暗い中にいても、別に怖くは無かった。
夢だと分かっていたから。
知らない町の中でも、怖いとは感じなかった。
これは、ゆめだもの。
・・ずっしりと大きな桜の木が一本あって、白く輝いていた。
その幹のところに登った。
自分はそのころ、かなりアクティブな女の子だったと思う。
ここはどんなところか、高いところに登って見渡して見ようと思ったんだ。
木登りをして、腰掛けたら急に目が良く見えるようになった。
何かを見つけて・・もっとよく見ようとしたときだ。
夢の場面が変わったのは。
___次に、どこかの家の中にいた。
夜中でもないのに、そこだけ静かだった。
隣の部屋からは、笑い声が聞こえていた。
幼稚園ぐらいの複数の子供の声と、大人の声。
イメージとしては、保育園。
妙に明るくて、なぜか遠くて。そっちに近付こう・・として、みつけた。
少女のとなりに、暗闇があった。
いや、暗闇のように静かなこどもがいた。
あんまりにも静かで、等身大の置き物かと思った。
『だあれ?』
『きみは、だれ?』
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