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「留学してすぐ、彼は僕が人狼だと悟って声をかけてきた。半年ぐらいが過ぎて、効果があるかはわからないけれどある薬を飲んでみないか、と。」



遠い所を見るような目で、ルーピンは言った。



「そして満月の夜、校長にも立ち会ってもらって僕はその薬を飲んだ。すると効果はすぐに現れた。身体は狼に変わっていくのに、心は人間のままだったんだ。僕はとても喜んで、彼に感謝した。

彼はスリザリンだったけれど、僕はいつもこっそり会いに行った。彼のする話はとても面白くて、彼が女の子にモテるのもよくわかった。ジェームズたちは相変わらず彼にちょっかいをかけていたけれど。

スネイプと初めて話したのも彼がきっかけだった。薬を改良するために彼とスネイプが一緒になって先生を丸め込んで地下室を使わせてもらっていたんだ。彼らの薬学の成績は誰より良かったから、先生も彼らに甘かった。

そして。彼が一度留学期間が切れて帰国していったとき、薬を作る人間が居なくなったとき、薬の調合をしてくれていたのはスネイプだったんだ。」



視線がスネイプに集まる。



「そしてもう一度、彼はホグワーツにやって来た。今度は途中入学と言う形でね。薬は改良を重ねて、最終学年になるころには満月の夜には背中の毛が逆立つ程度で済むようにもなっていたぐらいだ。

彼は卒業してからも僕に薬を作り続けてくれると言った。嬉しかった。けれど今僕が飲んでいるのはトリカブトの入った脱狼薬。彼が当時作っていたものはレシピがもう無い。本当にありがたいものだったんだ。

彼は卒業間際に退学になり、校長は東洋の魔法使い達に絶交され、東洋の秘密が詰まった薬のレシピはすべて抹消されたんだ。」



重苦しい空気が流れた。

退学。

一体サクラと言う人物が何をしたのか、そして話がどう進むのかまったくわからなかった。

ハリーが口を開いた。



「一体なぜ退学に・・・・・・?」


「・・・事を起こしたのはジェームズ。理由は簡単。リリーが彼を好きだという噂が流れたんだよ。」



ハリーは息を詰まらせた。

母の名前が出てくるとは思わなかったのだ。



「その・・・本当に、ハリーのお母さんは・・・・・・」

「噂はただの噂だ。彼は彼女を作ることは無かったし、ただの仲が良い友達だったと思う。けれどジェームズはそんな事はわからない。ただリリーにそんな噂が流れたことが許せなかったんだろう。

八つ当たりにジェームズは、彼が母国から連れてきていた珍しい猫を捕まえて、禁じられた森に捨てたんだ。そしてペットがなかなか帰ってこないことに気が付いてサクラが学校内を探していた所に声をかけた。君のペットは禁じられた森の中だよ、ってね。」



禁じられた森。

足を踏み入れたことのある場所であるがゆえに、どれだけ危険な場所なのかをよく知っている。

そこに猫を一匹で捨てたとなれば、どうなったかなど明白だ。



「サクラはものすごく怒った。大事な猫だったんだろう。僕も彼が猫に大きな愛情を注いでいたことはよく知っていた。何度も森のすぐ近くまで通って、猫が帰ってこないか祈っていた。ハグリットに猫を見なかったか何度も聞きに行っていた。

しかしとうとう猫は戻ってこなかった。それからというもの彼はジェームズと対立するようになった。来る日も来る日も喧嘩。嫌味を言い合ってお互いの寮の点数を減らそうとした。魔法薬学の授業なんて酷かったよ。いかに先生に悟られず相手の鍋に爆発物を投げ込むか頭を捻っていたんだ。」



あの時は大変だった、と苦笑いをしながらルーピンは言う。

スネイプは頭が痛そうにして額に手を当てている。




「それでも、彼は僕の薬を作るのを拒否することは無かったよ。僕はどうにかしてジェームズをサクラに謝らせて和解させたかったけど、上手く行く事はなかった。リリーもジェームズに謝るよう促したけれど、ジェームズにはそれがリリーがサクラを庇っているように見えたんだね。」



恋愛ごとが絡むとどこの時代もこじれてややこしくなるのは必然だ。



「そして問題はここからだ。サクラはふと、おかしなことに気が付いたんだ。≪どうやってジェームズは森に猫を連れて行ったんだろう≫と。彼はジェームズが動物もどきだと気が付いたんだ。鹿に変身したジェームズが猫を森へ連れ去ったんだと。薬を飲んだ後に僕が屋敷に居ないことにもうすうす感づいていたから、すぐに分かってしまった。」

「ジェームズはそれで焦った。ばらされてしまってはシリウスやピーターも同じく動物もどきだと芋づる式に分かるだろう。そうなればお仕舞いだ。サクラには最悪の形で負け、リリーとはお別れ、ホグワーツには二度と戻れない。卒業間際のクィディッチの試合も残っていた。」








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あきゅろす。
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