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つまりはルーピンの今の状況をざっくりと言うと、外に出たが最後、たちまち狼になってしまうわけである。

しかも薬を取りにスネイプが城まで走ったとしても、途中の道には恐らく吸魂鬼が待機している。

ブラックのもろもろの特徴、声や体臭を頼りに追ってきている奴らはスネイプに気がついたとたん襲うだろうことは確実。



叫びの屋敷でブラックと共に居た人間は皆仲間だと思われているだろうからこの集団の誰かが一人で外を行くなど自殺行為に等しい。

大体この状況でルーピンとスネイプが二人で守護霊を出しながら走り抜けてぎりぎり城にたどり着けるか出来ないか。

しかしそこに吸魂鬼のターゲットなシリウス・ブラックが追加されれば、たとえ防衛術に長けた二人でも生徒を三人引き連れ、その上ぺティグリューを逃がさないように見張りながら城まで特攻するのはどう考えても無茶だ。



唯一安全なのは何かしらの魔法がかかっているらしいこの洞窟。

暴れ柳の足元から顔を出したが最後、吸魂鬼に見つかりブラックの共犯として「執行」されるだろう。



つまりはこういうことだ。







「つまりは、ここで三竦み、と・・・・・・なんでこんな奴が混じって・・・」

「ふざけるな・・・こっちこそごめんだ」





どうせなら犬になって城まで走っていけばいいのに。

そしてグリムだーとか言われて蹴り飛ばされればいいのに。




グチグチ言い合いながら、ポケットからなにやら変な模様が描いている薄い正方形の紙を取り出したスネイプは、それを折り曲げ杖の先で叩いた。

すると朱色の紙はくしゃくしゃと形を変え、翼を広げた鳥のような形になって洞窟の外へと飛んでいった。

連絡用のものらしい。

雹の名前が飛び去った後に残った。

事情を知っている雹の私室へ向かって飛ばしたのだ。

それを見送り、思い思いの格好で洞窟の冷たい地面に皆囲うように座り込む。



最初に口を聞いたのはルーピンだった。






「えーっと、どうしよう」

「俺に振るな」

「・・・・・・」

「・・・あ、あの、ぺティグリューはどうしておくべきでしょう」

「・・・とりあえず俺が杖を突き付けたままでいればいいだろう」

「ねえ、さっき一体何が起こったのか教えてくれ・・・途中から記憶が跳んでるんだ」

「あー、あー・・・、吸魂鬼に襲われて洞窟に逃げ込んだんだよ」



「リーマス。あの部屋について聞いておきたいことがあるんだが」

「うん・・・なんでこんな場所でこんな騒げるんだろうね」




出っ張った岩に腰掛け、ルーピンは両手を組んで話し出した。

ちらちらとスネイプのほうを気にしながら、ゆっくりと。






「あの部屋は僕が学生時代、毎月満月の日に閉じこもる部屋だった。そこまでは話したね・・・」

「ああ。」



懐かしいものを思うような顔で口を開く。



「実際そうだった。窓から月の光が入ってくると自分の理性が消えて、暴れだしたいような気持ちになって、手当たり次第に屋敷の中を走り回っては物を壊して、自分を噛んだりしていた。酷い怪我をして医務室に行かなきゃならないことも多かった。

ダンブルドアはいろいろ出来る限りの事をしてくださった・・・狼の精神を落ち着けるという植物やら怪しげな花やら集めて、少しでも穏やかに一晩を越せるように。

そして3年生頃だったかな・・・僕らが今のハリーたちと同じ歳の頃。一人、留学生がこの学校にやって来た。最初僕には知らされてはいなかったけれど彼は――陰陽という術に頼って僕の苦痛を取り除けないか――ダンブルドアが東洋から招いた魔法使いだったんだ」


「招いた?」


「そう。魔法界の人狼についての記録や伝承だけでは限界があると考えた校長は、何か手がかりを見つけられないかと、様々な学会の権威と話をした。そんな中で一人・・・東洋の魔法使いの一人が、方法があるかもしれないと言った。

校長はその魔法使いの話に乗って、その魔法使いとあるものを交換した。校長が何を見返りに差し出したのかは僕にはわからないけれど、その魔法使いが校長に寄越したのがなんだったのかはつい最近、校長から教えてもらった。

そして――。やってきたのはその魔法使いの弟子だった。その魔法使いは――。弟子に人狼の変身を鎮める方法を探らせようとしたんだ。」


「リーマス、それってまさか・・・・・・」




「そう。

その弟子とは、僕らと同い年のスリザリン生、サクラのことだ」









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