□勝手にしてくれ
*
今から俺どうなっちゃうの!?
殺されちゃうの!?
まだ人生の5分の1くらいしか生きてないのに!?
そんな思考がチラつき、更にガタガタと震えだす体。
体ってほんと正直だよね。
もうそのまま失神しそうだもの俺のボディ。
このまま失神ってのもありだなぁって現実逃避をしていたら、俺の手首を拘束している赤羽がチラッとこっちを向いた。
俺は、反射的に目を反らした。
流石チキンな俺。
突然の赤羽の行動にもすぐ反応出来る。
うむ、日々の賜物だね。
全然嬉しくもない俺の特技に悦に浸っていると、赤羽がピタリと立ち止まった。
いきなり立ち止まったので、後ろにいた俺は赤羽の硬い背中にぶつかる事になる。痛い。
少し涙目になりながら、赤羽を見上げると眉間にシワを寄せた顔が。
「ひいっ!」
反射的に悲鳴を上げる。
これも日々の賜物だね。
俺は自分が悪くもないのに無我夢中で「すみましぇん!」って謝っていた。土下座する勢いで。
俺の誠心誠意(?)な謝り方に赤羽だって許してくれるはず…噛んだけど。
地面に視線を落としてブルブル震えていたら、急にふわりと背中が覆われた。
ダブっとした大きめな学ラン。頭まで被された学ランに俺は何事かと目をパチくりした。
「…被ってろ」
そう言って頭をポンと撫でられた。
赤羽…。
行動の意味がわからないんですけど。
何故に学ランを被せるんですか。
まるで逮捕された容疑者が、服を被って顔を周りから隠そうとする人除けみたいじゃないか。
俺は、決してまかり間違っても容疑者ではないぞ。
だってティキンですから。
あくまでティキンな俺は犯罪なんて大それた事出来ませんから。
ピンポンダッシュでも戸惑うティキンですから。
はっ…!
まさか、顔を隠す事によって俺の恐怖心を増幅させようとする魂胆なのか!?
そんな事しなくてもすでに恐怖でお腹いっぱいなのに!
まだ、俺に恐怖心を抱かせたいというのかこの人は!?
俺の震えが尋常じゃなくなったのは言うまでもない。
「…まだ寒いのか?」
突然予期せぬような言葉が上から降りかかる。
今何て?
寒い?
寒いって誰が?
「…お前風邪引いてんのか?」
何故そんな事を言うのだろうこの人は。
風邪を引いてたら何かまずい事でもあるのか?
俺の頭の中はクエッションマークでいっぱいになる。
別に風邪を引いていない俺は
「大丈夫でしゅ」
と答えた。
また、噛んだけど。
なんか死にたくなったけど。
すると赤羽は、また俺の手首を掴んで歩き始めた。
ゆっくりと。
まるで俺の歩幅に合わせるかのように。
何であんな事を聞いてきたのだろうか?
俺は赤羽の言動について些か疑問に思った。
だが、本人に聞ける訳もない俺は、黙って彼の後ろをついていった。
ほら、俺ティキンだから。
まぁ、只一つわかっているのは、赤羽の学ランで視界がフェードアウトされてて歩き辛いという事だけだ。
もしかしたら、ただたんに嫌がらせしたかっただけなのかもしれない。
いや、もしかしたらじゃなくて絶対そうだ。
そうに決まってる。
体の震えが少しだけマシになっていた事に俺は気づかなかった。
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