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□勝手にしてくれ





「んで、あの最悪最凶不良の赤羽淳也に呼び出されて何話したんだ?」

ニコニコ顔で質問してくる裕太。

…やっぱり聞いてきやがったか。

まぁね、そりゃあんな学校一…つーか地区一有名な不良さんに呼び出されれば誰だって気にはなるし、心配するよね。
でもね、心配してくれるのは非常に嬉しいんだけどね、裕太のね、背後にね、なんか得体の知れない空気が澱んでる気がするんですけどね。
明らか心配してますな空気じゃないような気がしてきたんですけどね。


「…黙秘権を主張したいんですが…」
「・・・。」
「ははは、やっぱり無理ですよねぇ」


裕太の無言の笑顔は憲法第何条か忘れた『黙秘権の主張』をさせてはくれない威圧感があった。



そんな裕太に逆らえるはずもない俺は正直に話す事にした。


「…えっとですね、実のところ何話してたのかあんまり覚えてないんですよね…」


そう、あの時の俺はあまりの恐怖で頭が麻痺状態に陥りほとんど覚えてないのである。

覚えているのは、何の応答かわからない返事と、最後に不良さんが捨てゼリフ(?)を吐いた「…放課後迎えに来る」というところだけだ。


…そういや、そうだった。
すっかり忘れていたが、放課後またあの人と会わないと行けないんだっけ俺。

絶望にも似た顔色になる。


「どうしよう裕太〜。
俺、放課後確実に息の根を止められるかもしんない…」

「何?放課後に赤羽とデスマッチでもするのか?」

「裕太のアホ。俺は本気で自分の身心配してんのに何でそんなオチャらけた事言うんだよ」

「ごめんごめん。だって人事だしさ」

「・・・。」


今ほどマブダチである裕太をぶん殴りたいと思った事はない。









***



嫌な時間に限って早めにやって来るもので。
放課後になってしまった教室内に有言実行の如く不良さんが入って来た訳で。
そのいきなりの不良さんの登場にクラスメイトがいっせいに顔を青くさせた訳で。
俺はというと不良さんを目の前に小便がチビリそうなほど震えていた訳で。


北の国からの口真似をするほど俺は酷く混乱していた。

だってガチで怖いんですもの。

助けを求めようと裕太にちらっと視線を向けると至極楽しそうな笑みで瞳をランランとさせていた。

こいつ…、マジでぶん殴りてぇ。



「・・・。」

「・・・。」

不良さんは黙って俺を睨みつけている。
マジ半端ない恐ろしさで。
その切れ長の目がまるで血走った獣のようだと思った。



「…おい」

「イエッサ!」

勢い余って軍隊みたく敬礼してしまった。
なんか恥ずかしい。
つか、裕太てめぇ腹抱えて笑ってんじゃねぇよ。

マブダチのピンチだというのに助けの『た』の字も行動しやがらない、逆にその様子を見て爆笑してやがる裕太に俺は出来うる限り睨みつけてやった。
(しかし、裕太は俺の睨みにお構い無く笑っていた。)


「…行くぞ」


前方から低い割によく通る声が鼓膜に降ってきたと思うと俺の手首をぐいっと掴み連れ立った。
一瞬何が起きたのかわからない俺の思考回路は突然の行動によりフリーズしてしまい、されるがままに後を小走りでついていった。


学校の校門を出た辺りでやっと事態を収集した俺の脳内は、クラッカーが弾け飛ぶパーティーと化していた。
つまり、わかりやすく言うとパニックに陥っていたのだ。

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