□勝手にしてくれ
*
そうは思うけども体が全く動かない。
もう、自ら進んでデッドロードに向かって行ってるね俺。
俺が金縛り状態に陥っていると不良さんがいきなり手を振り上げた。
うっぎゃあ殴られる!?
お願いだから顔だけは止めて下さい。これ以上不細工になりたくないんです。
本当マジ頼みますから。
ぎゅっと目を瞑り衝撃に備えた。
だが、おかしな事にいくら待っても痛みはこない。
恐る恐るそろりと薄目を開けてみると衝撃的なシーンが広がっていた。
あの恐ろしい不良さんが。
あの学校一恐ろしいと有名な不良さんが。
顔に手を添えながらブルブルと体を震わせているじゃありませんか。
しかも、ただ震えてるんじゃない。
真っ赤な顔してだ。
・・・・・。
(・∀・)?
ΣΣ( ̄□ ̄;)!?
あの恐ろしい不良さんが。
あの学校一恐ろしいと有名な不良さんが。
赤面している!?
しかも心なしか涙目になっている気が。
何、これどんな状況?!
誰か俺に説明してくれ!
意味のわからない恐怖と焦りでパニックになる俺。
さっきとは違った冷や汗が吹き出た。
「・・・おい」
「はひっ!?」
オロオロしている俺にいきなり話しかけてきた不良さん。
あまりにも突然だったので激しく驚いてしまった。
今日1日で五年は絶対寿命が縮まった気がする。
いや、確実に縮まってるねこれ。
「…ほんとにいいんだな?」
何が?
って言える訳ねぇー!
俺は首が千切れるんじゃないかってぐらいブンブン頭を縦に振った。
「そうか…」
そうポツリと漏らすと不良さんは頬を少し染めたまま視線を俺から外した。
「…放課後迎えに来る」
そう言うと俺に背を向けて歩きだした。
俺はその姿をポカーンと眺めていた。
「た…助かったのか…?」
不良さんがいなくなった後、緊張の糸が切れたのかダラリとうなだれる。
遠くで昼休みの終わる鐘が鳴っているのが聴こえた。
さっきの余韻のせいで膝がまだガクガク震えている。
俺は壁に持たれながらズルズルと腰を落とした。
何が何だかわかんなかったけど、とりあえず命だけは助かって良かった。
ホッと胸を下ろし生きてるって事の素晴らしさを心底感じた。
『…放課後迎えに来る』
「・・・・・。」
良くねぇ…。
まだ死亡フラグがビンビンに立ってんじゃん。
放課後に持ち越されただけで全く助かってねぇし。
・・・。
…このまま早退してもいいですかママン?
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