見える先に向かうだけ!
昔話
「ねえ、おじーちゃん」
ところ変わってここは祖父の部屋。
二人暮らしにしてはやはり部屋が多すぎる気がする。
さらにその部屋の広さも広すぎる。
祐樹もまだ行ったことがない部屋もまだまだあるだろう。
そんなことは置いといて、祐樹は祖父に聞きたいことがあった。
「なんじゃ?祐樹よ」
「おじーちゃんには不思議な【チカラ】があるの?」
「ふむ、やはり気になるか」
「うん」
「よし…その前にある昔話をしてやろう」

「昔、ある島に並外れた運動能力を持った幼子がいてな、
その幼子はある日、船で遊びに行ったそうだ」
「遊びにいく池はそんなに深くないし、幼子の身体能力なら泳ぎきれるだろう、と両親もあまり気にしてなかったんじゃ」
「幼子はいつものように船を漕いだり魚を釣ったりしていたそうな」
「その日は太陽が温かくて、ぽかぽかして気持ちがよかってな、幼子は少々眠気を感じて寝ころんでいたんじゃ」
その時異変が起きた。
急に波がたち、池全体がグラグラと揺れた。
幼子はただの地震だろうと思っていたので平気なそぶりだった。
そして次の瞬間、幼子の乗っていた船がなにかに押されるような不自然な力を受け転覆してしまった。
普段の幼子なら泳いで帰っていたが、どこかを打ったのかそのまま意識を落としてしまったのだった。

幼子はふわふわする感覚とともに目をさました。
「ここは…?」
『また迷い込んできたの?最近多いわね』
『ここは人に【チカラ】を与える世界。ほら、よくいるでしょ?選ばれし者とか言われてる人。そういう人たちは大抵ここで【チカラ】を与えられた人たちなのよ』
「ちから…?」
『まあ、生まれつき【チカラ】を持っている人もいるけどね』
「ねえねえ、おいらにもその【チカラ】ってあるの?」
『そうね〜、一応あるわよ。いつ、どんなときに、どのような形で出るかはその人によるけどね』
「おいらにはどんな【チカラ】があるかわかる?」
『それはわからないはね、【チカラ】はその人の望んでいる物、その人の心や本質を表していたりするから、そういう意味では種類を一番知っているのはあなたかもね』
「う〜ん、わからないな〜」
『ま、とりあえず頑張りなさい【チカラ】が与えられた時点であなたはふつうの人間じゃなくなったから、【チカラ】の種類はここからでたらすぐにわかるかもしれないわよ?たまにここで【チカラ】が発現する人もいるけどあなたはどうかしらね?』
「…どうやって帰ればいいの」
『あ、そかそか私が送らないと。あなた、歩いて帰る?それともここから飛んでいきたい?』
「う〜ん、文章の限界も近いから飛んで帰ることにする」
『文章…?ここって誰かの文章の世界なの?まあいいわ、飛ばすけど意識も飛んじゃうからね〜』
「え、気絶するの」
『じゃあね〜、って呪文なんだったかしら…最近できるようになったから呪文必要なのよね…後で練習しとかなきゃ』
「えっと…まだ?」
『待って、呪文忘れたから道具で飛ばすわ。じゃあね〜』
「う、うん。さようなら」
幼子の意識は落ちた。

幼子が目をさましたとき一番初めに目に入ったのは、心配そうな表情を浮かべている母親だった。

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