見える先に向かうだけ!
呼び名を変えるのはなかなか恥ずかしいよね
家に帰ってからは大変だった。
楓の寝顔を見た祐樹以外の三人が見覚えがあるやなんやの、思い出したらどういう関係があるのかなど質問責め。
(俺もよく知らねぇんだっての!!)
風呂に入りたがる優奈が楓を起こそうとしてもなかなか起きないし、起きたら起きたで寝ぼけて祐樹から離れないし。
極めつけに、無理矢理離すと泣きわめいてしまった。
これに困った祐樹以下三人はどうするかと考えたのだが、結局祐樹に丸投げになってしまい、彼は相当疲れてしまったみたいだ。
しばらくたって頭もさえてきて、落ち着いた楓は祐樹に謝り倒し風呂に入ろうとした。
だが、そこで一つ、優奈が問題点を上げる。
「楓ちゃんとはどうやって話せばいいのかな?帰り道に聞いたら、ひろくん以外とはテレパシーできないらしいし」
「ああ、そうだな…どうしようか」
その時、楓が祐樹の袖を引っ張る。
「ん?どうした?」
(綾戸さんも一緒に入るのはどうでしょうか?)
「はぁッ!?いやいやいや、あかんあかん、そんなんあかんで」
「なんでいきなり関西弁なんだよ」
祐樹は慌てて腕を振る。
「大体な!高校生が同じ風呂に入れるかっての!そりゃ、ここの風呂は広いけど、さすがに駄目だ!!」
(…そうですか)
「そんな悲しそうな声を出すな!」
優奈と茂はキョトンとしてしまっている。
「あ、悪い。こいつがちょっと変なこと言ってきたからさ、つい」
(でも弟とは一緒に入ってますよ?)
「そいつは何歳だ?」
(八歳です)
ガキじゃねぇか!祐樹はとりあえず言い返し、優奈に助け船を求めた。
「うーん、そうだねぇ。扉の前にいてもらうのは駄目かな?」
「んぅぅ…茂同伴でなら」
「え。いや、まあいいけどさ」
決定。扉一枚隔てての会話をすることになったとさ。


そして風呂。
「わぉ!楓ちゃん胸おっきぃねー」
(そ、そんなに大きくは…)
「チッ、きた」
祐樹は舌打ちする。
「ひろくーん、なんか言ったー?」
「ソ、ソンナニオオキクハ……」
「いやいや、私よりは大きいよねー。体中傷だらけなのに肌真っ白で綺麗だし…いいなあー」
(あ、綾戸さんも綺麗ですよ…)
「ア、アヤトサンモキレイデスヨ…」
「ありがと楓ちゃーん!!」
(く、苦しいですぅ)
「ク、クルシイデスゥ」
「祐樹……」
茂が同情するような目で彼を見る。
「その目をやめろぉぉおお!!俺だって、俺だってぇぇええ!」
泣き叫びながら床を叩く。
ああ、かわいそうに
「わわっ!足が…!」
祐樹が床を叩くのとほぼ同時に、優奈が足を滑らせ盛大に転んだ。
(だ、大丈夫ですか、綾戸さん?!)
「ダ、ダイジョウブデスカ、アヤトサン?!」
「あはは…大丈夫だよぉ〜」
(あれ?私綾戸さんに言った訳じゃないんですけれど…)
楓が首を傾げながら伝える。
「ちょっと待て、綾戸さんって誰のことだ」
祐樹が質問する。
「綾戸さんって優奈のことじゃないのか?」
茂が天井を見上げながら返す。
「いやさー楓って俺のことも綾戸さん、なんだよ」
「へぇー、確かにややこしい…そうだ!」
茂が扉の方を向く。
「なあ楓ちゃん!祐樹と優奈の呼び名をさ、分けて呼んでやってくれよー!」
「あ、そっか。分ければいいんだ」
祐樹がなるほど、と手を打つ。
(そうですね…優奈さんと…なんて呼んだらいいでしょうか?)
「いや、祐樹でいいじゃん」
(そ、それはその…恥ずかしぃ…)
「何で恥ずかしがる??」
祐樹が首を振る。
「なに?呼び名決めてるのー?ひろくんはひろくんでいいじゃない」
(ひ、ひろくん…)
「グハッ!」
名前を呼ばれた瞬間、胸を押さえて倒れた。
「どうした!?」
「い、今わかったよ…これが、萌え、か…」
…あほだ

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あきゅろす。
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