見える先に向かうだけ!

「ん?雨?」
祐樹は微妙に変わりだした天気に気付いた。
「茂くーん、雨降りそうだよー」
「このくらいなら大丈夫だろー」
「大丈夫なのかな…、もっとザーザーでビュービューのバシャーンになりそうなのに」
「一応僕優ちゃんのところに行ってくるー!」
「おーわかったー、俺はもっと沖の方に行ってるぞー」

「優ちゃんもう大丈夫?」
「だいぶマシになったよ、ねぇ雨強くない?」
「うん、だから戻ってきたんだけど、茂くんもっと海の方に行っちゃった」
「祐樹に優奈ちゃん、ここにいたか。あれ茂君はどこだ?」
「あ、おとうさん。茂くんなら海の方に行っちゃったよ」
「そうか。お前達は早く帰りなさい、もうすぐ嵐が来るらしい」
「叔父さん、茂くんは?」
「叔父さんに任せなさい、パッと行ってパッと戻って来るさ」
「わかりました。ひろくん、帰ろ」
「うん、おとうさん早く茂くん呼んできてね」
「おう。さて久しぶりに泳ぎますか」
バシャーン
父は泳いでいった。
祐樹も家へ帰りだした。

「風が強くなってきたね、ホントに嵐がくるんだ」
「うん」
「ただいまー…」
「あ、お父さん、茂くんは?」
「悪い、見つけられなかった」
「見つけられなかったって…茂くんどうなるの!?」
「嵐が止むまで待たないとわからないな…」
「そんな!おじーちゃん!どうすればいいの!?」
「安心しろ、茂は平気じゃ。あやつはどこかの岩場にいるようじゃからな。じゃが急がないと大変なことになりそうじゃ」
「(急がないと…大変なことに?)おとうさん!僕行ってくる!」
「待ちなさい!どこに行くんだ!まだ幼いお前が今海に行ったらお前まで大変なことになるぞ!!」
祐樹はもう駆け出し、遠くまで行ってしまっていた。
追いかけようとする父を止めたのは祖父だった。
「なんで止めるんだよ親父!」
「祐樹なら大丈夫じゃ、なんせわしの孫じゃからな」

海についた祐樹は迷わず一つの岩場に泳ぎだした。
その岩場はいつも沖の方に行ったときに遊ぶ場所だったので、いるならそこに違いないと祐樹は考えていた。
荒い波に触れた瞬間、祐樹は飛行機の中でみたあの不思議な世界を思い出した。
「来た人間に【チカラ】を与える世界。俺にはなんの【チカラ】が与えられたのか…」
「そんなことにかまってる暇はない、嵐がまだ強くなる前に茂を助けねえと」
祐樹は全速力で泳ぎだした。

「急に嵐が来たなー、祐樹たちは大丈夫だよな?俺もここに逃げ込めてラッキーだったな」
「それにしても寒いな。凍えちまうぞ。俺死んだりしないよな?最後のセリフが
『おーわかったー、俺はもっと沖の方に行ってるぞー』とかだったら泣くぞ」
「あれ、なんか眠くなってきた…あぁ、あれか、寝たら死ぬぞーってやつか」
「だ…め……だ…zzz」

「いた、茂か!ん?寝てる…。しかし雨と風が強いな、このままじゃさすがに帰れねえな」
「あ〜『水の上でも歩けたら』いいのにな〜、んでその水を『操れたら』どんなにいいか」
ザザザ…
祐樹が夢のようなことをつぶやいた途端波の動きが少し変わった。
「しかし寒いな…。ジジィが言ってた大変なことってのはこのことか?」
「幼い息子が嵐に向かったってのに親父は助けに来ねえのか」
「そういえば読者のみなさんは混乱してらっしゃるでしょうので、ここらで私が説明させていただきます」
「あ?誰だこのおっさん」
「綾戸祐樹は基本的には歳相応の普通の男の子ですが、自分の大事なものが大変なことになったり、不満が溜まったりすると今のように『ちょっと』口が悪くなります」
「さらに言いますとこれは覇狗にもあったそうです」

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あきゅろす。
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