見える先に向かうだけ!
修業が始まります
「んで?この山の名前はなんなんだ?」
現在祐樹とその仲間たちはある山に来ていた。
「おい、仲間たちってなんだ」
「そうじゃそうじゃ、まるで祐樹がメインのような扱いではないか」
そう言われても主人公は祐樹な訳でして……。
「そうだよ、茂、はくじー。ひろくんが主人公なんだから仕方ないよ」
むぅ、っと不満そうにしながらも納得したような二人。
「おい、無視かよ」
祐樹が三人に言った。
「おお、すまんすまん。この山の名前じゃな?わしは知らんぞい」
「は?」
「だから、わしは知らんと言うておるのだ」
祖父は顔をしかめながら言った。
「ハァッ!?なんで名前も知らないような山に連れてくんだよ!だいたい所有者とかいるだろ!許可はとったのかよ!!」
一人大騒ぎする祐樹。そんな彼に祖父が静かに言った。
「ここ、わしの土地じゃぞ?」
「え……」
祐樹は祖父を見た。
「マジかよ…、まあいいジジィの山なら好き放題暴れられるな」
「ま、そういうことじゃ。二人とも!準備はできたかの」
祖父はなにかの作業をしていた優奈と茂の二人に呼びかけた。
「できてます!もう始められますよ!」
茂が叫び返した。
「よし、じゃあ始めるかの」
「ん?ジジィ、なにすんだ?」
「ふむ、説明してやるかの」
「ああ」
「まず、わしは【チカラ】について考えてみたのじゃ。そして至ったのが、精神力に比例して【チカラ】の強さが変わるということじゃ」
祖父は自慢げに言った。
「なんでわかったんだ?」
「わしは幼い頃に初めて能力を使った。その時はほんの数分の未来しか見れなかったんじゃ。じゃが最近は何日もの未来を見れるのじゃよ」
「つまり子供の頃より精神力が強くなったからこそ長い時間未来が見れるようになった、ってことか?」
「そうじゃ、っというわけでお主には今からこの道着に着がえてもらい、向こうにある滝で12時間打たれ続けてもらうぞぃ」
それを聞いた瞬間、祐樹の顔が一気に青ざめた。
「ム、ムリムリムリ!!12時間ってなんだよ!俺そんなのできるわけないじゃん!!」
「そうでもないぞ?実際茂と優奈はやってみせたんじゃからな」
そう言って二人の方を指す。
「ハァ!?っていうかじーちゃんあの二人になにさせてんの!?それに二人とも耐えたのかよ!!」
「結構大したことなかったよ?ね、茂?」
「……、ま、まあな。一回目はともかく二回目以降は大丈夫だったな」
そう言った二人をあり得ないとでもいうような表情で見つめる祐樹。
「……はあ、わかったよ。みんなやったんだからお前もやれってことね。ハイハイ、やりますよ、やらせていただきますよ!」
やけくそ気味に叫んだ後、勢いよく立ち上がった。
「しゃァ!気合い入れてくぞ!っつーわけで着がえてきまーす」
「おう、行ってこい。最初は結構辛いかもしんねーけど、慣れたら大丈夫だ。多分」
「なにを言うとるのじゃ茂、お前達もやるんじゃぞ?」
「……え?」
茂が少し辺りを見渡すと、優奈の姿がもうなかった。
「優奈ならもう着替えに行ったぞい、お前も早くいかんか」
「……はい」

「おぉ、すげえ水量だなー。しかも高さがすんげー高いから勢いもハンパじゃねぇ!なんか楽しくなってきた!」
「ひろ、今からあれに打たれるんだぞ?なんでそんなに元気なんだ…」
「わっかんねぇ!でもなんか楽しみだ!よし、早速行くか!!」
祐樹はそのまま滝壺まで泳いで行った。
「さすがわしの孫じゃ、高い試練を見ると楽しくなるところを見ると、血は争えんのよな〜」
祖父がしみじみとそう言った。
「じゃあ私たちも行こっか、茂!」
「くそぅ、ここまで来たら行くしかないじゃないか……、おーい祐樹待てよー」
二人も滝の下に行った。
「祐樹、【チカラ】を使うんじゃないぞ?」
「はいはい、ってかこんな勢い、俺には制御できねえよ」
祐樹はそう言った後、滝に打たれ始めた。
「ふむ、そうか。ならばこの流れを操れるようになるまで修行するかの」
祖父は誰に聞かせる訳でもない声で呟き、山にある家へ帰って行った。

深夜一時
三人は滝行を終え、家へと帰ってきた。
「む、帰ってきたかの」
「ただいまー。はくじーこの二人早くお風呂に入れたげて」
優奈が言う二人とは祐樹と茂のことである。そしてなぜ優奈が風呂に入れるよう言ったかというと……
「カッカッカ!こやつら気を失っとるではないか!」
そう、二人は滝行の辛さや寒さに耐えきれず、気を失ってしまっていた。
「まったく世話の焼ける奴らじゃ、優奈はピンピンしとるというにの〜」
そう言いながら祖父は二人を浴場の湯船の中に放り込んだ。
「……………、死ぬわッ!!!」
しばらく沈んでいたら、まず祐樹が叫びながら飛び出した。
「ん?なんか足に当たった。えっと、あった……し、茂……」
祐樹が湯の中から茂を引きずりだした。
「茂……お前と過ごした十数年、俺は楽しかった。ありがとう」
彼はそう言った後、茂の遺体を床に寝かした。
そして手を合わせて
「悪霊退散!!」
彼が叫んだと同時に茂が目を覚ました。
「勝手に殺すな!なんだよ遺体って!!まだ死んでねえよ!!しかもひろ、お前俺のこと悪霊扱いしやがったな!!」
「……チッ、生きてたか」
「チッ、ってなに!?怖い、僕今とても怖い目にあってる!」
「うっせ」
祐樹が呟いた瞬間、湯船の中の湯が茂の顔に勢いよく吹き出し、目を覚ましたばかりの茂を再び眠らせてしまったのだった…。


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