見える先に向かうだけ!
YAMAGOMORI
「おいジジィ!いいかげん話しやがれ!!」
「こら祐樹、言葉遣いが悪いぞい」
現在祐樹は車に乗っていた。だがその体は、縄で縛られ身動きが取れない状況だった。
「だいたいこりゃあどこ向かってんだよ!!」
祐樹が騒いでいると、祖父がやれやれというように首を振りながら言った。
「しゃあないのぅ、話してやろう」
祐樹の祖父、覇狗は祐樹の隣に座り、話をし始めた。
「わしの【チカラ】について教えたことがあったじゃろ?」
「ああ、それがどうした」
「わしはそれを自分の意思で使えるんじゃが、たまに勝手に見えることがあるんじゃ」
「だからなんだよ」
「貴様、今不満が高まっとるじゃろ、言葉遣いが悪いぞい」
「っるせぇ、いいから話の続きを話しやがれ」
「ふむ。それでな、最近見えたんじゃ」
「なにが……くそっ取れねぇ」
祐樹は拘束から逃れようとするがやはり意味はないようだ。
「祐樹、お前が荒木先生と出会い、話して、戦い、怪我をし入院することまですべてがな」
「ジジィの能力はいつからストーカーに変わったんだよ……」
「わしも見たくて見た訳じゃないぞぃ」
祖父は顔をしかめながら言った。
「んで?それがなんで俺を拘束するにまで至ったんだよ」
祐樹は不満そうに言う。
「見えたんじゃよ」
「さっきからそればっかだなジジィ、何が見えたんだ」
「それは……恐ろしくて何も言えん」
祖父は何かに怯えるように言った。
「はぁ〜、なんなんだよまったく……」
「まあ今回お主を連れて行くのは、お主の願いでもあるはずじゃ」
「あ?なにがだよ。ってかまずなにしに行くんだ」
「おぉおぉ言ってなかったか」
「俺なんも聞いてねえよ!!このボケジジィめ!!」
まったく、この口の悪さは…、っとそふが少しぼやいた後に言った。
「お主を鍛えに行く。場所はすぐに着くから言わん」
「……なんでだよ」
祐樹は祖父を睨みつけ、静かな声でそう言った。
「お前は今回一般人である荒木先生に怪我を負わされた。お主はわしの血をひいてるからな、戦闘センスは飛び抜けているはずじゃ」
「ああ、今までの設定では橘が少し話した程度……じゃなかった、まあ今までケンカに負けたことはねえ」
「それなのにお主は怪我をしてしまった。普通の人相手に。それはお主のプライドが許さなかっただろう」
「俺そんなプライドねえよ!?」
「黙れ!こうでも言わないと話が進まんのじゃ!!」
「理不尽な……。まあ怪我をしたのはマズイと思ってるよ」
「じゃろ?それでお主はもっと強くなりたいと思ったはずじゃ。っていうか思え、思わないとどうなっても知らんぞい」
「はいはい、思いました。思いましたよー」
(まあ実際そう感じてたしな。機会があればジジィに稽古つけてもらいたかったし)
「それでこれから山籠りをし、お主を徹底的に鍛える。……わしが見た未来に備えてもな」
祖父は静かに付け足した。
「そんなやべぇもん見たのかジジィ……」
「まあとにかくお主を鍛えるぞい。お主の【チカラ】についても少し分かったしのぅ」
「ホントか!?じゃあ頼むぜジジィ!」
祐樹は嬉しそうにそう叫んだ。
「あの〜」
その時遠慮がちに誰かが話しかけた。
「ん?なんじゃ?」
「俺たち(私たち)今回も出番なしですか?」
話しかけたのは茂と優奈だ。
「おぉすまんすまん。次の章から……じゃない、山についたらお前たちにも手伝ってもらうから、それまで辛抱しとくれ」
「はい……」
二人はそのまま後ろに引っ込んで行った。
「よォしッ!!着いたら修行だ!!修行だあああああッ!!!」
祐樹が元気良くそう叫んだ。

……体はまだ縛られたままだが。

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