《ライバル》
―仁王視点―
ブンからのライバル宣言はなぜか嬉しかった。
ちあきを思うブンの気持ちはかなり強い。なのに、幼なじみゆえに自分の気持ちを押し殺すなんて可哀相だと思った。
「みんな忘れ物ないね?」
「たぶんないっス。」
「まぁ、あってもバスから下ろしてやらないけどね。」
幸村の腹黒さにみんなが身震いした。
知らない振りをしようとブンは菓子に手を延ばした。
「(そういえば昔からちあきに告白なんて考えてなかったな…)」
ちあきにアタックすると聞いたはいいが、ライバルが増えるということは俺も策を講じなければならない。
ブンはちあきから信頼されとう。
ブンにしか使えん仕方で攻めてくるかもしれん。…と、いうのは考えすぎか?
バスに揺られて数時間後、みんなが暇を持て余して眠りにつこうとしている頃、目的地に到着した。
「みんな着いたよ。荷物持って玄関前に整列だ。招待主にご挨拶しなくちゃいけないからね。」
「「招待主?」」
あまり詳細を聞かされていなかったため、この合宿に招待主がいるとは思わなかった。
俺らは部長の指示通り、整列していた。
「幸村くん、今回の合宿は私たちだけではないんですか?」
「主催者がいるんだ。内緒にしておこうかと思って。」
「まさか他校と合同とかいうか?」
ジャッカルの質問に幸村は微笑んで答えた。その笑みはやはり黒みを帯びていた。
「待たせたな。」
その声に姿勢を正して主を見た俺はたいして驚きもしなかった。
他のヤツも“主催者だから…まぁ、そうだろうな”と納得しているみたいだった。
「ここは俺様の別荘だ。だから施設は充実してる。」
それは財閥の息子、跡部だった。
アイツに続いてテニス部のメンバーがずらりと俺らと平行に並んだ。どうやら氷帝学園が今回俺らの合同合宿の相手ならしい。
「ちあき…平気か?」
『へ、平気だよ。』
「俺が守ってやっから。」
『…ブン太、』
「俺しか事情知らねぇじゃん?だから余計、助けになりてぇわけよ。」
ブンとちあき、二人のことに俺は気付かなかった。
横に一列になってたし、ちあきとブンは俺から随分と離れたところにいたから。
「…ちあき、おまえ…いつから立海のマネなんかになったよ?」
氷帝の宍戸がちあきにそう言った。
その時点で怪しいと思った。
あの女に疎そうな宍戸がちあきと呼び捨てにしていて尚且(か)つ、マネ事情も知っていたからだ。
ブンが前、ちあきがマネになったことで怒っていたことを思い出した。
それとは違い、宍戸は驚いているようだったが。
『臨時でね。』
「そうかよ。ご苦労なこった。」
宍戸がなぜちあきを知っているのかも疑問だった。どこかで交流があったのか。
「こいつがうちのマネージャーだ。」
「よろしくお願いします!」
頭を下げたのは楼兎というヤツじゃった。忍足の彼女ならしい。
忍足が手を出すな、と警告したからだ。
『(いつの間に付き合うことになったんだろう?)』
「楼兎、みんなを部屋に案内してやれ。」
「はーい。」
氷帝のマネージャーに案内されるがまま。彼女について歩いていた。
ふと、その列にちあきがいないことに気付いた。
「…ちあき?」
振り返った廊下にちあきの姿はない。涼しい風が漂うだけだった。
しかし、間もなく曲がり角からブンが歩いてきた。ちあきも一緒だった。
「……」
言葉にならんかった。
今まで見たことない光景。ブンがちあきの手を握って歩いとったからじゃ。
なにがあったのか俺には知る理由も権利もない。
悔しかった。
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楼兎さま
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