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vocaloid
part[b]

(まる?さんかく?しかく?)

(どんな形をしているの?)

 ある冬の日、それなりの家賃が掛かっていそうなマンションの一室のリビングで、仲良くコタツで寝転がっている2人の少年少女がいた。少女はテレビの前を独占し、少年はその向かい側でデジタルカメラを操作している。
「ねえレン、愛ってどんなモノかな?」
 不意に少女はそう呟いた。
「愛?急にどうしたのさ、リン」
 少年は手を止め、少女の顔色を窺う。だがそこから見えたのは籠に入った蜜柑と、白くて大きなリボンを結んだ、黄色い少女の後頭部だけだ。
「だーかーらぁ、愛の形ってどんなのがあるの?って、聞いてるの」
 少女はうつ伏せのまま蜜柑を取り、皮を剥きはじめた。屑がぱらぱらと床に落ちる。
「そりゃあ、色々あるよ。家族愛にー、親愛にー、博愛にー、恋人愛にー」
「あははっ。恋人愛って何よ、恋愛でしょ?」
「うるさいなぁ、レンアイって言うのが恥ずかしかったんだよ。前マスターに『レンが愛を歌うからレン愛歌か。なかなか気を利かしたジョークだな!』ってからかわれたから」
「そのあと『創作意欲が湧いてきたぞ!』って作曲始めちゃうしね」
「マジで勘弁してほしいよ。あの人・・・」
 少年がうなだれるのを聞き、少女は反転して身体を起こす。テーブルに顎を乗せている、金髪を後ろで縛った少年の顔が見えた。
「じゃあさ、アタシ達からマスターへはナニ愛?」
「は?」
 少年は何が言いたいのか分からない。と言いたそうな顔で、空色の瞳を見つめる。
「マスターは家族愛だろ。普通に」
「でも、レンとは違うの」
 少女は真っ直ぐに空色の瞳を見つめ返す。
「レンの姉弟愛とは違うの。姉弟愛と家族愛って一緒でしょ?でも何か違う。こう・・・根本的に別物って感じ」
 視線を逸らし、蜜柑の果実を口に含んだ。
「これって、恋愛なのかな・・・?」
 心配事のように溜め息を漏らす少女に、少年はどう答えるべきか躊躇した。
「リンは恋愛じゃ困るの?」
 結局意味の無い質問をする。
「困んないけど・・・何だか嫌。だってそれじゃあ、まるでマスターなら誰でもいいみたいじゃない」
 少女は真剣な口調で言葉を紡ぐ。
「アタシはマスターのここが好きって、胸を張って言いたいの。でもただ好きな、ちゃんとした理由が無いなら、まるでプログラムでそうさせられたみたいじゃない。だから、愛がどんな物でどんな区別があるか、ちゃんと知りたいの。・・・レンは、どう思う?」
 今度は言葉尻を上げて、少年に質問を投げかけた。
 少年は少女の悩みを聞いて、安心したような笑みを浮かべた。
「何だ、そんなことか」
 可笑しそうに肩を揺らして笑う少年に、少女は抗議する。
「そんなことって何よ、真剣なんだからね!」
「あはは、ごめんごめん。いたっ」
 少女が振り回した拳が少年の頭を叩く。続けて何度も殴られた。
「レンのくせに、レンのくせに〜!」
「痛い、痛いよリン!ちょっと笑えるぐらい痛い!」
 少年は何度も謝罪したが、少女は許してくれなかった。コタツから出た少女は、
「レンの馬鹿、ヘタレン!もう知らない!カイ兄の所行ってくる!」
 捨て台詞を置いて部屋から出て行ってしまった。
「うぅ〜、コブできたんじゃないか?」
 1人になったリビングで、頭を擦りながら少年はまた少し笑う。
「リンも馬鹿だな・・・。もしプログラムなら、そんな疑問持つわけ無いだろ」
 それからしばらくは嬉しそうに、少年は忍び笑いを漏らしていた。

(もし目に見えるカタチなら、)

(簡単に分かるのになぁ)



リンとレンの日常。



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あきゅろす。
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