ーRe:VIVEー歪曲者たちのオペレッタ
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扉の開閉音さえ鳴らない重い扉が閉まると、再び静かになった室内で、クシェルは笑顔を絶やさぬままに自らの上官に向き直った。
その顔にはありありと不機嫌の文字。
「ジョルジオに調べさせていたんですか。記事は今日でたばかり。事件が起こったのは昨日なのに?随分仕事が早いんですね。」
「…」
ただじっと目を逸らさない彼の強い瞳に、クシェルは小さく息を吐き、桜の足元に傅いた。
もう彼の言いたいことはわかっている。
これ以上、何かを言ったところで、彼が何の反応も見せないであろうことも。
「…wie Sie wuenschen」
ー"お望みのままに。"
この言葉だけでいい。
彼の隣に立つ理由は。
彼は必要以上を語らないどころか、必要なことさえ語らない。
だから俺はいつでも傅いてみせるのさ。
何も語らない、そのベルベットの瞳に、溢れそうな激情を込めて見つめ返す。
誓いの言葉を添えて。
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