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月と闇と私
2

とりあえずこの状況をなんとかしなくてはと思い、足と手を側面につけ徐々に下りていく。端から見ればかなりダサい蜘蛛男のようだが命には替えられない。

最終的に何も面白くなく、ただ足や手を負傷して終わった。更に言えば時間のロスでもある。


次回こそは必ず・・・!


と胸に誓い愛用の自転車に跨った。この自転車はオートライトで、しかも灯りは強いほう。夜の道もどーんとこいだ。暗くなった公園を抜けようとブランコの傍の道を走る。
両端に並ぶ木から虫の鳴き声が聞こえて寧ろこっちが泣きそうになった。

真っ直ぐ進むとフェンスがあるのでそこを右にハンドルを操作した。


「あー、今日の夜ご飯何かなぁ」


昨日は大の苦手の麻婆茄子だった。ナス無理。あのきゅこきゅこした感じに中のぶにょっとした食感が苦手。無論、味も受け付けない。だからこそ今日は美味しいものが食べたいと強く、非常に強く願っている。

少し燃えてきたところでスピードアップ。早くご飯が食べたいし何よりも暑い。ギアはついてないけど5に設定して、尚且つフルスピードで漕いでいるつもり。






「────っぶないっ」





キキィィィ────





2万円弱で新車に買い換えてよかったとブレーキの鋭さを見て改めてそう思った。危機一髪避けられた事に安心しながらも、痛いぐらい活発に動く心臓を深呼吸をして調える。勿論、飛び出して来たのがどんな人物か確認するのも忘れない。



マイ・マウンテンバイクのライトに照らせれていたのは、金に近い茶髪にクリーム色の膝下ワンピース姿の女の子。髪よりも茶色に近い大きな目を一層大きく見開き、こちらを凝視していた。


いや、私がびっくりだから。


つい心の中で軽く突っ込んでしまった。




「─────。──!」




突如目の前の女の子の体が激しく揺れ始めた。
小刻みに上下に動く様はさながらマッサージ機の振動に似ている。


とか現実逃避してみるけど


どこからどう見ても震えているわけで


厄介ごとの臭いしかしないのに逃げることが出来ない


そのまま痙攣して倒れてしまうんじゃないかと思うほど激しく震えていた。

そんな様子にとてつもなく嫌な予感が増した。申し訳ないけどこのまま無視して立ち去りたいとも思った。
だって明らかに逃げてきた、追われていますって言いだしそうな格好だから。

ワンピースは所々擦り切れていて、茶色いシミも幾つか目に留まる。止(とど)めは顔や足から流れる血だ。これで何の事件もないとは誰が見ても100%言い切れないでしょ。


取り敢えず、警察に電話しよう


パーカーのポケットから携帯をとりだし110



できなかった。
何をトチ狂ったのか、女の子が籠をガンガン揺らしながら叫んできたのだ。近づいて来た女の子は意外と成長していて、私とそう変わらない外見だった。きっと力は倍以上強いんだろうけど。



「─!───!!!」



何を言っているのかわからない。日本語、英語、中国語など、アジア圏ではないのは確かだ。言っている意味が分からないとジェスチャーしてみるがそんなのお構いなしに揺らし、叫び続ける。

突如、目の前でいきなり叫び出したかと思うと、私から見て左側を指差し、そして私の顔を両手で挟んできた。いきなりのことで頭が回らず固まっている顔を容赦なくぐぎりと回転させられた。




「────な・・・に・・・・あれ」







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