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月と闇と私
5

汚いものでも見るかのように冷たく、怯えて、それでいてさっきの彼女と同じどこかほっとした表情だった。


これ以上近づくなと警戒のために振るわれた刃物を、鍛えもしていない私の肌は難なく受け入れ、血を飛ばした。




そして私の視界はブラックアウトした。














目が覚めた私の目に映ったものは何も無い。
というより、暗すぎて判別できないと言った方がいいだろうか。

背中付近を触るとなんとなく木の感触がしたので森の中、若(も)しくはそれに近い何かだとは思う。

しばらくじっとしていると慣れてきた目はやはり森を捉えた。

周りに生い茂る木や草などの植物たち。見晴らしは全然よくない。私は何故か横に置いてあった自分の鞄の中からペットボトルを取り出し、水を二口飲んだ。


そして右手を振りかぶって自分の頬にフルスイング。


少し反響したが音はすぐに納まった。






「・・・いたい」





「・・・・・・いたいよ」





「んで・・・・何で痛いんだよ!」

「意味分かんない!何で痛いの?鼻も痛いし体の節々だって痛い。おまけに肌は切れた後かわかんないけど血が固まってるし、頭痛いし森の中だし、荷物てかバイト帰りのままだし」

「うざい女いたしさ。勝手に自転車の後ろ乗るしキーキー叫ぶし叩いてくるしさ、なんなのアレ?クソ自己中な女やん。住んでるとこまで運ばしてハイ、サヨナラ、ってなめとん?ふざけんなよマジで。ありがとうもないんかい。言葉通じなくても身振り手振りで感謝表せやボケが。仕舞いには親が刃物振り回すとか終わってる。完全に頭イッテるしほんまありえへん。恩を仇で返すとはこのことかよ。あの世に逝って地獄に落ちろクソどもがあああああ」















「・・・家に帰りたい。ここ何処?何でこんな目にあわなきゃいけないの?」










「家に帰してください」















神様、私は何か悪い事をしましたか?





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