あたしにできること
男の人はどうして好きでもないのに「愛してる」なんて言えるのかしら？
どうしてそんなに平気で嘘がつけるのでしょう？
うん。やりたいからだよね。わかってるんだけどね。
私はあなたのことが好きです。愛してます。あなたのためなら何だってします。何だってできます。愛してる。愛してる。あいしてる。アイシテル。
あなたも「愛してる」って言てくれます。でも本当は愛してません。都合よくあたしを操るために「愛してる」ッて呪文を唱えます。
ヒデー男。
許せませんよ。女の敵です。だけど残念ながらあたしに勝ち目はありません。だってあなたはあたしの事なんかどーでもいいんだからね。あたしはこんなにあなたが好きなのにね。どーしようもないのです。
だってどうしようがありますか？
あたしにできる事といったらあなたの事を想像してオナニーしたり。だとか。手首をカッターナイフで切って血を流したり。だとか。あたしにできるのはそれぐらいのことなのです。なんだか。
くだらねぇ。
プルルルルルルルって電話の音がなるたびに彼からかもしれないと思います。でも大概違います。っていうかいまどき携帯がプルルルルルなんて鳴らないけどわかってるけど着メロだと読んでる人がわかりにくいからいいのです。もちろん電話は彼からじゃありません。友達の美穂ちゃん。こいつは顔はマァマァだけど頭が悪いの。コンパの誘いですって。こいつはコンパが大好きでいつもコンパコンパ言ってきます。コンパに行く男は不細工か低脳です。女はブス子か白痴のどっちかです。たぶん容姿がきれいで頭のいい人はコンパなんてしないと思う。あたしは可愛いし馬鹿でもないです。そもそもあなた以外の男にこれっぽっちも興味がありません。
でも行くんだけど。
コンパにくる男の子は優しいから。だってほらあなたは全然これっぽっち優しくないじゃないですか。あ。別にいいですか？いい訳とか？少しぐらいはやきもち焼けよクソ。
コンパであたしはいつもちやほやされます。ほら、だって可愛いから。男の子はみんな同じような事しかしゃべらないからまるで退屈なテープレコーダーみたいです。あたしもいつも同じ話をします。あなたの事。
テープレコーダーはいつだってあたしの味方です。あなたを酷いやつだって言ってくれます。可哀想だねって頭をよしよししてくれます。あたしはなんだか自分がかわいそうになって気持ち良く泣けるのです。
調子にのってベロベロニなってもテープレコーダーが介抱してくれるしね。道路にゲロをビタビタ吐いて自分で自分の匂いに絶えられなくなっても相変らずテープレコーダーは優しい。化粧も剥げ落ちて相当不細工になってるはずなのにあいも変わらず優しい。優しく背中をさすって大丈夫？ッて聞いてくれます。
しかしそんなにセックスしたいんかね。
別にいいけど。
テープレコーダーを振り切って。コンパから脱出！
びゅーん
あなたに会いに行きたいけれどきっと迷惑だと思うから会いににいけません。せめて声が聞きたいの。なのに電話はいつもみたく知らない女。
「この電話は現在電波の届かないところにいるか電源が切れております」
って誰だよてめー。
名乗れよ。
ちくしょー。
声ぐらい聞かせろよ。馬鹿。死ね。
部屋に帰ったらたらベッドの上にあなたの写真とカッターナイフ。
ちょっと迷ってからあたしはカッターを手首にあてがいました。刃物のひんやりした感覚。体中の体温がスッて下がっていく。ほらあたしにできる事といったら死なない程度に手首を切ることぐらいだから。
つまんないな。
つまんない。
つまんない話。
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