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小説
プロローグ
 可愛い妹があるゲームを兄貴と俺のために買ってきてくれた。最近、流行っているゲームらしく、G.A.M.E(ジーエーエムイー)≠ニいう名前のRPGである。RPGといっても、様々なモードがあり選択可能というのが謳(うた)い文句のゲームだ。
 モードは計四つ、RPGモードやギャルゲーモード、乙ゲーモードや友情ゲーモードである。それぞれ選んだものによってストーリーが変わってくる。更にフリートーク機能が付いていて、キャラクターに自由に話を振ることができ、返答も自然なものが返ってくる。
 俺はRPGは苦手なので、兄貴がプレイしているのを見ていた。妹も加わり、皆で楽しく遊んでいた。しかしその数週間後、妹は死んでしまった。
 傷心しきった俺の前で、G.A.M.E≠ヘまるでその存在を主張しているようだった。可愛く笑う妹を思い出し、それに手を伸ばす。
 そのゲームの中には――
「初めまして。私はアシスタント、貴方のサポートをさせていただきます」
妹とかなり似た女性がいた。年は違えど、見た目は妹と瓜二つ。
 そんな彼女と勇者になった俺の冒険物語が幕を開ける。

 * * *

 私の名前はアシスタント、勇者の案内役である。勇者と聞いて何となく御察しだろうが、この世界は皆さんの住んでいる現実世界とは違う。
 ここは――G.A.M.E(ジーエーエムイー)≠ニいうゲームの中の世界である。

 この世界の生物は等しくキャラクター≠ナあり、彼らに名前はない。あるとすればゲーム上の役割、勇者1や村人1、魔法使いAや魔王などである。何故そうなるかは、おそらくゲームの制作者が名前を考えるのが面倒だったからだろう。
 私が現実世界のことまで認識しているのは、ただのアシスタントでありキャラクター≠ニして作られてはいないからである。現実世界のことはほとんど全て知っており、現実世界の情報は日々更新されている。ただそれをこの世界の誰かに話せるかと言われれば、そうではない。以前何度か口にしそうになったことがあったが、口は開いても声は出なかった。どうやら製作側は私に事実を伝えることを禁じているらしい。
 私はこの世界で、物に触れることも空腹や眠気を感じることもない。ただ目の前に何らかの物体として存在して見える、いわゆる幽霊のようなものである。
 そんな私はこの世界の主人公となる勇者、つまりは現実世界でのプレーヤーに基本的な操作を教える役割を担っている。その後は主人公についていき、何か支障があれば手助けする。
 しかしストーリーに干渉はできないので、ただただ、主人公たちが命懸けで戦うのを見ているしかない。私にとってそれは歯痒くて仕方がない。そして何よりもそれは自分が無能≠セということを刻み付けてくる。
「ここは……」
 ああ、どうやら勇者が現れたようだ。目の前の茶髪の男性は不思議そうに私を見つめている。
 彼の名前は×××××、これから彼の冒険物語が始まる。

「私はアシスタントです。よろしくお願いします、勇者×××××様」



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