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お題
3それを恋っていうんだよ


最近おかしい。
自棄にリセスが視界に入っているような気がする。
いや、もしかしたら入れているのかもしれない。


入れているのか?


そんなことを考えたら急に横隔膜辺りがずしりと重くなったような気がした。
余り考えるな、と言うことなのだろうか。今一よくわからない。

しかし最近よく起こる症状だ。
変に考え込むと胸が重く感じるのだ。
リセスが嫌いな訳じゃない。
胸くそ悪くて吐き気がするぜ。何て言う重たさじゃない。

寂しい重たさだ。
空しいと言っても良いかもしれない。つまりはそこら辺の寒色系な気分だ。
例えるのも難しく、どう言ったら良いものか。



そして、一番この症状がきつくなるのがリセスすぐ近くに居る時だ。

しかも話している時じゃない。
別の事をして関わっていないのに同じ空間に居るときが一番きつくなるんだ。
あとは…女の子にキャーキャー言われてるとき…のはムカついてんのかな?
何一人でモテてんだよ、俺なんか疑心暗鬼な目で見られてんのに!てか。そんなわけでもないのだが。



訳がわからないという気持ちを外に出すように深いため息をつく。
決してそれによって気分がよくなるだとか、改善されるようなことは無いのだが、それでもつきたくなる。
憂鬱だ。



夕方のふわりと温かい風と淡い日の光がそんな風に思わせるのかもしれない。



ぼんやりと廊下の窓から外を見て見る。



「あ…」

「!…」



慣れた薄紫の髪が揺れていた。
声を出したせいか、リセスもこっちを見た。
なんとも言えないような顔をしている。驚いたような気恥ずかしいような。それはおれも同じで。

顔を反らすのもおかしいく思い、自身から話し出さないリセスに対し若干苛立ちも感じながら話題を探す。



「風邪、もう平気か?」

「あぁ、まあな…」

「まあってなんだよ。病み上がりは気を付けろよ。ぶり返しても俺がいるとは限んねーぞ」

「自分の体調くらい」

「解ってねーからこの前あんなんなってんだろ?心臓に悪いぜ」



口調が説教臭くなるが、それ位が良いのかもしれない。
小さい声だが、気を付ける、と呟いている。
とは言え顔色も良さそうだし、眉間に皺が寄ってないところからすれば機嫌も良さげだ。この前の死にそうな顔を見ている分、安心できる。

それと同時にリセスに捕まれた手の感覚がぶり返して、急に顔に熱が集まる。

何思い出してるんだ。

恥ずかしくて顔をそらし、、リセスから見えないようにする。



「おい」



下から声がした。



「何?」



まだ顔が熱いので声だけ張り上げる。しかし、一向に次の言葉が来ないので、仕方なしに顔を向ける。
夕日が赤い顔を隠してくれていると思いながら。

ちらと見たリセスはどこか口ごもっている。
別に顔を出さないからとかではなく、単に言い出しにくいように見えた。



「なんだよ」

「明日、非番だったな」

「え、あ、あぁ。そうだな」

「明日街で剣の手入れに行くのだが、お前はどうする。確か刃こぼれがどうのと聞いたのだが」



忘れていたが、ついこの前にリセスに稽古を頼んだ時にそんな話をした。
刃こぼれといっても気になるほどではなく、ほんの少しあるぐらいで、さらっと流したような話だった。



「よく覚えてたな。なんだよ、連れてってくれんのか?」

「お前は街に出ないだろ。道に迷ってこられても困る」



そうか、と頷いて、バカにされたのだと気づく。
怒鳴り付けてやろうとしたがそれより先にリセスが



「行くのか?行かないのか?」



と返答の催促をした。
人を小バカにするのは癖なのだろう。嫌な癖を持っている。
それが恥ずかしさを紛らわしていると知っているからこそ許せているのだが。



「嫌なら別に来なくて」

「嫌なんて言ってねぇだろ。リセス兄様に着いてきますよ。迷子になっちまう」



へへっと笑うがリセスが笑い返す事はない。そんな素直なやつじゃないことぐらい知ってる。
しかし、にらみ返されないと言うことは良しということだ。



「何してるんだ?ナオ」



ロディの声が聞こえて振り返る。



「え、あー」



ちらりと窓の外に視線を戻すと、リセスは歩いていってしまっている。
あぁ、とどこか物寂しいような気持ちになりながら俺は首をふった。



「別に何でもねーよ」



何でそこで、リセスと話してたんだ、と言わなかったのだろう。
何でもない話なのに、何故か隠したくなった。
しかし、ロディもふーんと言っただけで、深くは追求してこなかった。
ただ一言、



「凄く楽しそうに見えた」



そんなことばを残していった。







それを恋って言うんだよ




何故か急に恥ずかしくなった。

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