[携帯モード] [URL送信]

●千年の孤独
1.千年の孤独
「貴方に、この命を捧げます」
たおやかな、芙蓉の華の様に美しい青年が、目の前に膝まづく。
絹糸の様な漆黒の髪が肩を流れ、赤黒い大地に落ちる。
髪が土にまみれるのを気にもしない様子で青年は続けた。
「命を賭けての忠誠と、私の名を…」
それを見ながら、紅蓮は湧き上がった感覚に眉を寄せた。
不快─────。
そう、ただ不快だった。「…捧げま」
「いらん」
微かに、青年の肩が震えた。
皆まで言わせず一言で拒絶した紅蓮は、それを見下ろしながらもう一度口を開く。
「お前の名など必要ない」
紅蓮と青年を取り囲む群衆から驚愕と怒りを含んだざわめきが起こる。
当然だろう。
紅蓮は彼等が欲しても求めることもできないものを、目の前で足蹴にしたも同然なのだ。

[戻る][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!