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●闇に咲く華
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闇に咲く華2    

「わたしは……あなたの、ものです………─────」
何か大切なものを奪われた喪失感に、カタカタと、白蓉の小さな手が震えた。紡いではならない言葉を紡いでしまった。
激しい後悔と、言いようのない恐怖にさいなまれる。

しかし命約は成され、赤い双眸の支配者は満足気に白蓉を引き寄せた。
「震えているな……。俺が、恐ろしいか?」
覗きこんでくる視線から逃れるように瞳を伏せ、もはや抗えぬ問いかけに答える。
「………はい……」
意外にも、男は満足気に笑った。
「それで良い。清浄なるものが、闇に染まった俺を恐れるのは当然」
白蓉の艶やかな黒髪を弄びながら、男は酷薄な笑みを浮かべる。
「白蓉、お前はこの地から出ることは許さん。何も知らず、変わらず、美しいままでいろ」
そう言って、男は白蓉に視線を上げるよう促した。
「俺の声にだけ、応えろ────」







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あきゅろす。
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