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ホラー小説
ずれていく日常 後編


作 天海千風






水沫餓鬼はだんだんとサンショウウオのような顔から美羽の可愛い顔になっていった。



道行く人々から声を掛けられる美羽。


「可愛い顔じゃん」


「ナンパしてぇ」

「どこの学校なんだろ?」





水沫餓鬼はにやにやと心の中でそう思っていた。

(もうすぐであの柔らかい腹に私の子が育ち生まれる…)




水沫餓鬼は異変に気づいた。九鈴の家にものすごい結界がある。さっきと比べるとさっきの結界は水沫餓鬼の10%ぐらいの力で破れる。

今の結界はヤバイ。

チッと舌打ちをうってゆっくりと美羽の家にいった。







その頃の優は汗をたらしながら九鈴の家を目指して歩いていた。

その姿を心配して近所のおばさんが優をとめようとする。



「あんたさ、何をしたいのか分からないけど…今のあんたはヤバいよ。ここで休憩しな。」


「嫌ッ…。今ここで止まったら押さえられない…」


「何を押さえられない?」

おばさんはガシッと優を抑えて休ませようとした。

優は手を振りほどきおばさんを押し退けようとした。



ピチョン



水滴が滴る音が辺りに鳴り響く。

辺りにいた人はパッと消えたようにいない。



優を水沫餓鬼が取り巻く。

半分侵蝕されつつある優はあらぬ言葉を吐いた


「ふっ…。やっと出られたものよ。あと3日か…?分からぬ。私が産まれるのは…」


「あんた…何者?!ここから出して!」




「そいつは…無理な相談だな。ここは…解らぬか?」



辺りにビジョンが浮かび上がる。


おばさんの若い時らしくニコニコと笑って彼氏とベタベタするおばさん

結婚式でおばさんとおばさんのお父さんが泣きながら抱きついている




病院でおばさんがだんなさんと一緒にニコニコと赤ちゃんを抱いている




入学式でおばさんと小学生の子供が手を繋いで写真を撮ってそのまま入学式のアーチをくぐる




病院でおばさんのお父さんらしき人が白い布をかけられている
まわりにいる家族が泣き崩れる




おばさんはガタガタと震えてそこに座り込んでしまった。


おばさんはここがどこであるかを悟ったのだ。



「この悪魔…!何でこの記憶を…!」


「分かったか…。ここはお前の記憶だ。私はお前の記憶…意識に侵入してこの部屋を作った。お前はずっとこの部屋で一生を過ごすか?」


優はふっと高笑いをして周りにあったおばさんの記憶のビジョンをパッと消した。

真っ暗闇になるビジョン。


おばさんと優だけが白く輝いていた。


おばさんを支配した。




周りが明るくなっていく…。

おばさんは救急車に運ばれて病院に入院した。

暑さで倒れたとか…何やらとかで意識不明らしい。





「半年は目が覚めないだろうな。うっ…。最早無理か…。あと少しでこの体が手に入る…我慢だ。」


優から水沫餓鬼が出てきた。それは白いもやになって青い空に消えていった。



優は泣きながらあのおばさんのことを詫びながら九鈴の家に向かった。


九鈴の家のドアをノックするとき電気に触れたような衝撃が優を襲った。


「た…助けて。」


優はドアの前に倒れこんだ。




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