[携帯モード] [URL送信]

ホラー小説
ずれていく日常 中編W




作 天海千風






「優…説明する。」

九鈴が黒い札を優の胸に投げつけた。黒い札は優の胸に張り付き黄色く光った。



「水泡餓鬼は…人の心にとりつき人の邪悪な所をつつき、取り入る。」


“取り入る”というところで九鈴の顔がダークになった。

優は


「取り入れらたらどうなるの?ヤバイの?」

「ヤバイわね…。取り入れられた人はその後の人生を水沫餓鬼に支配されてしまう。」

「そして水沫餓鬼は子を産み落とし支配した人の親縁者や親友…または宣戦布告をした人に子を植える。」

優は話を聞いているうちに怖くなってガタガタ震えてしまった。

にっこりと九鈴のお姉さんが黒い札を指差して何かの呪文を唱えた。
黒い札から黄色い閃光がほとばしる。

優から恐怖などがすぅっと消えていった。


「お姉ちゃんありがとう。」


「わ…わたし水沫餓鬼を甘く見てた。じゃ、美羽は…」


「もう取り入れられた。もう時間はない。」

お姉さんがそういうとすっくとたち、優を抱き締めた。

優はただただびっくりして抱き返すことしか出来なかった。

しばらくしてお姉さん=由縁(ゆえ)は離れていった。


「九鈴!大丈夫!この子はあなたの後のエサの予定らしいわ!だから…九鈴頑張り。」


「分かった。お姉ちゃんありがとう。」


「で!優。もし私が失敗してもアナタが頑張ればもしかすれば水沫餓鬼は消えるかもね
意味わかる?」


「わかる。」

もう夜が明けてきた。

あ…学校行かなきゃ。荷物忘れてるし。

優はそう思った。

九鈴たちは九鈴のお母様や由縁とともにボソボソと話していた。




こっそりと学校にいった。

シーンとしていて逆に薄気味悪い。



背後から突然声がした。



「おはよう。優」


ちょっと高くて時々うわずった声を出すのは…






美羽







「…美羽…」


「どうしたの?優?」



優は後ずさりしながら美羽から離れようとした。

コツン とロッカーにぶっかってしまった。

ばけつがカランからんとうるさい音を出してそこら中を転げ回る。

優がそれに見とれている間美羽はもう優の肩を触れるぐらいの距離にいた。


「何で逃げんの?あぁだからバカな優は解らないよ。行動が意味不明。意味わかんない。死ね。」

「し…死ね?」

可愛い美羽はそういう言葉を使わない。

美羽が変わったみたい。


「私は騙されない。あなたは…美羽ではない。
水沫餓鬼よ!!」

優はそういうとバケツを美羽にたたきつけ一目散に逃げた。


後ろから美羽が追っかけてくる。


頭から血を出しながら。


「ゆぅーーー!私よ…美羽よ…」


「美羽じゃない!」


廊下を走り回り階段をぐるぐると回った。

走るたびにぼやけた教室が通りすぎる。

ひとつ ふたつ みっつ よっつめ いっつめ




行き止まりだ。




「ゆぅー。もう私は子供を孕んだのよ。この子を守らなきゃ…。」


「きゃああああああああああああああああ!!」

美羽の顔がどろりとサンショウウオのような顔になった。

「ちっ…。ほんとうはあの陰陽師の九鈴とやらを先に戴く予定がな…。九鈴とやらは今結界の中だね。」


「だ・か・ら貴方を先に戴くわ。」

サンショウウオのような顔から不気味に笑みがこぼれる。



べたーりとサンショウウオのような手が優を襲った。


優の心の中に水沫餓鬼が侵入した。

うにょうにょとした感覚。

やがて心の中にあの声が響いた。




やったわーー!!


この子を守れた…。


おばあ様の予言通り…。


あははははははははははははははははははは!!



甲高い声が心の中に響いたかと思うと水沫餓鬼は美羽の顔に戻った。

そしてツカツカと廊下を満足そうな笑みで歩いていった。











パキン

パキンガリガリ
パキン パキン



優の心の中になにかが割れる音がした。


意識が薄れて行くか…

優の体は生まれたばかりの水沫餓鬼に支配された。


ふらふらと優の形をした水沫餓鬼が歩く。



向かう先は九鈴んち


それを阻止しようと優の意識と水沫餓鬼が戦う。





[*前へ][次へ#]

5/11ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!