希菜の恋
希菜の恋 7
教室に戻っても悠基はいなかった。
「悠基さんは?」
「……いなかったです」
「そう、席に戻りなさい」
綾が言うままに希菜は席に戻った。
英語の授業が終わり、希菜は綾の英語の授業道具を持ち、一緒に職員室に戻った。
職員室に着くと綾はお礼を言い、授業道具を取って職員室に入ろうとすると、綾の手帳らしいものが落ちていた。
希菜が気が付いて、拾って、つい中身をみてしまった。
中身は悠基と綾のプリクラ、2ショット写真ばっかりだった。
やっと悠基の言葉が分かった。
綾と悠基は前付き合った訳だ。
「……嘘でしょう…」
希菜の後ろに何か人影があった。振り返ると綾がいた。
手帳を見たのを綾に見られた。
「……希菜さん…見たわね?」
「………はい」
「仕方ないわね…確かに悠基と付き合ったわ」
「……ふっ…今話すと長い話になりそうだから放課後にここに来てね」
希菜はうなずいた。
放課後ー…
希菜が職員室に行くと、綾がいた。
「あっ来たわね、ここに座って」
「何か飲む?紅茶やコーヒーがあるんだけど」
「じゃ紅茶でお願いします」
綾は紅茶を作っていた。
作っている間、希菜は綾の机を見ると、一つだけ小さな写真があった。悠基と綾の写真だった。
やっぱり付き合っていたんだ。この2人…
「お待たせ」
希菜に紅茶を差し上げ、綾は過去の話をしていた。
希菜はただ聞いているだけだった。
悠基が中学生の頃…
悠基は頭も良く、スポーツマンで顔も良かった。
いつも悠基のそばは女の子がいた。
いないことは一度もなかった。
「はーい、席について!」
悠基の担任は綾だった。
「女の子たちは自分のクラスに戻りなさいねー」
女の子たちは渋々クラスに戻った。
「はぁ…だるいから保健室に行くわ」
「またぁ?仮病でしょー?」
悠基は無視し、教室のドアを開けた。
「もぉ…」
悠基は屋上にいた。
しばらくすると、綾がやってきた。
「やっぱりここにいたねぇ」
「……何か用?」
「昨日お菓子作ったのー余ったからあげる〜」
綾はお菓子を沢山もってきた。
悠基はただお菓子を食べた。
「なんか焦げ臭い」
「ああ失敗作だから」
「はぁ!?」
綾はクスッと笑っていた。
次の日もー…
次の日にもー…
まだ屋上は綾と悠基がいる。
前には笑っていなかった氷の仮面をかぶっていた悠基は綾の熱によって溶けさせようとしている。
少しずつ、悠基は笑うようになった。
「…………」
悠基にも綾のことが好きになってしまった。
翌日……
綾はまたやってきた。
悠基は綾に告白した。
「お前のことが好きなんだ」
「…はっ…?今何て言った…?」
「だから…好きなんだ」
綾はしばらく口を閉じた。
「……私も悠基が好きよ。生徒として…」
「違う!恋として好きなんだ!」
悠基が強く言うと、綾は黙っていた。
「何か言えよ…!」
「私も…好きなんだけど…っ」
その言葉を聞くと悠基は喜んでいた。
「ありがとうっ」
普通の悠基じゃないみたいに急に綾を抱きしめた。
………本当にこれでいいよね…?
綾の心の中は迷っていた。
ある日、付き合っていた人からプロポーズされ、婚約してしまった。
今月、結婚式を開く予定である。
悠基はまだそのことを知らなく、ただ綾を愛していたー……
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