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私は絶対あなたを愛さない
01 ピレキは神となった
シュリはあのあと、長い距離をひたすらリリーと走り続けた。

ずっと気づいてたセミル王子がついてくることを。
だけど、今だけは忘れたくて無視してひたすら走りだした。
今だけは自由になりたかった。

どのくらい走っただろう。
リリーのペースが落ちるくらいなのだから相当走ったはずだった。
でも、リリーは泡もふいていない。
普通の馬ならふいて倒れていただろう。
リリーの体力はまだあった。

シュリが止まると、後ろにセミル王子も止まった。
彼の馬はまだ元気そうだった。
シュリは思わず唇をかみしめる。
馬の体力も乗ってる側の体力も彼のほうが勝っていた。

女である欠点でもある。
男より比較的に体力が少ない。
どんなに鍛えてもスタートラインが違うのだから。

「お遊びはおしまいか?」
セミルは鼻で笑うようにシュリを見下ろした。
シュリはどうしようもない怒りを覚えたが無表情で答えた。
「ええ。 嫁ぐ前に思いっきり走ってみたかったので」
シュリはそれだけ言うとリリーの毛並みをそろえるために、離れようとしたら強い力で抱き寄せられていた。

「忘れるな。 お前は俺の妻になる」
その声にビクリとシュリの肩が震えた。
国のため。
私はこの男のものになる。
だけど、渡さない。
身体はすでに奪われた。

白ユリを。
彼はむさぼった。
それも、神をあざ笑うかのように、わが神ピレキの前で。
すべてを見せるかのように。
苦痛と共に純潔を奪ったのだ。

私の心だけは。
絶対に渡さない。
渡すわけにはいかない。

ずっと私の心は聖エベレスト王国のもの。
わが神ピレキのもの。

白ユリはおられた。
その花は白ユリとしての資格を失った。
それは白ユリの象徴でもあり、花言葉でもあるものを。
奪われたと言っても、失ってしまったのだ。
白ユリは。
象徴というものを。

それでも、その白ユリは自ら身体を立て直そうとする。
おられても、その土地を元気にするために。
その土地に住む花々を安心させるために。
己をだましても、立て直そうとする。

白ユリを折った男に己を捧げるために。


神ピレキは王女だったと言われている。
彼女はシュリと同じ金髪にアイブルーの瞳を持っていた。
他の精霊たちにすら愛された少女だった。

彼女は白ユリを愛していた。
シュリも同じ白ユリを愛した。

白くどの花より美しい。
薔薇も美しいけど、どこか人を引き付けない。
拒むように棘がある。
白ユリは来るものをやさしく受け止める優しさがある。

彼女は隣国の浮気王子に嫁いだ。
国のために。
浮気王子はピレキの身体だけを求めた。
ピレキは美しかったため、どんな貴族より浮気王子にとっても優越感に浸れた。

ピレキは毎夜毎夜まるで娼婦のように求められた。
浮気王子には子供を作る機能が止まっていたため、ピレキは解放されることがなかった。

浮気王子は狂っていた。
否、ピレキが美しさゆえに狂わせてしまったのかもしれない。
彼女を監禁して、毎夜ではなくいつでも彼女を求めた。
王子を心配した王までもピレキの魅力を知り、息子の合間をぬいてピレキを求めた。
彼女の身体と心は限界だった。
疲れきってもたなかった。

王と王子の合間を盗み、国民全員が見えるバルコニーに出た。
久しぶりに見るピレキは相変わらず美しかったが、彼女はもうがりがりにやせて生気がなかった。

「私がいけなかったというのでしょうか」

ピレキは驚く国民の前で、王と王子の前で、バルコニーから飛び降りた。
その手には一輪の白ユリが折れていた。


ピレキはそのあと、心が美しく神のもとで幸せになった。
そして、神となった。


「私の身体はあなたのものとなったわ。 でも、渡さない。 私の心だけは。 絶対に」
シュリはセミルを睨んだ。

白ユリは己の身体を立て直す。
その土地のために。
白ユリにとって、白ユリは己を折った男のものではなく、その土地のものだから。

白ユリの心は渡さない、絶対に

私が愛した復讐の相手(ヒト)本編完結しました!!番外編も更新したので見てください。
私は絶対にあなたを愛さない、私が愛した復讐の相手(ヒト)は更新今日(3月25日)は終了ですが、君の血に乾杯、はさらに更新したいと思います。
更新順番アンケートをしてくださるとうれしいです。


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