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私は絶対あなたを愛さない
07 人々は知らない
お元気ですか?
私はとても元気です。

このレオナルセリト王国はとてもすばらしい国です。
和解をした聖エベレスト王国と良い交流がもてることを楽しみにしています。

オリゼ、
お父様のことを支えてあげてください。
聖エベレスト王国のために生きてください。
私も母国を愛し続けます。

国のために。
私たちはそれで、つながり続けているのですから。


シュリは羽根ペンを滑らせていた。
聖エベレスト王国への手紙だった。
今はまだ出せないが、いつか出そう。
この心が折れないように。

シュリは涙をふいたあと、手紙を書いた。
レイは出て行っている。
きっと、部屋の前にいるのだろうけど。

窓際にあるのはバラだった。
白いバラ。
大きな美しいバラだった。

くしゃり…

シュリは白バラを握りしめていた。
柔らかい花はすぐ散る。
もろく、はかない、美しい花。
もう何も知らなかった私じゃない。
薔薇の花言葉
愛情。
蝶よ、花よと育てられた私。
愛情を込められた。
だから、聖エベレスト王国を愛してる。
守ってみせる。
絶対に。

「聖エベレスト王国のために、私の命。捧げます」

シュリは白バラの花びらが下に落ちるのも気にせず、そっと手を組み祈りをささげた。
わが神ピレキに。
ピレキが温かく抱きしめてくれてるような気がしたから。

守ってみせるわ。


「レイ、私は何のためにセミル様に望まれたの?」
シュリは部屋に入れたレイに紅茶をついでもらいながら、聞いた。
望まれたことをやる。

そう、
人形のフリをしてあげるわ。

完全な人形になんてならない。

「シュリ様ならその理由をずっと教えられてきたのでは?」
レイはそれだけ答えた。
本当はほかに理由がある。
それを言うわけにはいかないのだ。

シュリ本人が知らないといけないのだ。

「世継ぎ? そのことなら分かってるわ」
シュリは入れてもらった紅茶のカップを優雅にもった。
どこで見られてるかわからない。
聖エベレスト王国の恥には絶対にならない。
なったなら、舌を噛んで死にたいくらいだ。

「セミル様は子供が欲しいのかしら」
シュリはこの言葉を言うのが憎たらしかった。
子供、子孫のために、聖エベレスト王国を支配したというのか。
私が不幸になったなんて言わない。
ただ、不安におびえる聖エベレスト王国にしてくれたのはそのためだったのか。それが、許せない。
シュリの瞳に映る悔しさと憎しみにレイは気がついていたが、あえて冷たい侍女を装った。

「シュリ様。今夜もしっかり役目をはたしてください」

レイはまるで、己の胸に刃が刺さったような心の痛みを感じだ。
シュリの瞳は見えるほど動揺し、悲しみに満ちていた。
どんなに強がっていても、16歳だ。

「分かったわ。子どもを産めば私のことをほっといてくれるんでしょ?」
シュリはレイを睨むように、見ていた。
それは笑みにも見える睨み。
一見分からない悔しさと憎しみ。

きっと、人々は知らない。
彼女の心が今にも崩れてしまいそうなことを―――

白ユリはもうすぐ折れてしまう

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