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私は絶対あなたを愛さない
03 私が忠誠を誓うは王子
シュリは身体のだるさに顔をしかめながら、起きた。
昨夜の悪夢をまた身体が現実だということを教えてくる。
シュリはセミルが隣にいないことに安堵しながら、急いで落としてある夜着をかぶった。
涙がこぼれていたのか、涙の跡がはりついていた。

「あっはは」
シュリの口から思わず笑いがこぼれる。
でも、その顔は悲痛に歪められて笑みになっていない。
色に染まらない。
決意したばかりなのに、どうしてこの心は今も揺らぎそうなの?

あの男に屈してしまえばいいのだ。
本当ならそうすればいい。
あの男の寵愛を受けて、聖エベレスト王国を守ってもらうことが大事なのだから。
そんなこと分かってる。
だから、彼に反抗したりしない。
昨夜だって、されるがままだった。

ピレキはどんな気持ちだったのでしょうね…

彼女はもっとつらかったのに違いない。
彼はまだ、毎夜毎夜とはいってない。
だから、私の心は壊れてない。
今にも揺らいでしまいそうだけど、壊れてはない。

ピレキは神に愛された。
私は…?

私は、お父様と弟に愛された。
それで、いい。
彼らや聖エベレスト王国の民を守れるのだから。

「シュリ様。 失礼します」
レオナルセリト王国の侍女らしき人が一人入ってきた。
彼女の顔は無表情だった。
「シュリ様に御使いさせていただくレイと言います」
レイはそれだけ、頭を下げるとシュリに近づいてきて着替えをさせた。
手伝いが荒く、シュリは歓迎されていないことを肌で感じていた。

「セミル様がお呼びです」
レイに案内されて、セミルのところへ歩くのだった。
シュリは動かない身体に鞭を打ってそこまで行くのだった。


「シュリ。 今日からレイと一緒に馬車の中に入ってもらう。 今日中レオナルセリト王国に
戻る」
セミルはそれだけと言うばかりに護衛たちにシュリを馬車まで案内させるのだった。


シュリは馬車の中でひたすら祈りをささげていた。
それは目の前にいるレイの存在を否定するようなことだと分かっていたが、そうすることしか
シュリにはできなかった。
昨夜のことで、シュリの心は限界にまで達していたのだから。

わが神ピレキ。
私に勇気をください。

シュリの祈りは願いと国を守ってくれるように祈ることだった。
レイはその間、何も言わなかった。


「聖エベレスト王国の掟を未だに続けていらっしゃるのですか?」
さっきまで黙っていたレイがシュリに話しかけてきた。
彼女は侍女と言う立場だが、シュリに敬意などのかけらもない。
「ええ。 あそこは私の愛する国よ」
シュリはレイの態度に対して怒りを感じなかった。

怒りなんて感じない。
あの国を守るためならこんな仕打ち耐えられることなのだから。

「王子の寵愛を手に入れればあの国は守られる」
レイはシュリの真意をはかろうと目を光らせたが、シュリは祈りのままだった。
「ええ。 私は聖エベレスト王国を守ることだけのために生きてるから」
シュリは目を開けた。
その目は
王子の寵愛なんていらない。
聖エベレスト王国さえ、守れれば自分はかまわない
と言っていた。

この小さな16歳の少女の肩に、彼女の祖国の運命がかかってる。
だから、昨夜のことさえ受け入れようとしている。
ただ、心は渡さない、と。
16歳の少女の肩に重すぎる運命が。

同情することなんてない。
私はセミル王子に忠誠を誓った身。
なのに、この気持はなんなんだろうか?

レイは己のうちにある想いの名前が分からなかった。

シュリはそのあと、ずっと祈りをささげていたのだった―――。


白ユリは今にも折れてしまいそうだった


君の血に乾杯も更新します

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