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私は絶対あなたを愛さない
02 誰も知らない
シュリたちはテントでひと夜を過ごすことになった。
馬車の中で寝るなんて絶対に嫌だったから。
「セミル王子とシュリ様はご一緒されるので、どうぞこちらに」
にっこり、護衛たちがシュリをテントの中に押し込んだのだった。


シュリはとっととベッド(折りたたみ式)に乗り、寝る準備に入った。
1日馬に乗ってると体中のあちらこちらがきしむように痛い。
セミルは幸いのことにここにはいない。
その間に寝てしまえば、寝ている女なんか興味なくなるはず!!

シュリは普段すぐ眠りに入るはずなのに。
愛する弟が、愛する父がいる。
あの国が、今頭の中で見えてくる。

プチンと糸が切れたようにシュリの目から涙がこぼれ始めた。
「あ!!」
シュリは思わず頬に手を当てる。
涙がこぼれている。
感情なんてあっちにおいていこうとしたのに。

身体が引きちぎられたような思いであそこから離れたのに。
あのすばらしい愛する国を守るために。
泣かないって決めたのに。
こんなにも簡単にとけてしまうのだろうか。

「国を思って泣いているのか?」
いつの間にかセミルがテントの入口に立っていた。
シュリは泣いている顔を見せたくなくて下を向いた。

こんなヤツに
涙なんか見せたくなかった。

セミルはそのシュリの反応にふっと残酷な笑みをうかべた。
それはきれいで目を奪われてしまいそうだったが、シュリは下を向いていて気がつかなった。
「お前の身体一つにあの国の平和は乗っかっている。 くれぐれも、軽率な行動はとらないほうがいいぜ?」
セミルはシュリの身体を抱き寄せた。
その意味を知って、シュリの身体はビクリと震える。
こんな日にすら、身体を求めてこようとするのか。 この王子は。

シュリは唇をかんだ。
私のこの身体にすべてはかかってる。
何かすればその分聖エベレスト王国にそれがかえってくる。
それなら私は―――

シュリはそっと目を閉じた。
身体は今も震えているが、それは仕方がないだろう。
震えていることは本人が一番分かっている。
だけど、私は王女。
2人の姉は殺された、この男の国に。
私は国のためになら殺されよう。
喜んでこの命を投げ出そう。

この男の色になんて染まらない。
染まらせない。
私は白ユリではない。
もうそれはないのだ。
それでも―――

私は白でいよう。
愛する人ができても、それはかなわない。
この男が聖エベレスト王国を潰すかもしれない。

それならレオナルセリトでは愛する人などつくらない。
私には愛する者が十分あるのだから。
聖エベレストの誇りを捨てない。
白ユリの象徴は失っても、私は白いままでいたい。

この男の色になんて染まらない。
私は私の色を永遠に守り続けよう。

シュリはその夜、悪夢でしかなかったがそれでも目をそらさなかった。
悪夢と言う現実から。

この目に焼き付けといた。
目をそらしたら、その男の色に侵入されてしまいそうだったから。
私は私のままで。
白ユリは白ユリのままでいたいのだから。


シュリがつかれて眠っている間、セミルは普段見せないほどやさしい表情をしていた。
彼女を愛おしそうに見つめてる。
どんなに冷たくふるまっても彼がシュリを愛おしい瞳で見ていることを誰もしらない。
「シュリ… 俺はお前を愛してる…」
セミルの悲痛を含んだ声は誰の耳にも届く前に夜風にさらわれて消えていくのだった。

彼の瞳に映る愛


新連載をやるので、こんなのが読みたい!!など送ってくださるとうれしいです!!
それを元にして書きたいと思っています!!
番外編などのことも募集しています。

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