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私が愛した復讐の相手(ヒト)
04 空色

刻々と消えようとしている命をぼんやり見つめてすみれは1日を過ごした。

両親が愛した教会と共に。
この教会は廃止されるはずだったが、本の売上金をすべてこの教会を買い取るのに使った。
もう残るのはすみれ本人だけ。

手紙も出した。
愛する人に別れを言うことはできなかったけど、ちゃんと手紙はとどくよね?


すみれから届く3通の手紙
その中にはどんな想いが詰まっているのだろうか??


今、3人の想いが彼らの足を走りださせた。




午前0時
すみれは持っていた薬を出した。
もちろん、裏で買った有毒の薬。
迷いなんて必要ない。
震える手に腹を立てながら、それを口に運んだ。
舌にのった瞬間、ありえないしびれが襲ってくる。

すみれは思わずうずくまった。
死が、もう目の前まで迫っていた。

「「「すみれ!!」」」
教会のドアが乱暴に空き、愛する人、ずっと憎んだ人、利用するための友達だった人。
3人が駆け込んできた。

その手にはくしゃくしゃになった手紙を握りしめて
そこですみれの意識は闇の中に入っていった。



隼人と駿介とえりは病院の廊下のベンチでうずくまるように座っていた。
その手は祈るように組まれている。

『手術中』
その文字が痛く彼らの心を締め付けていた。
すみれは病気だった身体に有毒を飲んだ。
彼女の身体はもう限界だった。
でも、救急車の中で一回意識を取り戻した。
口を開いた彼女の言葉。

それが、忘れられない。

「空を…見上げて…」

すみれの目から涙がこぼれ落ちるのだった。


駿介と隼人は14年前のことを己の親から聞いた。
誤解、それでは納得しなくて隼人は己の父親を殴り倒した。
彼はされるがままになっていた。

すみれの両親と隼人の父親たちは昔から仲が良い友人たちだった。

すみれの両親は死を恐れていたのではない。
借金のせいですみれに被害が及ぶことを恐れていたのだ。

そのころは、森家も澤池家も2番だった。
1番のところに借金をしてしまったのだった。
両親は守るために、自らの命を代償としたのだった。


手術中の文字が消えて、先生たちが出てきた。
24時間以上たっていた。

「彼女の身体は病気だった。 でも、もう大丈夫。 彼女を神様が助けてくれたとしか思えないくらいきれいに消えたよ」
病院の先生たちはほっとした顔をしていた。
隼人たちは運ばれてくるすみれにずっと寄り添っていた。


すみれは5日も眠っていた。
このまま、彼女の命が消えてしまうのではと思うほど静かに。

隼人はずっと寄り添っていた。
すみれの手を握りながら。
「すみれ…。 言ってくれたじゃないか。 空を見上げろ、と。 一緒に見上げよう」
隼人の目から涙が出る。
こんなに細くて折れそうな手首。

目覚めてくれ。

まるで隼人の祈りに答えるように、ビクンと指が動いた。
「すみれ?」
隼人と先生たちが見守っている。
今日目覚めなかったら、もう目覚める見込みはなかった。
ゆっくり長いまつげが動く。
すみれが目を開いたのだった。

「隼人さん…」
すみれは見たこともないほどやさしい笑顔になった。
隼人はそれに違和感を覚える。
彼女のかぶっていた重い影が消えている。

「すみれ。 君は何のために生きていたんだ?」

病院の先生が驚くがそれを隼人は無視して、すみれの顔をじっと見ていた。
どんな変化も見逃さないように。

「幸せになるため」

すみれはにっこりほほ笑んだ。
隼人は思わず目を見開いていた。

彼女は記憶を失ったんだ…
過去の記憶だけを…



そのあと、身体検査をしてその結果が出た。
10歳以降の記憶がきれいに抜けている。
そのかわり、身体の病気はきれいに消えていた。


彼女は無事退院した。
隼人たちは過去のことは己の胸にしまっておくことを約束した。

いっぱい、駿介とは殴り合いをした。
えりっていう子には怒鳴られた、駿介と一緒に。


僕たちはやっと過去から解放されたんだよ。すみれ。

 

3年後…
すみれと隼人は結婚した。

今は幸せに今身体に宿った小さな命を2人で愛した。
これから生まれてくる愛おしい愛の形。

私たちは今日も空を見上げる。

               私が愛した復讐の相手(ヒト) 完結!!
                   番外編も更新!!


やっと見つけた、いとおしいもの




完結しました!!
驚きです!! ハッピーエンドになっちゃいました。
アンハッピーにするはずが…
でも、すみれが幸せになれて結果オーライかもしれません。
今日はほかの小説も更新します!!
また、この小説の番外編はこれからも更新するので見てください!!
完結まで見てくださった方に感謝しています!!


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あきゅろす。
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