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私が愛した復讐の相手(ヒト)
08 この身は穢れている
今から14年前[隼人視点]

その日は月が見えない大雨の日だった。
僕は9歳の頃。

夜中眠れなくて下のゲームでもしてみようと思って、階段を下りていると会議室の部屋のドアが少しだけ開いていた。
ドラマの見すぎかな、と思いながらもそっと覗いてみるとそこには駿介のお父さんと僕のお父さんがいた。
それに、気を失ったお姉ちゃんも。

「なんでそんなヘマしてしまったんだい??」
僕のお父さん、晴朗は駿介のお父さんに優しく聞いていたがその目は焦りへと変わっていた。
「この子に見られたんだ。 あいつらを処分しているところ、あと君の部下にも」
駿介のお父さんの言葉に晴朗は目を見開き、養女として引き取ったお姉ちゃんを見た。
「この子とどの部下にだ?」
晴朗は低い声で聞く。
駿介のお父さんは有川とだけ答えた。夫婦に見られた、と。

晴朗は仲間と駿介のお父さんとそのお父さんの仲間と一緒にどこかへ行くのだった。
どうしても僕は知りたくなってトランクに忍び込んだ。
広いくるまってこういうとき便利☆なんて軽い気持ちだったんだ。
ただ、気絶したお姉ちゃんは僕にとって血のつながらなくても大切だったから。

ある小さな家についた。
そこに晴朗たちは入っていった。お姉ちゃんを抱きかかえながら。
その窓からそっと逃げ出す少女を見た。
家で何が起こっているのか少女の様子を見てすぐ分かってしまった。

僕はかまわず少女を追いかけてしまった。
大雨にぬれても、少女を追いかけていた。

孤児院の前にすわりこんでいた。
雨のためにぬれているが、その目からは涙が流れていなかったがその身体はものすごく震えていた。
僕がそっと見ていると、少女と目があった。

そして、少女は怒りを込めた目と口元だけの笑みをつくって僕に目で許さない、と言っていた。

僕はそんな視線に耐えられず、来た道を引き返していた。
お姉ちゃんのことを思い出したから。

だけど、戻って急いでトランクに隠れたけど、その小さな家は真っ赤な炎に包まれていた。

僕はそのあと、新聞で知った。
孤児院に行った少女の名は有川。 下の名前が戸籍がなかったため不明。 だけど、孤児院にいるはずだからお姉ちゃんが少女のかわりになっているんだ。
晴朗は孤児院にいた少女[すみれ]は遠い親戚に預けられて行方不明とデータにあったため安心してお姉ちゃんを殺した。

ただ、不幸にも事件を見てしまったお姉ちゃんとお父さんの部下。

僕は許さない。
お姉ちゃんを殺した、お父さんも、駿介のお父さんも、駿介も、愛子も、金持ちみんな。

少女の目は悲しみにあふれていた。
なのに、僕はこれから父さんの下でのうのうと生活するなんて。
そんなのできない。

お姉ちゃんのために僕は心を殺した。
だから、笑顔の悪魔と言われるほど冷酷になった。

まさか、彼女が有川 すみれ、否、今は水川 すみれだったんだから。


すみれはふっと笑った。
だけど、それは笑みにはならず苦しそうに顔を歪めただけだった。
「そうですか… あのときの気配はあなただったんですね」
すみれは唇をかみしめていた。
目には今にもあふれそうな涙がある。

僕は彼女を慰めることも、謝ることもしない。否、 できない。

父さんがやった過ちなのだから、僕には関係ないという意味ではない。
彼女のために僕は復讐に生きたわけじゃない、姉さんのために仇をうつために。
「駿介のお父さんまでもが…」
すみれの目からとうとう涙があふれていた。
それにすら気がついていないかのように、唇をかむ。
彼女の眼は表現できない深い悲しみとそして怒りがあった。

「隼人さん。 私を警察に言うなら言えばいいです。 私はどんなことをしてもあなたのお父さんを殺します」
すみれは涙を拭いて、隼人を見上げた。
「言う気なんてないよ。 それに、僕は僕のやり方であいつを殺す。 そうすれば、君は悪の手に染めなくていいだろう?」
隼人はようやくこの気持に名前がつけられる、と涼しい気分だった。

彼女を愛している。
どうしようもないほど。
だからといって僕は愛を知る必要も資格もない。

僕は悪に染まりきってしまっている。
だからって君は被害者なんだ。
君は僕や父と違って澄んでいる。
だから、お願いだ。
悪になんて染まらないでくれ。 どんなことがあっても君の瞳は澄んでいる。 輝きを失っていないのだから。


すみれはひたすら、首を横に振っていた。

こんなにもあなたが愛おしい。
どんなにカギをかけても、この想いは膨れ上がってそんなカギ意味ももたないものにしてしまう。
だからって、私は復讐だけのために生きると決めたのだから。

あなたはあなたのままで。
これから、素晴らしい人に出会えるでしょう?
裕福な生活があるでしょう?
あなたは幸せになれる人なんだから。 もう、あなたのことを憎む必要なんてないのだから。
だから、お願い。
悪になんて染まらないで。 あなたは人を幸せにできる人なんだから。 輝きを失っていないもの。

すみれの目からまたあふれんばかりの涙がこぼれていた。
「お願い…分かって… 許してなんて言わないから… あなたは幸せになれるから…!」
すみれは強い力で引っ張られて抱きしめられていた。
「!!」
隼人は逃れようとするすみれをさらに強く抱きしめた。
骨がきしむほど。
「君を愛しているから!! だから、君には幸せになってもらいたいんだ。 こんなこと言う資格なんてないけど、君は幸せにならなくちゃいけないんだ!!」
隼人は知らない間に口を開いていた。
突然の告白にすみれの心のカギはあっという間に壊れていた。
「私もあなたを愛しているわ!! だからこそ、あなたは輝くところにいなくちゃいけないのよ!!」
すみれは必死に言った。

お願い、私は罪を背負って死ぬ覚悟はできている。
ただ、怖いだけ。
愛を知って、覚悟が小さく消えてしまいそうで。

「すみれ」
隼人はぎゅっと目を閉じた。

お願いだ、僕は苦しむ人たちをさんざん蹴落としてきた。
だから、この身は穢れている。
愛を知ってしまったら、君への思いを認めてしまったら、この穢れが武器にならなくなってしまう。

「だから、お願い」

「だから、お願いだ」

すみれと隼人の声はかぶっていたが、そんなことより大切なことを言わないといけなかった。

「幸せになって」

「幸せになってほしい」

すみれは涙を拭いて、隼人の腕から逃れようとしたが、彼は放さなかった。
離せなかった。

1度、あふれ出てしまった想いを止めることなんてできない。

隼人は逃れようとするすみれの唇を本気で奪った。
すみれは驚いた顔をしていたが、そっと目を閉じた。

2人は憎しみと言う中で愛が芽生えた。
だけど…?




憎しみの中で見つけた愛


さらに急展開です!!
もう1つの小説私は絶対にあなたを愛さないもよろしくお願いします!!
今日(3月23日)は更新じゃんじゃんします!!
パソコンの電源はオンで!!

あと、次回は第四章に入ります!!
こちらのすみれ視点も作り中なので今日中にアップします!!

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あきゅろす。
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