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私が愛した復讐の相手(ヒト)
05 さぁ、ゲームを始めよう 前編(隼人・愛子・駿介)

駿介は朝目を覚ますと、隣にあるはずのぬくもりを探した。が、そのぬくもりはあっという間に消えているようだった。
そこでやっと、駿介はあわてて飛びあがる。
愛子がにっこり立っているところだった。この笑顔を見た時は、必ず彼女が不機嫌だということを物語っているのだった。

「彼女なら帰らせました、社長代理。 私がおっしゃったこと覚えていらっしゃいますよね?」

愛子は本当に絵にかくようににっこりしていた。すみれが駿介の部屋で、それもベッドで寝ていることなんて考えられることは1つしかない。
あれほど、大切にしろと言ったはずなのに。
愛子はこめかみを押さえて、駿介が口を開くのを待っていた。
どうせ、黙ってるんでしょうけど。
だけど、愛子の予想とは違い駿介はにやりと笑みをつくっていた。

「覚えているぜ。 そのとおりにしてみたんだよ。 そしたら、すみれがいるだけでこんなによく眠れた」

愛子は思わず目を見開いていた。
駿介の笑みはにやり、だがこんなに幸せそうな彼を愛子は今まで見たことがなかった。

ああ、本当に彼女を愛しているのね…
それなら、大切にしなさい。

愛子は駿介にほほ笑んでいた。
これで、彼も幸せになれそうな道へ進みだした。
私が頼まれたことも終わろうとしている。
愛子はただ1つ心にかぶるものがあった。
すみれ、のことだった、彼女は何か知れないものを持っている、そう本能が言い続けているのだった。

駿介が彼女のことを本気で愛しているのを止めたりしない。
ただ、彼女は危険だと本能が伝えてくる、訴えかけてくる。

私は何ができるの…?

愛子が思考に入り込んでいる間に駿介はスーツに着替えて、愛子に声をかけてきた。
「行こう」
愛子はその声で思考を打ち破り、駿介の後に続いて部屋を出て行った。

駿介の部屋から出るとき、愛子の鼻にバラの香りがかすめたのだった。


すみれは電車の中でドアに寄りかかりながら目を閉じていた。

不覚にもあの夜は悪夢を見ずに眠った。こんなこと、久しぶりだった。
毎日、私がやるべきことを忘れないための忠告。
なのに、昨日は見なかったせいで心が揺らいでいる。だけど、それ以上に安堵している自分にいらついていた。
「ばかみたい…」
すみれのはかなく弱い声は人々の雑音でかき消される。
だから、彼女のつぶやいた言葉は誰の耳にも届けられない。

…この一言にどんな意味がこもっていたのかすら。


隼人は久しぶりに見る駿介の姿に笑みを隠すことをしなかった。
彼らは兄弟のように育ったとは言い難いが、駿介はいつも隼人に対していい感情は湧かなかったようだ。

『俺のほしいものは必ず奪うくせに』

いつだろうか。
駿介がそう呟いて、その日から泣かなくなったのは。
その日を境に森家の自覚をもったのは。
僕と駿介。
僕たちは一生分かりあえないだろう。
今もほしいものが一緒なのだから。 いつもなら譲っていたかもしれないが(本人は奪った自覚ない)彼女だけは渡さない。

「お久しぶりです、澤池さん」
駿介の秘書、愛子がにこやかな笑みをうかべて隼人に話しかけてきた。
その横には駿介がもちろんいる。
「お久しぶり。 愛子さんに駿介」
隼人はくったくもない笑顔を浮かべた。それを見た愛子は幼馴染だとしてもドキッとしてしまう。
彼はすみれと同じ異性を引き付けてしまうのだった。
その彼が笑顔を浮かべたのだから、まわりのものも釘づけになってる。
「久しぶりだな」
駿介は隼人に皮肉そうな笑みを浮かべかえした。
二人の顔を見比べれば9割が隼人を選ぶだろう、1割はその皮肉な笑みが好きという女性が入ってる。
それくらい2人は正反対なのだった。
「いつもご苦労だね」
隼人は愛子に悩殺スマイルを浮かべて、甘い声で言う。
彼女は普段冷静に物事を判断するはずなのに、今にも倒れてしまいそうだった。
「だから!! もうからかわないで!!」
愛子は顔を真っ赤にしながらも隼人に反抗するけど、彼は笑ってその反抗をよけてしまう。
まわりの社員たちは顔を真っ赤にしながら、イスにへなへなと座り込んでいた。
愛子が倒れなかったのは幼馴染で一応なれているからだろう。

「仕事の話をしにきたんだ」

駿介は隼人がこれ以上愛子に何かして仕事が遅れるのを防ぐため、さっそく仕事の話に入ることにした。
隼人はやれやれという顔をしながら、ロビーのイスに座った。

「森家がいきなりパソコンの強化をするなんて珍しいね」

それは愛子が言い出したことだった。 最近、パソコンがおかしい、と。
ウィルスにでも感染すると大変なことになるので、澤池グループに頼むことにしたのだった。
「最近、異変を感じているので」
愛子はあくまで仕事体制をこれ以上崩すまいと、冷静にふるまった。が、異変という言葉に隼人は真剣な顔になった。
「そのパソコンを見せてくれ」
愛子は言われたとおり、そのパソコンを隼人に渡した。
彼はもちろん、ウィルス、ハッカーの対処にも慣れている。

「これは…」

その隼人の顔が見る見るうちに真っ青になっていた。
さすがに駿介も何があったのか、と言う顔をしている。

「ハッカーから予告状が来ている。 これは、あと5分25秒後、このパソコンのデーターをすべて奪い取るということだ」

愛子も駿介も思わず隼人の言葉に目を見開いていた。
そのパソコンは愛子のパソコンだ。
もちろん、大事なデータがいっぱい詰まっている。
これがバレてしまったら森家がどうなるか分からない、それくらい大事なものだった。

「今すぐ、このパソコンのデータを移すことができないの!?」

愛子が焦った顔をして、隼人に言うが、彼は首を横に振った。
「すでにデータは囲まれている。 このセキリティを壊すのがハッカーのやろうとしていることだ。 ハッカーより早くセキリティでハッカーをつぶさないといけない」
隼人はふっと困ったように笑った。
これをやったハッカーは今までにないくらい優秀だ。
なにが、異変なのだ。
これは大問題だった。

「それに、このハッカーは本気ではない。本気ならとっくに取ってる。 愛子や駿介、いや、森家自体に対してゲームを仕掛けているようなものだ」
隼人の言葉に対して2人は怒りを隠せなかった。
ハッカーごときに森家を侮辱されているようなものだ。 そんなの許せるわけがない。
「さて、そろそろ始まる。 少し静かにしていてくれ」
隼人は手をパキパキとならせて、パソコンのキーボード―に打ち込むのだった。

打ち込む隼人の口元には笑みが浮かんでいた。
だけど、その笑みを見たものはいない。



僕との戦いに勝てるかな? ハッカーさん

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