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私が愛した復讐の相手(ヒト)
05 まるで、世界は水のよう 舞踏会編前編
「今日は駿介も来るんだって。高校んとき、コクったのにあたし振られたんだよね」
ギャル子さんたちは相変わらずキャバ嬢のようだった。
その中でも常に目を引くすみれ、それに気づいていないのは本人だけのようだ。
「水川。久しぶりだな」
不良たちだった駿介の仲間がたとえ、すみれにアタックしようとしてもすみれはニコリともせずただ見上げてくるだけだった。

「お久しぶりですね」
白いスーツを着て、にこやかにすみれに話しかけてきたのは澤池 隼人、あの男の息子だった。
彼は駿介に比べを取らないほど美形だ。
すみれは美人というよりかわいい、その2人が並ぶと絵になるようだった。
「お久しぶりです」
すみれもこのときはにこやかに返した。
だけど、これ以上話すことなんてない。
こういうパーティーに来たのなら、情報収集か小説のネタ探し。
それしかやることがないのだから。
踊ることも、話すこともすみれにとってはどうでもいいこと。
友達?
そんなのいない。だって、彼女があまりにも目を奪ってしまいすぎたから。
妬みとはどの世界にも共通する感情。
だけど、それゆえに彼女は輝いているのだから。

「お名前を教えていただいてもよろしいですか?」
なのに、隼人は相変わらずすみれに話しかけてくる。
これはこっちには好都合だが、この人はとってもやりづらかった。
高校の17歳の出来事から良心なんて捨てていた。

最初から捨てたはずなのに、あの頃はまだ幼かった。

すみれはどうせまだ情報も集まらないから作戦にでることにした。
「かまいません。私は水川 すみれです。水曜日の水に川、すみれはひらがなです」
周りから見れば絵になるように美しく見えただろう。
そんなはずないのに。
「すみれさんですか。僕の名前は澤池 隼人、って言ってももう知られているんですがね…」
隼人はくったくのない笑顔で笑っていた。
「小説活動は今していらっしゃるんですか?」
すみれは1番気になっていたことを聞いてみた。

復讐を忘れることはできない、だけど、すみれに唯一の安らぎをくれたのは本だったから。

「新作を書いています。次は物語編で」
隼人の言葉にすみれは思わず目を見開いた。
あのあと、隼人の小説のことを調べると彼はあの復讐物語以外は経済のことしか書いていなかった。
だから、物語を描くということは物語第二作目になる。
思わず気になってしまったすみれは自分自身に対して驚いていた。

なんで、こんな人のことを気にするの?
あの男の息子でしょ?
あなたのすべてを奪ったあの男の息子に興味なんてもってるの?

頭の中で冷静な私が冷たい声で警鐘を鳴らした。

「そうなんですか…。楽しみにしています」
すみれは驚いたのを隠すために、トイレへ行くことにした。

早くこの場から離れたかった。

だから、気がつかなかった。
隼人がすみれの後ろ姿に目を奪われていることなんて。
そのあとあまりにも切なくすみれを見ていたことなんて。



バシャーッ!!

トイレの水道の水を出してすみれはそれを見つめる。
「まるで…世界は水のようだわ」
すみれはふっと口元だけの笑みをつくったが、それは笑みにはならず泣くのに耐えるために思い切り唇をかむ。

私は大丈夫…。

そう何度も自分に言い聞かせながら。


僕は彼女を目で追っていた


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