[携帯モード] [URL送信]

私が愛した復讐の相手(ヒト)
02 あなたの笑顔
すみれはハイヒールなのに、かなり早く走っていた。
だけど、足がガクガクでたまらなく怖かった。
曲がり角で誰かとぶつかっていた。

すみれは震える身体じゃ支えられず、床へ倒れた。
「大丈夫ですか!?」
あわててぶつかった人物を抱き起そうとすると、先ほど見た彼女だった。
だけど、さっきとは違い恐怖の顔になり震えていた。
とりあえず、目の前の自分の部屋へと入った。


そっと彼女をベッドへと連れて行こうとすると、あわてて彼女は暴れ出した。
「いや!!」
彼女は僕の腕から逃れると部屋の壁へと張り付いていた。
その身体はガクガク震えていた。
「すみません。驚かせるつもりはなかったのですが。」
黒いスーツを着た男の人が立っていた。
すみれは先ほどぶつかった人だとすぐ分かった。
「ごめんなさい。」
すみれは頭を下げた。
少しなら身体の震えも収まった。だけど、この後外に行ったら…
「先ほど、父に挨拶していた方ですよね??」
すみれはその言葉に目を見開いた。
父??
「僕は澤池 隼人と言います。
先ほど、あなたが父に挨拶していたのを見ていたので。」
すみれは次は怒りで震えそうになった。
あなたは幸せなのね。
すみれは内心にその怒りを爆発させながらも、ほほえんだ。
「ありがとうございました。少し間だけでいいのでこちらにいさせてもらってもいいですか??もし、不都合ならすぐ帰ります。ただ…。」
すみれはここは駿介に会わないようにすることが大切だった。
「かまいません。ただ、僕ここで仕事をするので…。」
隼人はくったくのない笑顔で微笑んでいた。
その微笑みを見るとすみれははらわたが煮えくりかえっていた。
「ありがとうございます。私は本を読んでいるので静かにします。」
すみれはこれ以上隼人の顔を見ることができなかった。
見たら、
この内に秘めた怒りをぶつけてしまいそうだった。
今はまだその時じゃない。
そう言い聞かせるしかなかった。

「わかりました。」
隼人はにっこりほほ笑み、デスクに座った。
すみれは唯一持っていたバッグの中にある本を取り出し、読み始めた。

どれくらい時間が経っただろう。
これは悲しい男の復讐物語、だけど、彼は復讐する前に死んでしまう。
自ら。
愛を知ってしまったために。
すみれは知らぬ間に泣いていた。
この主人公はあまりにも純粋だった。
本当は復讐なんかしたくないのに、するしかなかったから。
すみれはそう想うと涙が止まらなかった。

「どうぞ。」
ティッシュを差し出された。
すみれは驚いて隼人を見上げた。
すっかり忘れていたがここは隼人のホテルの部屋。
「あ!ありがとうございます。」
すみれは顔が赤くなるのを自分でも感じていた。
「それは、僕が書いたものですね…。」
隼人の言葉にすみれは目を見開いた。
あわてて作者を見ると隼人の名前が書いてあった。
「そうだったんですか…。大学の友達に借りたもので…。」
えりがこれは感動ものだって貸してくれたもの。
まさか、澤池のものだったなんて。
隼人はにっこりほほ笑んで、すみれの隣に座った。
「僕が3年かけて書いたものなんです。」




その主人公はとても優しい人だったの



ランキングに参加しています。
リンクの一番下のWandering Networkにクリックしていただけるととても励みになります!!

[*前へ][次へ#]

2/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!