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私が愛した復讐の相手(ヒト)
07 誰よりも優雅に微笑む
愛子は駿介に愛子のケータイのGPSでやればいいと言うと、急いで電話を切った。
すみれを見失うわけにはいかないのだから。
なのに、すみれは小走りで駅へと向かっていた。


「もしもし??もうすぐ行くわ。こんなもので交換してくれるなんてうれしすぎる。」
すみれは電車の中で電話をしていた。
もちろん、こっそりと。
すみれの口元にはしっかり弧がかかれていた。
だって、こんなことであの男のことをつかめるのだから。


「リサ。」
何やらすみれは怪しげなお店に入り、カウンターに座ってた男に呼ばれた。
すみれのことを男は『リサ』と呼んだのを愛子は不思議に思いながらもハラハラしていた。
何やらすみれが愛子のほうをちらっと見るのだから。

「これだろ。」
男はすみれにチケットのようなものを渡していた。
「澤池晴朗の新作パーティーの招待状。リサは俺の友人で、俺の代理ってことになってるから。」
男はニヤリと笑った。すみれはありがと、と微笑んだ。
「これよ。」
すみれは5枚のチケットを渡した。
「アキバのどのお店でも5個好きなものを無料でもらえるわ。」
これで契約成立となった。男はすみれの顎を捕まえてくるが、それをさらりとはねのけた。
「私はこれで失礼するわ。」
すみれは愛子が電話に夢中になっている間のチャンスを逃さなかった。

「愛子!!」
駿介はそれから数秒後来た。もちろん、それはすみれがこの店の裏口から出たときだった。
「逃げられたわ!!すぐ追いましょう!!」
愛子は駿介が相手の男を威嚇するのを無理やり連れて行った。

「冗談じゃないわ。今、あんなヤツにかまってられない。」
すみれは久しぶりにタクシーを使おうと思ったがそれでは逆に追いつかれる可能性が高かったので、電車にした。

「リサのこと言ってるのか??」
さきほど話していた男は駿介たちに恐ろしく囲まれていた。
「リサ??」
駿介は内心舌打ちした。すみれが偽名を使うということはこの男は何も知らされてないのだろう。
「あの女のことは知らねぇよ。澤池のパーティーの招待状を渡しただけだ。」
愛子と駿介は眼を光らせた。
もちろん、駿介や愛子のもとにも届く。
愛子もそれなりのお金持ちの家なのだから。
「彼女はそのパーティーに来るわ。」
愛子はもう用もないというばかりに、駿介はまるで獲物を見るような目つきへとなっていた。
「あいつは俺からは逃げられねぇからな。」


すみれは夜、薄水色のミニドレスを着ていた。
澤池のパーティーはそこまで正式なかっこをしなければならないわけではない。
だから、丈が膝より少し上くらいのドレスでも大丈夫。
ハイヒールをはき、髪は黒髪のままにしていた。
すみれは会場へ入ると同時に誰よりも優雅で魅惑的な笑みを作っていた。

すみれが入ってくると、とたんに周りのものが目を奪われていた。
澤池晴朗、彼は小説家でもある。
何よりも、経済の本を出しながら会社の社長だ。
大手の。
彼に逆らえるものなど一人くらいしかいない。
森家、駿介の家だけだった。
「はじめまして。私、知り合いの代理として来ました。」
すみれは晴朗にありったけの微笑みを注いだ。
晴朗の目はすみれの身体を上から下まで欲望のまなざしでなめまわすように見た。
それは周りのものも、すみれすら分かっていたが、ここに来たらそうされても文句は言えない。
否、ここじゃなくても。
07 
いきなり会場が騒がしくなった。
「森 駿介と秘書たちがここにきた。」
会場の人たちが次々と言う。
もちろん、森家が来るなんて特別なのだ。
パーティーの主人公の晴朗さえも気をつかわないといけない。
「久しぶりだね。駿介君。」
晴朗はニコニコしながら駿介たちを迎えた。
駿介たちはすぐにパーティーの人たちに囲まれる羽目になった。
「お久しぶりです。」
駿介は笑みすら浮かべず、晴朗に答えた。
愛子は駿介の近くであっと小さく声を出した。
すみれがそっと出ていくのが見えたから。
「駿介。行って。」
愛子たちとバトンタッチして、駿介はすみれを追いかけた。

エレベーターに入り込んだすみれを追うように急いで入った。
中ではすみれはあまりにも驚いていた。

「すみれ。」
駿介はすみれに近寄るけど、すみれはそのたび後ろへ下がる。
「会いたかった。」
駿介はすみれに近寄ってその顎をつかんだ。
そうすると、すみれはその手を払いのけて睨みつけた。
「私は会いたくなかった。」
そして、優雅に微笑んだ。
その瞳にたくさんの軽蔑をふくめて。





私の目的はあなたに愛されることじゃないから

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