月の世界と呪符使い
その1
「お―っ!―っかり―ろっ!」
「―急車―!早く―べ!」
(――?俺を呼ぶ声――?えーっと――あれ?何で俺はこんなところに寝てるんだ?)
そう思い、地球より重い瞼をなんとか右目だけ抉じ開ける。
そうして目にしたものは――自分の下半身"だった"ものと、真っ赤な血の池だった。
(ああ――事故に遭ったのか)
周りからはノイズが混じった人の声が聞こえていたが、ほとんど聞き取れなかった。
(こりゃ、お終いだな)
痛みはすでに無く、肉体と魂を繋ぐ糸もほとんど残っていない。
走馬灯が脳内に走る。
父の、母の、妹の、クラスメートの、先生の、親友の――そして、大切なアイツの顔と思い出が浮かんでは消えていく。
(――ありがとう。本当に、ありがとう。そして――さようなら)
そうして俺は深海に沈むようにゆっくりと意識を失っていった。
気が付くと俺は360゜真っ白な空間に立っていた。
鋼の錬金術師に出てくる真理の扉のある場所みたいなもの、と言えば分かりやすいかな。
「ここは一体――」
「ここは特異点と呼ばれる場所だよ」
「え――?」
声がした方を見ると、見た目30代くらいの男がいつの間にか立っていた。
「簡単に説明すると……そうだな、神の領域、と言ったところか」
「神の――領域?」
「そう。そして私はこの場所の管理者である――だ」
待て。
今、何と言った――?
「だから、神様だ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
とりあえずプロローグその1完成
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