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第73話:羅濠教主の名代として
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「まったく、姉を放って耽るとは何事ですか?」

「いや、貰ったらヤらないとねぇ?」

「だいたい、私との睦み合いに支障を来すではありませんか!」

「あ、それは無いから」

「無い?」

「これでも数人と同時に、一晩で何回も射精せる程度には絶倫だからね」

「……そ、そうですか」

 ちょっと目を見開いてしまう羅濠教主ではあるが、ユートがちゃんとヤれるのなら構わないかと流したらしい。

 ユートとヤって孕むのは決定事項であり、孕んだら子育てと同時に後継として修業。

 夢が広がる話であったという。

「それで義姉上、今から閨でちゃっちゃとヤりますか? それとも食事でもして風呂でイチャイチャして盛り上がってから閨に運びますか? 酒でも飲めばその場のノリも軽くなりますし」

「今からというのはあの者を抱いたばかりの貴方に残り香が染み付いていますね。不愉快ですからその匂いを消してから……としましょう。鷹児に用意させた食事も有ります故、先ずは私の二百年に亘る初めての閨事の前祝いに乾杯しますか」

「了解しました」

 確かに唯我独尊を地で往くとか羅濠教主なだけに、他所の女の匂いを漂わせた男に抱かれるなど矜持が赦すまい。

 ユートは羅濠教主――羅 翠蓮が食事をしている食卓? にて先ずは乾杯の音頭を。

 陸 鷹化――陸家の御曹司ながら料理が上手い彼の手料理に舌鼓を打ち、水の精霊王から聖痕を受けていて酔わないけど美味い酒を飲んで愉しい一時を義姉と過ごした。

 神殺しの魔王で勝利者で王者とは云ってみても内側からは強くない、毒物を飲めば多少の抵抗力は上がっていても普通に殺せるのがその証拠。

 やはり度数の高いアルコールは羅 翠蓮をしても酔わせてしまい、未だに意識をはっきりと保つ辺り毒物にも強くなっているらしいが頬を仄かな朱に染めており、中身は魔王様ながらも見た目なら可憐な乙女な羅 翠蓮は凄まじく可愛らしい。

 しかも普段なら決して有り得ない御酌までしてくれており、笑顔を浮かべているのを見る辺りからして御機嫌は可成り良さそうだ。

 これを陸 鷹化が見たら震え上がり中国の裏側にまで逃走を図りそうだが……

「すっかりと酔ってしまいましたね。まさかこの羅濠ともあろう者が酒を飲んで酔い痴れるなどとは……初めての事です。フフ、些か昂っているのやも知れませんね。女としての自分など考えた事も無かったというのに」

 嗜まない訳ではないが本当に嗜み程度にしか飲まないのだろう、それだけユートに心を許している証左であるとも云えるが……

「では汗を流したら閨に参りますか」

「そうですね、些か酔いも覚めるでしょう」

 沐浴くらいが精々だろう羅 翠蓮ではあるけど、折角の二百年モノの処女を喪失するから今回はがっつりと風呂に入る予定だ。

 理由は自身の汗が今更ながら気になったというのもあるが、ユートに付いたアーシェラの匂いや汗を綺麗に流したかったのもある。

 よもや、自分が男女のそれに拘りを持つなんて思いもしなかったものの、悪くない気分を味わっているのも確かであったと云う。

 温かくて湯がタップリと入った湯槽が湯気をモウモウと上げている中、二人は掛け湯をして互いの身体を洗いっこ。

 これも羅濠教主にはあるまじき行い。

 そんな中で手ずからユートの背を流していたら気付いた下半身の盛り上がり、某・超絶美形主人公かニトロ砲かと云わんばかりの屹立に『ほう』と頬を染めてトロンと蕩けた表情となるものの、すぐに気付いて強がりにも似た言葉を紡ぐ。

「ほう、これが貴方のモノですか。他は鷹児くらいしか知りませんが……中々のモノですね」

「それ、鷹化が幼い頃の話では?」

「勿論です。七つを越えれば有り得ぬ話」

 そんな明らかにポークビッツな時期を比べられては流石に理不尽であろう。

 実際に恐らく今は普通サイズな筈だし。

「義姉さんの肌は綺麗だよね」

「フッ、二百歳とは思えませんか?」

「そんな心算では言ってないけど、武術修業とかでゴツゴツしたり傷を負ったりしたんじゃないかってね」

「それはあるでしょうね。では貴方自身が確かめてみなさい優斗」

 後ろから抱き締めてくる羅濠教主――翠蓮姉の腕は黄色人種としては白く、傷など無いサラサラとしたきめ細かな肌が首筋に擦れて心地好くなり、屹立は更なる興奮の下に硬く太く長くなる。

「ほう、更に此処まで……」

 初めての身で入るのかも判らないくらいに天を衝くモノ、翠蓮からしても七歳までの鷹化のモノくらいしか識らないからか興味津々に触れた。

 ビクッと動くユートの分身。

「義姉上の手もスベスベなんだな」

「呪力を極めると老化が抑えられますからね」

 聞いた話ではアリスと真逆に【地】の最高位の魔女たるルクレチア・ゾラ、草薙護堂の現地妻と噂される彼女も実は彼の祖父君たる草薙一郎とは若い頃に会っていたらしいし、エリカ・ブランデッリやリリアナ・クラニチャールに剣を授けたとされる聖ラファエロも百を越えて尚も若く美しい姿を維持しているとか。

 確かに翠蓮が言う通りらしい。

「お陰で義姉上の若々しい肌を愉しめる」

「慮外者、この場で始める気ですか? 愉しみたいなら寝所に行きますよ」

「義姉上の手がその気にさせたんだけどな」

 そう言いつつ翠蓮を横抱きにして立つユート、水分は熱波で飛ばすと寝所まで運ぶ。

 とはいえ翠蓮の簡素な寝所は正しく身体を休める為だけに設えた物でしかなく、言う通り処女な彼女らしくもあるが男女の睦み合いに適した閨だとはとても云えなかった。

 DTではあるまいし今更焦るなど無いユートはアイテムストレージから新品ベッドセットをポンと出し、その上に未だ湯気が立ち上り風呂の温もりを宿した翠蓮を座らせる。

「今宵は先達でも姉でも無い一人の女として扱う事を赦します。若しもして欲しい事があれば言いなさい、至上の悦楽を以て私が致しましょう」

 正直に言えば初めての翠蓮にそんな真似が可能だとは思っていないが、齢二百歳を越えながらも少女の如く容姿を持った彼女の小鳥が囀ずる様な
可憐な声で言われると下半身が熱くなった。

 アーシェラも悪くはなかったけどやはり今回は翠蓮こそが大本命であろう。

「それじゃあ、義姉上……」

 そうして今宵の翠蓮を独り占めにしたユートはその肌や唇を確り堪能させて貰い、二百年を越え初めて男を受け容れた義姉の胎内までも愉しんで日本へと戻るのだった。

 尚、最初こそ内部の痛みから強張りが見られていたものの、二度目以降からは慣れからか快楽からかは定かではないがリラックスして受け容れ、どうやら翠蓮本人も充分以上に愉しい思いをしていた様で重畳といった処。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「もう少し余韻を愉しみたかったね」

「はぁ?」

 ヨレヨレなスーツ姿のリーマン忍者の甘粕冬馬には意味が解らない。

 勿論、見た目は若くて美しい翠蓮義姉の余韻に決まっている。

「えっと、この場は私が奢ります故にお話を聞かせて頂ければ嬉しいのですが……」

「ファミレスでねぇ?」

「私の薄給では高級な料亭とかは些か無理です。そういうのは局長……馨さんにでも言って下さい」

「仕方がないな」

 取り敢えず端から端までなんてしてしまったら甘粕の財布が死ぬ為、高めのものを一〇ばかり頼んでからデザートまで戴かせて貰う。

 甘粕冬馬は嬉し涙を流しながら何故か知らないがちびちびと水を口にしていた。

「さて、腹も満足したから……帰るか」

「ちょっとぉぉぉおお!?」

「流石にジョークだよ」

「勘弁して下さい」

 腹を擦りながら眼鏡の位置を直す甘粕冬馬に流石に悪い事をしたかと考える。

「義姉上との話は付いた。日本に羅濠教主が来日する事は無いよ」

「そ、そうですか……」

 胸を撫で下ろす甘粕冬馬ではあるが、それは即ちユートが弼馬温の封印を解いて聖天大斉と闘う事でもあり、更なる腹痛の種になりそうでちょっとビビってもいた。

「取り敢えず、此方の算段が付いたらそっちへと連絡はするから心構えだけはしておけ」

「了解致しました、王よ」

 それで解散となったが、甘粕冬馬は会計をして三〇万円ばかりが飛んで『領収書を下さい』と泣きながら言ったのだと云う。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 マンションに帰るとひかりが飛び付いて来たりするが、それは彼女が居たら毎度の事だったから普通に受け止めてやる。

「御兄様、お帰りなさいませ!」

「ただいま、ひかり」

 流石にまだ小学生だから丸みに欠けて柔らかさも姉に劣るが、可愛らしさや親しみ易さが前面に押し出されていながらあざとさを感じないから、ユートもひかりを可愛がるし甘やかす。

 厳しさは裕理が担当すれば良いのだから。

 ある意味でユート裕理

 鞭担当な裕理に悪いと思うユートだったけど、こうして妹枠なひかりに甘えられるのも悪くはない気分だし、将来性も高いから未来で裕理と共に閨で可愛がるのも楽しみだったりする。

 前世では妹枠は居たけど甘えられるタイプでもなく甘えるベクトルも違ったし、前々世で実妹が自分を男として愛しているとは思いも寄らなかった事実もあり、更にはそれ故に実の妹として甘えるのが恥ずかしいらしく甘えて貰えなかった。

 だからだろうか? 割と明け透けな好意をぶつけられるのも悪くはない。

(本当ならそれは護堂が受けるべきものだったんだろうけど……な)

 別にユートは原典に介入してヒロイン枠な娘を主人公から奪いたいとか思ってはいないのだが、自然の成り行きから此方側に来た場合には躊躇を覚える気も無かったりする。

 例えば原典を識る【魔法先生ネギま!】に於いて真のヒロイン――ネギが本当に好きになった娘は秘められて終わったが、少なくともネギが好きだという少女は3ーAに半数以上が居た筈だけれど、終わってみれば基本的にその半数以上はユートに好意を持っていた。

 勿論、ユートは自分が介入をしなかった場合の未来を視る機会を得た為に近衛刀太なる少年が、エヴァの庇護下で暴れ回りネギ・スプリングフィールド=ヨルダ・バオトと闘った経緯、ネギに従う使徒と化した筋肉や古本にあの二人まで居るというバッドエンドをも識るからには、原典をまるっと進める心算にはならなかった訳だが……

 そもそも明日菜を未来に送る心算も初めっから無かったユートは、【UQ HOLDER!】を識ったからには余計に有り得ないと考えた。

 当然ながらヨルダ・バオトには【ハイスクールD×D】世界に航る前には滅びて貰っている為に、未来世界に近衛刀太が誕生する世界線そのものが喪われてしまったから【UQ HOLDER!】の物語は既にされている。

 そうなると困る人間も幾人か居たりするのを、とあるエヴァが恩を受けた貴族から頼まれたので助けるべく動くが、それだけで後の未来は野となれ山となれでしかない。

 因みにそれらはエヴァと関わりが深いからというのもあったし、女の子も居るから少しはやる気も出ていたりする。

 それにユートは基本的に聖域の教皇となって、二百数十年後のアテナと未来の教皇に全てを託すまで再誕世界を中心に活動するし、丁度良いというのもあるから特に問題などは無かったり。

 それに約一五〇年後――ハルケギニア側に生きるユートが死ぬ頃、【アルマデル奥義書遺伝子写本】を喚ばないといけない。

 現在のユートはアルマとの契約が途切れた状態にあり、それは一五〇年後に今のユートが喚んだからだと理解もしている。



 閑話休題



「それで御兄様、中華の羅刹女様との話し合いはどうなったんですか?」

「概ねは此方の算段通りだ。秋の連休に日光に行ってひかりに関わる全てを終わらせる」

「わぁ! 嬉しいです!」

 胸が腕に当たるけど残念ながらまだ足りないので気持ち良くはならないが、余程の喜びだったのかその小さな全身で嬉しさを強調してきた。

「ま、聖天大斉を殺れば僕は権能が増えるしね。ひかりは役目が無くなって良い事ずくめだよ」

「はい!」

 本当に嬉しそうなひかり。

 本来ならひかりは日光東照宮に封じられている聖天大斉の遊び相手? として【禍祓い師】の力を使う『御役目』を四家――九法塚家の当主となる九法塚幹彦の花嫁に迎えられて行う筈だった。

 ユートが識らない原典の【カンピオーネ!】では言及こそされないが、そもそも御役目は数十年に及ぶ上に一時帰省なんかも出来ない関係から、婚姻を結ぶなら当地で見繕う事になるのは必定であり、九法塚家は【禍祓い】の力が枯れてしまって御役目に支障を来してひかりを呼ぶからには、再び九法塚家に【禍祓い】を輩出するべく当主の九法塚幹彦がひかりを娶るのは自然の流れ。

 一一歳を相手に成人の男が嫁に取るとなれば、世間的にはロリコン呼ばわりされる案件ではあるのだが、こういった世界では謂わば貴族的な嫁取りが未だに行われている。

 事実として清秋院家も王たるユートに対して、次期当主である清秋院恵那を側女として送り出しており、恵那もそれをあっさりと受け容れた感じでユートのマンションに来た。

 因みにだが、清秋院 蘭とは割と話が合ったから最初の目論見たる【白い結婚】は無しにする。

 【白い結婚】とは婚姻こそ結ぶが敢えて子を成さない事を云い、ユートは清秋院家の遣り口的に気に入らなかったからヤるだけヤって子を作らない心算であった。

 媛巫女の力は遺伝するが故に、媛巫女の家系は女系継承も有り得なくない世界である。

 連城家も次期が力を受け継がない娘ながら一応は媛巫女として連城を継ぐらしいし、清秋院家は恵那が、沙耶宮家は東京支局長の沙耶宮 馨が受け継ぐ予定で四家中三家の次期当主が女性だ。

 単純に九法塚家は媛巫女が居らず、彼しか次期当主の務まる者が居なかったのだろう。

「御兄様、今夜は御一緒しても宜しいですか?」

「構わんよ」

 勿論、添い寝までの話。

 ユートの守備範囲はユーキの策略と前世に於ける因縁から非常識な迄に拡がり、下は数えにして一二歳〜上は四十路までと有り得ないレベル。

 つまり現在は一一歳な数えで一二歳のひかりは普通に守備範囲内、流石にそれは早過ぎるとして裕理からせめて後三年は待って欲しいと懇願をされてしまった。

 別に手を出す気は無いのだが……今は未だ。

「ひかり、お手伝いしないならデザートは有りませんよ!」

「は、はーい! もう、お姉ちゃんってば焼き餅焼きだな〜」

「ひかり!」

「はい! 今行きま〜す!」

 慌ててキッチンに向かうひかりの後ろ姿を身ながら呟く。

「地獄耳」

 流石にユートにまで小言は飛ばなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 取り敢えず成果の程を報告しておく。

 別に王たるユートにそんな義務など無かったりするが、報連相は大事だと理解もしているのだからしない理由も無い。

「それで、私達も出陣はするの?」

 燃える様な赤毛――否、紅い髪の毛を伸ばしている少女の神凪綾乃が訊ねてきた。

「姉様、仮にも羅刹の君に対して……」

 そしてオロオロしているのが神凪和麻の弟である神凪 煉、兄をとても良く慕う見た目には少女にすら見える少年だ。

「綾乃様と煉様には未だ御早いのでは?」

「む、実戦にはもう出てるわよ」

「僕は出てません」

 操の指摘に膨れっ面な綾乃と不安そうに申告をする煉、大神家からユートが連れ出した大神 操は一八歳ながら大和撫子然とした美少女祓い師として現在売り出し中。

 神凪家の分家筋でありながら当たりが普通に柔らかく、しかも治療を使えて傷を癒して貰った術師も少なくはないから大人気。

 最近では炎が微妙に耀きが変化して橙色を湛えている事から【橙炎とうえん】の操とか呼ばれている。

 術師の氣の色に染め上がる現象には取り分けて神の一字を加えて呼ぶ、例えば蒼い炎を振るっている【蒼炎】の厳馬や紫の炎を振るった【紫炎】の重吾ていった具合に。

 彼らは最高位の【黄金きん】すら越える【神炎】使いとされる。

 ユートの【闇炎】も禍々しくはあれ間違いなく【神炎】であり、操も遂には【橙炎】という名の【神炎】に目覚めたのだ。

 普通なら分家の人間が【神炎】を呼び起こすのは不可能、何故なら宗家から血筋が離れれば離れる程に力は減衰されるから、精霊術師の力は血筋に宿るものなのだとされている。

 其処はユートがどうにかした。

 ユートの精液には術式的なナニかが宿っており異性の潜在力を覚醒させる。

 それが故に、ユートに抱かれた女性は力を増して何らかの力に覚醒する場合もあった。

 即ち【輝威トゥインクル】だ。

 まぁ、【輝威】に関しては覚醒する人間が少ないから扨置くとして、ユートの精液を胎内に受け容れた操は修業により覚醒の断片は視られていたからかあっさりと【橙炎】に覚醒した。

 未だに神炎に覚醒してない綾乃では操に敵わなくなっている程。

 因みに、その経緯を聞いた綾乃は真っ赤な顔で湯気を頭から出しながら『自分はどうするべきか』とか真剣に悩んでいた。

 分家に宗家が炎術に於いて後れを取ったのだから相当な話、操はころころと微笑みながら力任せで馬力傾倒な綾乃を柔能く剛を制すと謂わんばかりに往なしながら闘い、合鬼法の転・血・刃にて三相一体な秘技で打ち倒してしまう。

 その後はユートとの仲の好さをアピールするのだから徹底的だった。

 何しろ撓垂れ掛かれて小さな胸を押し付けながら唇を重ねるのだから。

『綾乃様みたいなお子ちゃまにはこんな大人の付き合い方は出来ませんよね?』

 言外にそう言って挑発すらしている。

 兄を亡くした原典では病み抜いて闇堕ちをした操だったが、平素なら見た目通り着物を着ているおかっぱ頭な大和撫子なのだ。

「処で優斗様、この度の旅行には御連れ頂けるのでしょうか?」

「ん? 操なら色々と任せられるからな。相手が聖天大斉なら神獣やら、下手すると従属神として河伯金身羅漢捲簾大将や浄壇使者天蓬元帥だとかを召喚してもおかしくないしね」

「何よ、その近親相姦とか天然ガスって?」

 綾乃の科白に一同が凍り付く。

 そして煉が泣きながらユートに土下座をしつつ謝り倒してきた。

「御免なさい御免なさい御免なさい、綾乃姉様に悪気は無いんです! 茶化したとかじゃなくって純粋に識らなかっただけなんです! 御許し下さい羅刹の君!」

「え、ええっ!?」

 そんな煉に綾乃が大困惑している。

「判っているから座れ。綾乃が無知なのは今更だろうに」

「ちょっ!」

 神凪綾乃は黙っていれば美少女中学生だけど、口を開けば残念美少女に成り下がっていた。

「こんな、西遊記も識らん術師モドキを連れて行っても僕が恥を掻くな」

「さ、西遊記くらい識ってるわよ!」

金身羅漢こんしんらかんを選りに選って近親相姦と間違える女の子が何を戯れ言をほざいている?」

「こ、こんしんらかん?」

「沙悟浄が釈迦如来から得た名前だな」

「………………し、識ってたし?」

 さめざめと泣く煉、ころころと笑う操、溜息を吐く翠鈴、困った表情の祐理とアンナ、苦笑いをしているひかり、爆笑をする恵那と様々な反応により綾乃は余計に真っ赤だ。

「本当に綾乃は留守番させようかな?」

「覚える! だから留守番は嫌!」

 今の言い方から下手したら自分独りで留守番をさせられそうで、慌てて振り向くと【西遊記】について勉強すると宣言した。

 まぁ、勉強自体は出来るのだからその気になれば出発までに覚えるのだろう。

 ユートは操と寝所に入るとイチャイチャして、すっかりえちぃ事に慣れた彼女との夜を愉しんでから身体を休めると、いつもの通りに通学組たる女の子達と高校へ向かって歩いていく。

 既に高校を卒業した操と中国からユートを介して来た翠鈴、正規ルートで来日したアンナなどはマンションで留守番と自主練に励む。

 学校からして違う綾乃と煉は転移システムにゆり近場の拠点に移動して登校。

 祐理と恵那を両手に侍らせた形で合流してきた静香を伴っての城楠学院に登校、途中で小学校に向かうひかりとは当然ながら分かれて登校をしている。

『うう、寂しいです。御兄様、いっその事ですから御兄様の権力で私立城楠学院を小中校で一貫の学院に出来ませんか?』

『出来なくは無いが……来年には小学校を卒業して城楠学院中等部に入学するひかり一人の為に? 本気でやって欲しいのなら構いはしないんだが、きっと凄く居た堪れない気分になるぞ?』

『う゛……』

 冗談混じりに言ったらマジに返されて挙げ句、余りにも至極真っ当な答えに閉口したものだった。

 城楠学院とは中等部と高等部が同じ敷地内にて存在しており、倶楽部活動の方も高等部と中等部で一括管理をされているものの初等部は存在していないからひかりは別れて行動をする。

「よう、また万里谷と清秋院を両手に華で登校をしているんだな」

「草薙護堂、お前はブーメランって知ってるか? くの字に曲がったあれだけど」

「知っているがどうした?」

「放った言葉が本人に返る様をして言葉のブーメランと云うんだが右側にエリカ・ブランデッリ、左側にリリアナ・クラニチャールを侍らせているお前にだけは言われたくない」

「うぐぅっ! 別に俺は二人を侍らせている心算は……」

「有ろうが無かろうが二人を両腕に組んでいるんだ、そもそもにしてその時点でお前さんは同じ穴の貉だろうに」

 城楠学院では既に二人共が和風美少女を侍らせる『大奥野郎』と、異国美少女を侍らせてる『ハーレム野郎』なんて呼ばれていた。

 特に彼女を持たない独身貴族からは敵視すらもされており、ユートは自覚を持って更にイチャイチャして見せてやるくらいだったが、草薙護堂は認めたくないらしく色々と見苦しい言い訳を重ねてはヘイトを稼ぐ。

 因みに中等部な静香はユートと護堂の狭間にて歩き、分かれ道からは『先輩方、私は此処で失礼します』と頭を下げて校舎へ向かう。

 代わりに昼食時は全員で屋上に集まり、静香が最優先で隣に陣取って『あーん』をしていた。

 勿論、祐理と恵那も自ら作った弁当をユートに食べさせるのだが、空いているのは静香が居ない側だけだからどうしても静香よりは遅れる。

 そして反町達はそれを態々見にきてはギリギリと悔し涙を流していた。

 但し、今日はエリカ・ブランデッリが結界を張っていて屋上から裏の関係者以外を断絶している。

「休みに日光へ行くんだろ?」

「オッサン経由か?」

「ああ」

「で? 事実だとしたら?」

「俺達も行く」

 はっきり言って足手纏いにしかならない。

 ユートなら聖天大斉が従属神を召喚しようとも被害を成るべく出さず終わらせられるだろうが、草薙護堂が加わっただけで被害総額が三百%増しになりそうで怖かった。

「要らないから大人しくしてろ」

「な、何でだよ? 神様と闘うんだろ! だったら同じカンピオーネなら邪魔なならない筈だ! そもそも、万里谷や清秋院は行くんだろ!」

「祐理は霊視が出来るサポート要員、恵那は直に闘う力を――神刀の天叢雲劍を扱える」

 神刀はユートが斃して権能に換えてしまっているけど、その気になれば恵那に貸し出せるのだから扱えるだけでも役立つし、何なら別の武器を与えても充分以上の戦闘力を発揮出来る。

 無分別に連携も考えず暴れるだけの草薙護堂とこの二人、どちらを連れて行きたいかと問われたら刹那の刻を以て二人を選ぶだろう。

「まぁ、付属品が優秀だから行きたいなら勝手に行けば良いけど……くれぐれも護堂本人が邪魔をしないでくれよ」

「なっ!?」

 付属品――エリカ・ブランデッリとリリアナ・クラニチャールは聖ラファエロから与えられている魔剣、オレ・ディ・レオーネとイル・マエストロだけでも優秀ではあるが、更にはまつろわぬ神や神獣にもダメージを与える【聖なる殲滅の特権】たる『ジェリコの殲滅』と『ミデアンの殲滅』を【ダヴィデによる勲の書】から修得している。

 周りの被害さえ気にしなければボス戦でのみ輝く草薙護堂と違い二人は普通に闘えるのだから、寧ろ主の草薙護堂こそがエリカ・ブランデッリとリリアナ・クラニチャールの付属品だった。

(二人は草薙護堂に付いてくるからそれを思えば我慢も出来る……か)

 こうなれば二人を囲えなかったのが痛恨時に思えてならないユート。

(エリカ・ブランデッリは難しいが、リリアナ・クラニチャールはカレン・ヤンクロフスキを持ち出せば寝取れるかな?)

 今はイタリアに所用で帰省中なカレン・ヤンクロフスキ、彼女は【青銅黒十字】の魔術師見習いにしてリリアナ・クラニチャールの侍女。

 まだ絆の浅い草薙護堂より長年を侍女としての働きをしていたカレン・ヤンクロフスキを優先、それを元にして堕とせる可能性も高いのではなかろうか?

 それに、リリアナ・クラニチャールの祖父はといえばヴォバン侯爵に捧げようとしていた訳で、サーシャ・デヤンスタール・ヴォバン侯爵を斃して権能を譲り受けたユートにならば跪く可能性もあるかも知れない。

 チラリとリリアナ・クラニチャールを見遣ると、其処には不慣れでありながら一生懸命に草薙護堂へと挺身する姿が見られ、あれを自分にする姿を考えると少しながら食指も動かされた。

 ポニーテールだからだろうか?

 取り敢えず、草薙護堂もユートとは別口で日光へと向かう事になったらしい。

 当然の様にエリカ・ブランデッリてリリアナ・クラニチャールを伴って……だ。

 それでも侍らせていないと宣う辺り草薙護堂の限界というのを示していたと云う。


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あきゅろす。
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