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インフィニット・ストラトス【魔を滅する転生斑】っぽい噺――単に英国代表候補生をフルボッコにする噺
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 テンプレ通りたった二人の男性IS装者となって、IS学園へと通う事となったユートは、自己紹介の後にクラス代表を決める話し合いを、ポケーっとしながらのんびり聴いていた。

 担任教師の織斑千冬女史が曰く、自薦も他薦も問わないとの事ではあったが、原典(オリジナル)のストーリーを識るユートは大方の流れが読めている。

 自薦は特に出ず、他薦で織斑一夏が選出をされるのだろうし、放っておいたら同じく男性操縦者という事でユートも選出される筈。

 そして、そうなれば出しゃばってくるのが【チョロいさん】たるセシリア・オルコットだろう。

 果たして、他薦で圧倒的な支持を受ける一夏。

 序でに、予想通りユートも他薦でその名前が挙がっていた。

 そして、セシリア・オルコットが当然の流れとして絡んでくる。

「待って下さい! 納得がいきませんわ!」

 机を両手で叩くと立ち上がって叫ぶ。

 セシリアが曰く、男如きがクラス代表など恥晒しも良い処。そんな屈辱を一年も味わうなど有り得ない。

 実力的にクラス代表には自分こそが相応しいのに、物珍しいからと極東の島国の猿を代表にするなどと、困ってしまうとか。

「だいたい、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体が私にとって耐え難い苦痛で……」

 そんなセシリアの科白にたいして、一夏はカチンときたのだろう。

「英国だって大した御国自慢も無いだろ。ああ、有ったな。世界一不味い料理で何年も覇者だったか?」

 ついつい言ってしまう。

「な、な、なっ! あっ、貴方ねぇっ! 私の祖国を侮辱しますの!?」
 
 当然ながら怒り心頭で、セシリアは一夏へと怒鳴り付けた。

「二人共いい加減にしたらどうだ!」

 余りにも見苦しい二人の言い争いに、ユートが立ち上がって口を開く。

「な、何だよ!? 緒方は日本人の癖にアイツの肩を持つのか?」

「何ですの? タカが男の癖に私に意見だなんて!」

 一夏もセシリアもこんな時には口が揃っていた。

「先ずは一夏!」

「う? な、何だ?」
 
 ユートの剣幕に怯みながら訊ねる。
 
「英国を莫迦にするとは、随分と良い度胸だな?」
 
「――は?」

 お忘れかも知れないが、緒方優斗が再転生をした国は英国、ウェールズの地でスプリングフィールドとして暮らしてきた。
 
 つまり、ユートは日本人であり英国人でもある。
 
 一夏はセシリアに対して言ったのかも知れないが、ユートにとっては自分の国を莫迦にされたのと同義。

 そんな実情を知らなかった一夏からすれば、ユートの怒りは訳が解らないのだろう、困惑した表情で首を傾げていた。

「一夏、お前のそれは英国の事をよく知った上での、自分自身の体験とか踏まえてな口上なんだろうな?」
 
「うえ? い、いや……」

 所詮は売り言葉に買い言葉で言ったに過ぎないし、英国の事なぞ話にしか識りはしない。

「行った事は?」

「な、無い」

「それで知った風な口を叩いたのか?」

「うぐっ!」

 痛い所を突かれたのか、一夏は胸を押さえて呻く。

「僕は英国に住んでいた。謂わば“第三”の故国だ。莫迦にされて気分爽快とはいかないな」

「え゛? わりぃ……」

 そもそもが、個人間での言い争いに国を莫迦にする事は間違いだろう。

「セシリア・オルコット、お前もだ! 文化的後進国だとか、君は白色人種に有り勝ちで日本人を黄色い猿と蔑む屑の一人か?」

「うっ!?」

「日本人だからとか、男だからとか……まったく下らない事を」

 まあ、過去に何かしらがあったのは想像が付く。

 だからといって、全部を一緒くたにして蔑んでも良い理由にはならない。

 元より、人種差別や種族差別を好まないユートは、セシリアの言い分を許容など出来る筈もなく。

 ユートが敵を斃す場合、人種や種族は関係無い。

 飽く迄もそれ個人として闘い斃し、殺すのだ。

 ハルケギニア時代でも、仮にオーク鬼やトロル鬼を殺すにせよ、その種族そのものを蔑む事などは無く、向かってくる敵として屠るのみであった。

 何も吸血鬼(バンパイア)や翼人(フェザリアン)とかエルフなどとの仲を取り持っていたのは、彼の種族達の女性が美しかったからだけではない。

 まあ勿論、それも無きにしも非ずではあるのだが。

 故にこそ、今までも種族差別をしてきた者への怒りを露わにしてきた。

 なればこそ、セシリアの言葉をユートは決して認めはしないのだ。

「セシリア・オルコット、お前の言う文化とは何だ? 文化とはその国で世界で育まれたもの。其処に優劣など有りはしない!」

「うっ!」

 怯むセシリア。

「なれば、文化はその国の人々の精神を顕す鏡だとも云える。先進国だろうと、貧しい心根の人間が他国の文化を蔑むなど、言語道断だろう! 況してや、技術的には日本人の天災に後れを取っておきながら、他者を猿呼ばわりか? ならばそんな猿にも劣る技術力、いったい何を以て誇る?」

 技術的な後れ──篠之乃 束という天災的な頭脳の持ち主により造り出されたISというパワードスーツだが、これらの技術を供与されねば同じモノを造れなかった英国が、果たして誇れるモノとは何か?

「別に他者を蔑むなとまでは言うまい。セシリア・オルコット、僕もお前という個人を大いに蔑んでいる。否、そんな価値すら無い。それに日本で暮らしている事がそんなに苦痛ならば、遠慮は要らないから出ていけば良い。ああ、心配などしなくても合法的に出ていける様に、充分取り計らってやるさ。英国代表候補生による滞在国への侮辱行為なんて、国の誇りと名誉を預かる者としては余りにも迂闊な言動。国家代表候補の資格なぞ吹っ飛ぶさ」

 そこまで言われてはたと気付き、血の気が一気に引いたのか青褪めた。

 元来、国の威信だけではなく誇りや名誉も背負い、送り出された代表候補生。

 当たり前だが、一個人として言動をするなら充分な注意が必要だろう。

 昨今、ちょっとした言動で政治屋達がバッシングを喰らう中、セシリア・オルコットも同じモノを背負っているのだから。

「織斑先生、他薦者が二、自薦者が一人な訳だけど、クラス代表はどうやって決めますか?」

「む? 模擬戦をしてその勝敗で決めるが?」

「なら丁度良い。後顧の憂い無く去れる様に、御自慢のISを打ち砕いてやる」

 ユートはセシリアを見遣りながらそう宣言をした。

 その後、多少の訓練時間を取り織斑一夏とセシリア・オルコットによる模擬戦が行われ、原典の通り白式で戦った一夏は単一仕様能力(ワン・オフ・アビリティ)の【零落白夜】を発動するものの、エネルギー切れに陥って敗北したのだ。

 結果、ユートとセシリアが試合を行う事になる。

 一夏との対戦で一夏を見直したセシリアだったが、それがユートにまで波及をするなどは無い。

 だがそれは、セシリア・オルコットは選択を……

 間違った。

 闘技場(アリーナ)に於いて対峙するユート、そして金髪美少女なセシリア・オルコット。

「何故、貴方はISを装着してませんの!?」

 はっきり云えばユートは生身だった。

「必要か? その玩具」

「なっ!? 玩具? 貴方はISを何だと!」

「兵器だな。人を軽く殺せる兵器だよソイツは」

「っ!?」

 原典では嫉妬混じりに、一夏へとISの部分展開をして攻撃するヒロイン達、だけどギャグ補正の利かない現実(リアル)だったら、一夏の命は幾つ有ったとしても足りない。

 マリオの無限コンティニュが欲しいくらいに。

「けど僕からすれば単なる玩具に過ぎない」

「くっ!?」

「始めようか、死合いを」

 ユートはパチンとこれ見よがしに扇を開いて閉じ、それを武器にして駆けた。

「緒方逸真流狼摩派鉄扇術……然らば一手舞いを馳走しようぞ!」

《Penetrate!》

 バチン!

「キャァァッ!?」

 ISを装着している為、本来なら絶対防御が働く筈だったが、ユートの鉄扇はシールドを越えてセシリアにダメージを与える。

「そ、そんな!?」

 生身だから自分も飛ばなかったセシリアは、すぐに空への待避を選んでいた。

「いったい何が起きたのですか? シールドエネルギーは減っていません……」

 つまり絶対防御を普通に抜いてきたという事。

「ですが流石に飛んでいれば手出しは出来ない筈」

「まあ、確かにね」

「……え?」

 遥か下に居るユートが、何故か普通に応えた。

「丸聞こえだから」

「そ、そんなまさか!?」

 別にマイクを使っていた訳でも、通信をしていた訳でも無いと云うのに会話が成立している。

 セシリアの場合はISの機能だからおかしくない、然しユートはそもそもISを纏っていないのだ。

「しっかし、生身を相手に空へ逃げる代表候補生とか……プッ」

 途端にセシリアが真っ赤になった。

 周囲からもクスクスと、笑いが漏れているのをISのセンサーが捉えている。

 余りの屈辱。

「しかも、ハンデを付けないといけたいだとか何とかほざいていた、男を相手に逃げ腰な戦いとは……ね」

「この!」

 怒りの余りブルー・ティアーズの攻撃を、スターライトmkIIIという巨大なるレーザー兵器を放つ。

 生身の人間を相手に。

「しまっ!」

 幾ら何でもやり過ぎで、殺してしまったと青褪めるセシリア。

《Reflect!》

《Penetrate!》

「そんなっ!?」

 レーザーが跳ね返ってきたのを見て、セシリアは驚きながらも防御体勢に。

 避ける暇は無い。

 絶対防御があるからこそ可能な選択だろう。

「キャァァァァァッ!?」

 【透過】が掛かっていなければの話だけど。

 ユートは前回の世界――【闘神都市】にて転生者の特典(ギフト)を奪う機会があった……というよりは、ユーキが接触した転生者から奪ってプレゼントをしてくれたのがユートも行った【ハイスクールD×D】の世界の神器で、【白龍皇の光翼】であった訳だ。

 コイツの能力は【半減】【吸収】【反射】【減少】というもので、先程の攻撃を跳ね返したのが【反射】によるもの。

 因みに【圧縮】なんて事も可能である。

 【反射】は二天龍の和解により、アルビオンが生前に有していながら神器へと封じられた際、聖書の神に封じられていた能力だが、既に和解は成っているから問題無く扱える。

 Penetrate……貫通攻撃は【赤龍帝の籠手】に宿るア・ドライグ・ゴッホの持つ生前の能力――【透過】によるもので、アルビオンの【反射】と同じく封印がされていた。

 白龍皇の力を持つユートが何故、赤龍帝の力までも持ち合わせているのか?

 理由は簡単、【赤龍帝の籠手】を転生特典にしてた狼摩優世を斃し奪った為。

 但し、宿している扱いなのは緒方優雅の方。

 実際に、ユートが優雅と分裂をした場合は【白龍皇の光翼】がユートの方に、【赤龍帝の籠手】が優雅の方に振り分けられる。

 とはいえ同じ魂に別人格という状態、分裂してさえいなければユートも普通に【赤龍帝の籠手】を使う事が可能だった。

 元々は別の魂で双子として誕生する筈だった二人、然し優雅は死産であったが故に肉体は死亡、魂は近場のユートに吸収されて一つになってしまった。

 ユートの魂の性質の為、必然だったのだろう。

 兎も角、ユートはISの部分展開みたいな形で神器を能力のみ展開、こうして使用をしているのである。

 カンピオーネとしての、戦闘勘が何と無く解るとかサルバトーレ・ドニみたいで嫌だが、便利なのは違いないのが痛し痒しか。

「さて、いつまでも見下されるのは性に合わないな」

 ユートが跳び上がる。

 その瞬間に観客席から起きるどよめき。

 まるで飛翔するかの如くジャンプ、それは虚空瞬動と呼ばれる技術だ。

 普通に翔べるユートではあるが、IS以外ではある程度が通常とは変わらない世界だから翔ばない。

 既に異常は幾つも見せているが、最終的にはISの仕業に見せ掛けても良いから自重を余りしなかった。

「ヒッ! 何なんですの? 貴方はいったい!?」

「男だが? 女に比べたらか弱いか弱い男……それだけの存在だろう?」

 そもそもからして前提から間違えている。

 女が男より強くなった訳では決してない。

 中には事実上、男よりも強い織斑千冬みたいな女傑も居るけど、大多数の女は生身で男に勝てる肉体を持っていないのだから。

 だからこそ、セシリアもISを無力化されてしまっては最早、何も出来なくなってしまうのだ。

 一応、他にも第三世代の代名詞たる【BT兵器】――ブルー・ティアーズも有るには有るが、レーザーの反射をさせられたからにはあれも反射されると理解したらしく、使ってくる気配がまるっきり無い。

 近接武器も一応だが存在するものの、碌に使ってないから出すには時間が掛かり過ぎる。

 つまり、詰みだった。

「一気に終わらせる」

 ユートはセシリアを更に上空へ放り投げる。

「あああっ!?」

 ヘッドバットヘッドバットヘッドバット!

 頭突きをしながら上を目指したユートは、セシリアを所謂まんぐり返しにし、両手を自分の両手で極めながら両脚を自分の足首にて極め、頭を地上に激突させるべく固めてしまう。

「よ、よせ!」

 一夏が叫ぶが……

「喰らえ、マッスルリベンジャー!」

 セシリアは敢えなく技を喰らってしまった。

 ドガァァァンッ!

 けたたましい轟音と共に鳴り響くブザー。

 ブルー・ティアーズの残りシールドエネルギーが、残量0になってセシリアの敗北が決定したのだ。

「あ、ばけ……もの……」

 セシリアはそう言い残して気絶して、ユートの勝利が確定するのだった。

 尚、クラス代表はユートの指名で一夏に決まる。


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