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けいおん!〜ネコミミ部長奮闘記〜
♯10
 翌日、私は1人朝の部室へ向かった。
「お前はいいなぁ、のん気で」
 カメのとんちゃん(命名唯先輩)にえさをやっていると、とんちゃんは首を傾げたような動きをした。人間の言葉が分かるのかどうかは知らないけど、反応してくれるのは嬉しい。
「さて、自主練しますかね」
 カメに愚痴を言っても仕方ないので、私はおもむろにギターを取り出し、鞄から『ふわふわ時間』の楽譜を取り出す。
 もう体が覚えちゃってるほど弾き慣れた曲を弾き慣れたギターで奏でる。だけど、そのメロディーはどこか寂しくも聞こえる。家で練習しているときにはそんなに感じないのに、1人広い空間で思い出のつまった曲を弾くのは少し辛いものがあった。
「はぁー」
 サビ直前で自然と手が止まってしまった。ライブの時はあんなに盛り上がるのに、聞いてくれる人がいないと何か虚しい。
 そんなことを考えていると、水槽の方からピチャピチャと音が聞こえる。水槽を覗くと、とんちゃんが飛び跳ねていた。
「お前がいたんだよね、ごめんごめん」
 とんちゃんが「聞いてるぞ!」と言っているみたいで私は少し元気が出た。
「ああ神様お願い2人だけの……」
 唯先輩みたいに上手くは歌えないけど、私はとんちゃんの為にふわふわ時間を歌った。

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