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オレはこの目で確かに見ているのに、この人が今ここに居る事が信じきれずにいる


他に誰がこようと、この人だけはこんな所に来るはずがない、とオレにとってはそれほどの対極に居るような存在の人だったのに



なぜ、あなた、君が、というか



「・・カッパ派じゃねーよな」


「カッパ派・・・?」



やはり知らない、当たり前だ。ではなぜこんな所に迷いこんでしまったのだ

心中が知りたい。



「あの、一体今日はどういった・・」


「滋賀良樹!!!」


無言で顔を見つめながら、何かを考えていた坂本が、オレの言葉を遮りながら、思い出したように良樹の名を叫んだ





【どこかで聞いた事ある話】





オレの憧れの後輩、滋賀良樹は、いきなり叫んだ坂本を怯え混じりの目で睨んだ。

中学の頃から、その強さと寡黙さで他中でも有名だった良樹の事を、坂本が知ってても不思議ではないが、ジャンルの違い過ぎる二人に何か繋がりがあるようには思えなかった。


坂本の目の付け所はおかしいから、一般的な目での、最強一匹狼「滋賀良樹」
に反応してるとも思えない
今のこいつのリアクションは、一体何だというのだ。



「坂本、良樹の事知ってんの?」


「ちょっとね、ねえお前オレの事分かる?」



なにやらニヤニヤした坂本に、オレが尋ねてみれば、一瞬目をキラリとさせて横目を流し頷いた。

そして自分を指指し、今度は良樹に向かって尋ねる坂本。


良樹はオレの時と同じように、思い出しせないというように、困った顔をして考え始めたが、次の坂本の言葉で、オレと良樹の顔色が変わった。



「オレ昔さー、一時期お前の事尾行してたんだわ」



一瞬その意味がすんなり頭に入って来ず硬直したが、すぐに理解して驚愕の目を坂本に向けた


言葉の意味は理解したけど、その行為の意味はサッパリ理解出来ない


愉快そうに笑いながら話す坂本を見ながら、どうしてもパッカリ開いた口が塞げずにいる



「良樹さー、昔園川公園で、蜂の巣蹴ってたろ」


「な、なんでそれ・・」


「で次の日殺虫スプレー置いてあったろ、あれオレだからーアハハ!!」



その話、オレにも聞き覚えがあるんだけど!


忘れはしない、赤高で良樹と再会したときに、それをオレだと勘違いされたんだ!

何だそんな有り得ない話あるか!と思ってたのに


お前か!お前だったのか!

オレはあの時坂本と間違えられてたっつーのか!
こんな繋がりあっていいのか!?




「あ、あんたが、あの時の・・あのせつはお世話になりました」



良樹の対応もあの時と同じだ!!
なんで良樹はオレ以外の事はちゃんと覚えてるんだ。
しかもそれが坂本かよ、オレの方が良樹と同じ中学なのに(唯一の武器)


オレはとんでもない話の流れに、ただ呆然と二人のやり取りを眺める。


ちなみに坂本は一体なにゆえ、良樹を尾行していたのだろうか。

一番素朴な疑問が、オレの頭の中に残るだけだった。


「あー・・でさ、良樹は一体どうして、ここに?」


「相談に乗ってもらえるって、聞いた」



オレの質問に、良樹は少し気まずそうに目を反らしながら呟く。


良樹が相談?無茶苦茶気になるが、一体なぜオレと坂本に。

ああ、もうなぜって言ってたらキリがなさすぎる





「おい、カッパ派じゃねー奴の相談は受け付けてねーよ、好きでやってると思ってんのか」


「さっきから言ってる、カッパ派って何だ?」


「ただただ坂本にお祈りするTシャツの会だよ」


「・・・??」




ケチな坂本は、利益の無い、良樹の相談を断るが、それでも良樹は立ち上がらず動かなかった。


眉間に皺を寄せ、何か訴える表情でオレ達を見る。


今まで良樹のこんな表情をオレは見た事がない、ただならない物を感じた。




「頼む・・相談する相手がいねえ」



切羽詰まった顔、綺麗な角度で頭を下げる良樹。


思いもよらない光景に、オレは言葉が出なくなってしまった。


あの、クールな良樹がここまでする悩みとは一体どんな事なんだ?


一方坂本の方はというと、特に表情は変えず、しばらく良樹のつむじを眺めながら何かを考えている。


この男、人がこんなに真剣に頼んでるなら、ちょっとくらい無利益でもいいじゃないの




「わかった、いーよ」



「本当か?」





坂本の返事に、頭を上げて、澄んだ瞳を輝かせる良樹。


まるで罠から助けて貰った鶴のような眼差しで坂本を見る良樹だが、オレは今の無言の数秒に坂本が何かを企んだ事を完全に見抜いた。


こいつ、一体良樹に何を吹っ掛けるつもりなのか




「でもその前にオレから質問があるんだけど、良樹、赤高の奴らに今一番足りてないもんって何だと思う?」


「足りてないもの・・?」



いきなりの脈絡のない坂本の質問に、目一杯のハテナマークを浮かべつつも一生懸命考える良樹。


隣で聞いているオレも、一体坂本が何を言いたがってるのか全く分からず、良樹と共に真剣に考えてみた



「えーと、やっぱ頭脳か?全員に共通する事と言えば・・」


「ケン、大正解。じゃあ、赤高の頭脳レベルを上げる為には、今何が一番必要だ良樹」



大正解を貰えてちょっとオレが嬉しがってる隙に、坂本は良樹に更なる質問をぶつけた


オレの発言をヒントにして頭を振り絞った良樹は、ハッとした顔で坂本に答える


「頭脳が足りないなら・・・やっぱドリルか!?」


「違う!糖だ!」



ええ!?ドリルもドリルだけど、お前が今まで勿体ぶってた答えが糖かよ!?

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