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50いい事
カダンの入り口をくぐり抜ける一歩前、オレの肩を掴み無言で顔を向ける坂本


なんだか、目が

やたらとキラキラしてる坂本


なんだこの目は。危ない香りがするんだけど。ケン恐怖。



「いい事考えた」



もう何も考えないで下さい、坂本さん






【いい事】




まだ7時なのに、高柳健、すでに胃が痛し


カダンの店内は、さすがの土曜なだけあって同い年くらいのガキ共がわいわいがやがやして、とってもフィーバーだ。



そんな場所で、手島君を見つけるのは中々大変なんじゃないかって?

いや、すぐ見つかりました、なぜなら店内で女の子に胸倉を掴まれている男は彼ただ一人だからです






「テメー!裕介!!男がお前しか来てないってどういう事なんだよ!!こっちは髪巻いて来てんのに、ああ!?」




「来るって!来るって!来る・・くる・苦しいです・・!」




て、手島が締められてる!!


目の前の光景を見てオレの身は完全に後退りをしていたが、天に召されそうな手島を一刻も早く助けるべく勇気を出して声を掛けた




「てっ、手島くーん・・」


「来た!来た!来ました!」




なんだこの合コンは。

走れメロスか。なんて荷が重いんだろう


女性達の機嫌は悪いし、手島の顔色は悪いし、坂本の思考は読めないし



あ、坂本、坂本はどこいったんだ。


並んで入り口から入ってきて横に居たはずの坂本が居なくなっている事にオレは気付き、慌てて店内を見回し探す。


ああもうヒヤヒヤするっつーの!早く終わらないかなー


「坂本・・・ってあい!?」





手島のいるテーブルから数メートル離れた場所に居たはずの坂本が、なぜか既にテーブルの前に移動して女性メンバーをガン見している



何やってんだ!?あいつ!!



しかも座って話し掛けるならまだしも、立ったまま真顔で物凄い観察している。クスリとも笑わず。



何がしたいんだあいつはもう!!何気に失礼だろ!




「坂本!勝手に移動してんじゃねーよ!あんたは本当移動が早いんだからもうー!!!」



「お前はここ」




坂本の理解不能な行動を止めるべく近寄れば、オレは逆に坂本に肩を捕まれ、一番左側の席に座らされた。

オレを座らせた後、何食わぬ顔で自分も、左側から二番目のオレの横の席にストンと腰を落とす坂本。



奴の思考は完了した様子で、唖然と坂本を見つめる女の子達にいつもの悪を企んでるような笑みで返す




「どーも、どーもオレが坂本明男です」



さっき手島にキレていた子も、他の女の子達もみんな坂本一点に視線を集中させ、誰一人違わず同じ台詞を呟いた




「知ってます・・・」




なんだか合コンの空気としては異様だが、静かに盛り上がっています





オレらがそんな空気の中を過ごしているその頃、黒やんはバイトでお疲れなのに嫌々カダンへ向かっていた


そんな時に限って、黒やんは大人気で数々の着信に足止めされながら




「あ、兄ーちゃん、ちょっと聞きたい事あんだけどさー」



一人目、弟民也



「何、あ、まだオレ仙山行ってねーよ。つーかよく考えたら仙山行くの恥ずかしいんだけど」



「それはまだいいとしてー、男って何歳で結婚出来んだっけ?」



「・・・18だけど」



「あ、マジで!ふーんそっかそっかサンキュー」



「ちょっと待てや!!テメー18になったら結婚するとか言いだすなよ!!オレはテメーが離婚した後の慰謝料まで払いきれねーぞ!!」



「なんで離婚するとか決めつけんだよ〜、なんか今ちょっと本気な人妻が離婚して次はたあちゃんととか言ってくっから」



「死ね!!!」




いつも通りブチ切れて強制的に通話を終了する黒やん。


ご機嫌はさらに斜めになっていってます、手島の運命やいかに。


その後一時も間を開けず、黒やんの携帯にはまた無機質な着信音が鳴り響く




「黒ちゃん、今何やってんの?」




二人目、横須賀誠悟。




「あ、せーご。今なー、なんか赤高の友達に呼び出されてさまよってる。」



「マジでー、黒ちゃん今からうちこねーかなーとか思ってたのにー、どこ行ってんの?」



「なんかカダンとかいう所。オレもよくわかんねーけどなんかえらい必死に頼まれてさー、なんか揉め事かなー」



「マジで・・オレも行こうかな。」




「えーでもなんか変な事だったら巻き混まれんだろー。そーなったらお前に悪いし」




「全然全然大丈夫!!今暇だし、多分そこオレんちから近いし!もし遅くなったら黒ちゃんオレん所泊まってけばいーし(下心)」




「マジでー?なんか変な事教えて悪いねー、なんかあったらダッシュで逃げろな(真心)」





自覚無しに黒やんはまた一つのややこしさを増やし、通話を終了してしまった。


手島君今日は本当にバッドデイですね。





そして三人目は電話ではなかった。
カダンをもう百メートルに控えた一本道で、横を通り過ぎようとしていたタクシーから突然飛び降りてきた人物(もちろん車動いてます)




「黒やーん!!!!!」




「うわっっ!!!」




ガードレールに頭を激しくぶつけたのに何事もなかったかのように肩を掴んでくるよく知る馬鹿、はい、もちろん小松蘭太朗君です




「黒やん!何やってんの?」



「こっちの台詞だっつーの!!!馬鹿かテメーは!!!」




らんを乗せていたタクシーの運転手さんも突然の客の行動をありえないような物を見る目付きで震えながら見ている。


らん、せめてさっさと料金払って去らせてやれよ




「お前!!マジで死ぬぞ!馬鹿野郎!!!」



「え?オレ?全然大丈夫だって〜、ほら一回赤高でも非常ベルに突っ込んだし〜」



「いい加減普通の人間になれよ!!馬鹿!」




らんはこんなキテレツな行動をしつつも、黒やんのツナギと結んだままの髪を見て、合コンと分かってカダンに向かっているわけじゃない事を本能的に察知した。


「黒やん今からどこ行くの?」



「なんか手島から相談って言われて、この先のカダンって所に行かなきゃいけない」



「ねー今からうち行っちゃわない?」



「は?だから手島の相談・・」



「いーじゃん、いーじゃん月曜に学校で聞けば大丈夫だって!てしマックスだよ!そんな大事件起こるわけないじゃ〜ん!」



「えー、でもさっきせーごから電話掛かってきて、あいつもわざわざ来てくれるっつーからオレが行かないわけには・・」




「はい、やっぱカダン行きまーす!!オレも行きまーす!黒やんオレから離れないよーに!絶対に!」



「なんだテメーは・・お前は病院行けよ・・」




結局、ここで帰ってしまうと、黒やんが横須賀に借りを作ってしまう事になると判断したらんは苛立ちが増しつつも予定変更を変更して額から血を流しながら黒やんの腕を引っ張りカダンへ向かった。



タクシーの存在はすっかり忘れています。






そして、黒やんとらんが偶然出会っていた頃のオレらといいますと、合コンなのになぜか微妙な緊張感を保ちながら、職務質問のような坂本への質問が続いていた。




「さ、坂本君って血液型とか何型ですか・・」



「A型」



「はあっ!??」



何から聞いていいのかわからない女の子が聞いた当たり触りない質問の答えがあまりにも衝撃的でオレは思わず一人で叫んでしまった。



こ、こいつA型なのか!?嘘だろ、絶対検査し直した方がいいよ、だって一切A型の要素ないもん。


と、A型のオレは思う



「嘘ついてんじゃねーよ!!」



「嘘じゃないし、だって親二人ともAだからA以外ありえねーんだよ。アキフミもAだし」



「アキフミさんは分かるけど、お前はAじゃねーよ!!」




マジかよ、知らなかった。つーかオレ何気に坂本の血液型とか今まで知らなかったんだよな。


そういえば誕生日とか星座とか動物占いとか


何もしらねー。
今日初めて合コンで知ってしまった。なんかすごい微妙なんですけど。



「てかさー、みんな学校クラスとか別?」



「あ、私とこのこは同じでー、あとはみんな別。」




血液型の話のはずだったのに、突然の坂本の謎の質問により、女の子達の学校でのクラスが判明する


なんだこの質問は、こんな事聞いてどうすんだ。
つーかいきなり話飛ばす奴だなー。



「ふーん、文化祭とか体育祭とかいつあんの?」



「え、体育祭はもーすぐだけど、来てくれんの?」




なんかやけに高校生っぽい会話してんなー、似合わな過ぎる。坂本。



オレがそんな事を考えながら坂本を見ていると、突然坂本が横目でオレの方をチラリと見て、椅子を引き女の子達から若干距離を取る。


そして、そんな行動で戸惑っていたオレの肩を引きよせ小さいけど弾んだような声で耳打ちをされた



「ねー、この人達の体育祭でクラス全員カッパTで揃えてくれたらこっちにいくら入るかなー」




こいつ!!そうか、さっきのクラス確認はそうか!だからか!



こいつ銭ゲバか!!





「えー!!二人で何話してんのー!教えてよ〜!」




違います!みなさん!


こいつは銭ゲバです!

何が違うか訳わかんねーけど!!


とにかく違うんです!!

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