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49ケン心
こんな事一切予想してなかった。
例え、オレが坂本を好きにならなかったとしても


合コン、懐かしい響き。昔はオレも好きだったよ、手島とかとよく、特に夏とか。


けど、そんなふうに遊べるパワーはもう枯れて、一抜けしたつもりだったのに



なぜ、今頃合コン、しかも坂本と。


おかしい、オレの意志じゃない。


坂本とラブしたいだけだったのに、意味が違う。







【ケン心】






オレと坂本が現地に到着する十数分前、手島はまだ電波ネットワークを巡らせて働いていた





「あ!もしもし!黒やん!?」



「おー、久しぶり、何?」


「ちょっとどうしても話たい事があってー、オレ今あのでっかい道路沿いにあるカダンって店にいるんだー、本当悪いんだけど今から来れない〜?」



「今からー?めっちゃ人多いとこじゃん。オレ今バイト終わったばっかでツナギなんだけど。浮くし」



「大丈夫だってー!!お願いお願い!黒やんにしか頼めねーんだー!」



「あ、でも弟が学校で喧嘩して(女と)窓ガラス割ったから仙山にガラス代払いにいかなきゃ」



「えー!!お願いー!どうしても今日じゃなきゃ駄目で〜!!黒やんが来てくれるかにかかってんの!オレの運命」




「え〜・・分かった、じゃー後でね」




黒やんの必死に頼まれると断れない部分に付けこんだ手島は微妙に嘘をついて黒やんもゲットしていた


あいつ、後でどうせばれるのに、怖くないのか



それでもまだ合わない人数に焦り、黒やんとの通話を終了した後も休まず次に掛ける。





「もっしー!らん!?起きてた?」



「お〜、てしマックス〜、起きてるっつーね〜ん」



「ねえ今暇じゃない?」



「アハハー超暇、ずっとスカパー見てた〜」



「あのさー合コンで男超足りないんだー!らんちゃん来てくれたら超嬉しい!」


「え〜合コンかー、アハハ駄目駄目、もしかしたら黒やんがバイト終わってからうち来るかもだしー、やっぱオレもあんまチャラけてばっかだと黒やん怒るかもだしー」



「え、全然大丈夫だってー!!黒やんも来るしー!」


「はい!??なんじゃそりゃ!!!!!!」



「いやー来てくれるって・・」



「いつ!?何時!?場所は!!?」



「7時にー、大通りの所のカダン・・」



「ハイハイ!!!5分で行くから!!」




別にまだそこまで急がなくていいのに、ダッシュで来てくれるというらんに、意味が分からないながらも感謝して、手島は危機を乗り越えたのだった




オレと坂本と黒やんとらん、これはきっと最初で最後の、かなりのレア映像である。




その頃、道が分からないのにオレが先を歩こうとすると、服の首元を引っ張って首を締めてくる坂本と


嫌々なのに、なぜか坂本にナビをしなくてはいけないオレは、目的地付近を並んでうろうろしていた。



カダン、確か昔一回言った事あるのに、看板が見つからない。
潰れたのかなー、いやでも手島は既にそこに居るし、そんなわけねーか。


うろ覚えの記憶を巡らせうろうろするオレに段々と苛々しはじめ地面を蹴り始める坂本




「おいテメー早く到着しろや!オレは土曜は1キロしか歩かねーって決めてんだよ!おぶらすぞ!」



「だってねーんだもん!お前も探せー!カダンって店!」



「はあ!?おちょくってんのかテメー!それならさっきからそこにあるじゃん!!」



「は?!」



いきなり逆切れしてきた坂本の指さす方向を向けば、今居る場所の三メートル程先にどでかく掲げられている「花壇」の文字。


え、確かに、花壇だけど前来たときはこんな純和風な看板じゃなくて、アルファベットのロゴでカダンだったはずなのに

これは本当にオレの知ってるカダンなのか

でも場所的にはかなりここがあやしいと思い、恐る恐る手島に確認の電話を掛ける。





「もしもーし、カダンってさー薬局の横のー?」


「だよー」


「なんか看板だけ純和風のー?」


「そーそー!着いた?入って〜!」


「え、ていうかさ、前来た時もっとポップな看板じゃなかったっけ?」


「そうだっけー?でも中はまんまだよー!んじゃ待ってるー」




ああ、手島はきっと人数集めで忙しくて気にしてる場合じゃなかったのかな


でもなんで看板だけ和風なんだよ意味わかんねえし

つーかカダンって花壇って意味だったのか、なんか英語で意味があるのかと思ってた。

花畑ですかい、めでたいですね。



予想外に変わり果てていたカダンの風貌に先行き不安なオレ。


そんな事はありえないと自分で分かっているけど、坂本はちょっとでも不安じゃないのだろうか


オレがこの合コンで誰かといい感じにならないかとか、そんな想像。


もし、そうなったら坂本は、オレが好きと言った事も忘れるのかな


あいつになんのデメリットもないっぽいし

坂本のアホ、金の亡者。





「何人くらいくんの?あんま少ないと大して稼げないしー、値上げしよっかなーカッパTー、ねーどーおもうー」



「すればいいんじゃなーい」



「何そのやる気ない態度」



「だってどうせ頑張ってもオレになんにもくれないんでしょ、ケチ」



「ああ?前ウサチョンやったじゃねーか、馬鹿。贅沢者」



「あれは結局お前がチョイスしてきたじゃねーか!!つーかお前もウサチョンって言ってんのかよ!マギーだっつーの!」





別に分け前が欲しい訳じゃない、オレが欲しいのは坂本だ。


一言でいい、言った事、次の日には覚えてなくてもいい


好きとか、愛とかややこしい言葉じゃなくて、お前と居るの楽しい、だけでいいのだ



言ってくれれば、何百枚だってTシャツ売ってやるよ、もうそういう職業についてもいい。




「坂本、怒って伸びる子もいれば、褒めて伸びる子もいるんだよ・・」



「ハイハイ、得意の意味わかんないポエムは今度聞くから」



「ポエムじゃない!!」




もう、本当にオレ心が分かってない男だよ

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