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48言えばいいのに
あれからのオレと坂本は、端から見れば特に変わった事はない。



でも、オレの中では少し変わったように感じていた、何度も気のせいかな、と思う程微妙な事ばかりだが



例えば、前より坂本はオレの家によく居る。
そしてオレの物を自分の物かのように勝手に使う。


うーん、前からだったっけ。


よく分からない。



今も坂本は、なぜかオレのスウェットを履いて、なぜかオレの部屋にテレビとDVDをセットする事に夢中


当たったらしい




「ねーあのさー」


「うるさい、話かけんな、今テレビの日付機能設定してんだよ、間違えたらタイマー録画出来ねーだろ!バーカ!!」



うーん、ラブとは言いにくい





【言えばいいのに】





テレビ当たったと嬉しそうにうちに来た坂本を、こっちも嬉しい心持ちで迎えてから1時間。



ほとんど会話をかわす事も無く、坂本はリモコンと説明書にしか目を向けない。


なんなんだ、こいつ!なんでうちに来たんだよ


なんで自分のテレビをオレの部屋にセットすんだよ





「おい、せっかく当たったのに、何でオレん所持ってくんだよ、自分の部屋につけろや」



「だってオレの部屋あるし、二台もいらねー」



「オレの部屋にもテレビはあるじゃん、DVDはないけど、オレも二台もいらねーよ。今あるやつどーすればいいんだよ」



「リサイクルショップに売れば」




こんにゃろう!地デジ対応が当たったからって調子に乗りやがって


つーか、オレの部屋に置こうとしてるくせに、さっきからオレには一切触らせてくれないし、意味不明なんですけど



自分のテレビを馬鹿にされ、1時間放置状態のオレは言いたい事は山ほどあったが、堪えて、ただ機会と戯れる坂本の背中にガンを飛ばした。



すると、ようやく坂本は基本的な設定が完了したようで、リモコンをほうり込投げ、クルリとオレに首を向ける。





「っしゃー、終わった。あ、これお前の部屋に置くけど、坂本のテレビってゆーの忘れんなよ、オレががいない時に見るならちゃんとお借りしますって電話で報告ね」




あ、やっぱりそういう事なんですね。

つーかオレの部屋を坂本の別荘にしてんじゃねーよ、こいつ!



しかし、1時間放置状態のオレにとって、そういう言い分を怒鳴る、という事は、今やりたい事ランクの上位に入ってくれない



「・・メールでもいい?」


今やりたい事、坂本と会話。


うーん、やっぱ、やっぱ、なんかラブっぽくねー!


相手公認の片思いみてー!どうしてこうなる!




「やむえない時ならよし、じゃ、オレ、ケンの小学校の頃の作文見て笑お」



「はあ!?何それ!1時間ずっと待ってたのに、またオレ暇じゃん!つーかオレの小学校の頃の作文なんて、どこにあるか知ってんの!?オレすらどこにしまってあるか覚えてねーし!」



「知ってるにきまってんだろー、そんなん誰だって知ってるっつーの」




「誰だって知ってるわけねーだろ!」




ちきしょう、最近やたらうちに居る坂本。
オレがいない時にも居たりするから、きっとかーちゃんが余計な事を教えたに違いない。


けど、そんな事より、坂本なんでうちに居るのにオレに構わねーんだよ!

作文なんか読み始めたらまたそっちに集中してオレは放置だ


せめて1時間大人しくしてた事を褒めてから読めよ!




「オレは切ない」


「切ないんだ」


「勝手に部屋のテレビを二つにされて・・作文を読まれて笑われて、ねえとりあえず一秒くらい愛してみない?変な意味じゃなくて」


「あーオレはhitomiしか愛さないって決めてるから」


「お前本当hitomi好きなー」



坂本の好きな芸能人は、hitomi、ただし歌は有名なやつのサビしか知らない


(※hitomiがパッと思い浮かばない方、すみません。)



ああ、完璧にあしらわれてる


「とにかく、なんか、なんか下さい」



「例えば?」



「坂本ラブ・・・」



「うん、オレも坂本ラブ」


「違う!!!こういう場合、お前はケンラブって言えよ!!」




坂本絶賛大会じゃねーんだよ!

オレとは全く一緒じゃないかもしれないけど、いい加減お前もちょっとは高柳健を気にいってるだろ!


だって本当、本当、もう思い上がっても罰当たらないくらいさ


最近、ずーっと一緒いるじゃん!オレ達、なぜか。



その間に、何回チューしました?いつも特に説明のないあれはなんなんですか?


もう限界です、名前を付けて下さい。




「言いなさい」


「やだー」


「言うだけじゃん!」


「その台詞のセンスを認めたくない、お前、そんなセンスの言葉を言わせるなんて、オレに恨みでもあんのかよ」




ヒッデー!!!いいじゃん、いい言葉じゃんケンラブ!


笑いを堪えながら、オレの胸キュン不動のナンバー1の言葉を馬鹿にしてくる坂本。



もうこうなったら根性比べだ、絶対どうにかして坂本にケンラブって言わせたい
言わせる、頭を使って←(無駄)





何がおかしくてこうなったのか、なぜかオレの心に坂本への闘争心が芽生えてきたその時


突然ベットの上で振るえだすオレのケータイに意識を反らされる


着信表示は、手島



「あいあーい?何?」



「ケンケン!?マジマジマジ一生のお願い!怒らねーでね!今からひとっ走り合コンに参加して!」



「はあ!?」



珍しく危機迫った様子の手島から言われた言葉が予想外過ぎてオレはすっとんきょうな声を出す


手島はオレが絶対に合コンに参加しないと知ってるのに、一体なにがあったんだ



「あのね、今日彼女の友達から合コン頼まれてーずっと前から数集めたんだけど、急にみんなブッチしちゃってーどんだけ!ってほど数足りないんだ!その子、オレと彼女くっつけてくれたみたいな子でーマジ断るとか無理で、オレピンチ!みたいな?」




「えー!?オレ無理よ!特に今ちよっと対戦中で、つーか彼女出来たんだ!彼女いんのに合コン開くなよ、お前本当合コン好きなー」



「オレにとって合コンはもう合コンじゃないんだよね!もう合コンはオレの仕事なのよ、彼女も頑張って仕切って!って言って超期待してくるし、マジ頼む!」



かなり熱くオレを説得してくる手島には悪いが、オレは今自分の恋愛の一番の勝負時で、合コンなんてそんないつも以上に行ってる場合じゃないっていうか



どうやって手島に断るか考えていたら、すっとオレの手から消えるケータイ。



軽くなった手の感覚に、嫌な予感を覚える




「はいはーい、坂本でーす、何時から?」



「は?坂本くん!もうすぐ!7時から!」



「オッケー!ケンに場所メールしとけ!」



「マジでー!!?二人ゲット!チョーラッキー!!しかも坂本くんとか超レア!分かった!ありがとー!」



オレとの通話時間の半分程の早さで切られたケータイ。


目の前の展開にオレはど肝を抜かれる




「坂本、分かってんの?合コンだよ?」



「分かってるよ、ラッキーもう赤高ではカッパT売るだけ売ったから違うルート欲しかったわけよ」



「え?合コンでカッパT売るの?」



「そう」




なんで、せっかくの、坂本と二人の休みの日で、オレの部屋に居たのに



なぜ、2時間後には二人で、合コン




「嫌だー!!やめよーよ!坂本ー!!二人で家にいればいいじゃーん!!」



「ごちゃごちゃ言わない!!こっちはTシャツに百枚カッパ刷ったばっかりで金がねーんだよ!!」



「テメーはユニクロかよ!!!」



ああ、全然ラブじゃない



一人で合コンに行くのと、坂本と二人で合コンに行くの、どっちがマシか


結論は出ないうちにオレは金欠の坂本に連れられて、家を出たのだった

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