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38恋かよ
突然、ぽろぽろと零れ出し止まらなくなってしまった涙。

そんなオレを見て逆に冷静になってしまったらんは、ひたすらとめどなく流れるオレの涙を感心したかのように見つめる



「よく泣くね〜」


「なんか、感情移入・・」

「え、それ言っちゃうと、ケンケンも誰かに恋してるって事になるけど」


「・・・恋ですか?」


「オレそうとっちゃうけど、いいんですか?」



いいんでしょうか!?




【恋かよ】




恋をしている、と言うのなら、必ずしも重要な問題が出てくる



「誰に・・?」



オレは泣き過ぎて少し掠れた声のまま、自分の事なのにらんに尋ねるというお門違いな事をしてしまった。


らんが答えられる訳ねーだろ、こんな事。何言ってんだよオレはもう。



「・・言っていい?」



なんですって!?

オレは返って来ないはずの予定だった、らんの返事が返ってきたことに驚愕し、思わず身をのり出してらんに迫る



「言っていい、って何・・?」


オレに迫られたらんは少し困った顔になって、目を伏せる。

オレは数秒の沈黙にも耐え切れず、らんに知りたいとせがむ視線を送り、頷く。

嫌な緊張感、変な汗で手が湿る。




「あきおくんでしょ」




らんが、ポツリと呟いた言葉に、オレの世界は止まった。





翌日、今日も平日、オレの世界が止まろうが、他の世界はそんなの気にせずいつも通り動く。


オレはまだ抜け殻のまま、頭の中で一秒たりとも他に気を移す事なくらんの言葉を繰り返していた。


あきおくんでしょ


オレが恋しているのは、坂本、という意味。


有り得ない、だって坂本は男だしオレも男だし、オレは今までの人生で好きになったのは女だけだし。


その前に、なんでそんなにさらっと坂本が出てくるんだよ。
違和感があんだろ、恋って言葉と坂本を並べちゃ



「だって他に誰もいないじゃん」



確かに、高校に入ってからは極力的に女との結び付きを避けてきたオレは、誰かに紹介すると言われても、合コンに誘われても、それを頑なに拒んできた。


それを知っているらんは、オレに他の可能性が無い事を主張する


でもそれなら、そんなオレなら恋してるって事自体、有り得なくないかい?



「あんな泣かれた後に言われても」


はい、そうでしたね。でも、やっぱおかしいわ、オレ本人がこんなにおかしいと思ってんのに、どこに他からそう読み取れる要素があんだよ


「だってケンケン、あきおくんに呼ばれたらスゲー嬉しそうな顔でついて行くじゃん」



・・だって嬉しいんだもん。


って、これは微妙じゃないか、何うかつな事思ってんだオレ

↑(誰に聞こえてるわけでもないのに焦るケン)


なんだかんだでらんとモメたまま、結局どっちつかずな状態で今に至ってしまっているが


オレは分かっている、これはちゃんと知っている。

オレは坂本のやる事なす事は好きなんだ、めちゃくちゃだけど、見てて気持ちいい、ぶっ飛んでるけど、なんだか明るい。


坂本と居れば割といい風が吹く、嫌な事も思い出さないで済む。



そういう意味で好きなら好きなんだろうけど、横須賀くんが現れたりらんの気持ちを知ったりでそんな環境に流されて、それを恋とかなんとなにしてしまったら


してしまったら、どうなんだろ。




オレは机にうつぶせたまま、何だかこの話は忘れてしまった方がいいような気がした。


元々、真面目に考えてたわけじゃないし。


そう自分に言い聞かせようとしたら、心の反対側で何かが刺さって痛い感触。



まあ、あの薄い眼の色も結構好き、もうこれで許してくれと


オレは一行に治まらず強くなっていく痛みに、なぜか必死に訴えかけていた。


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