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18あいつは可愛い年下の男U
桜の花びらが降り注ぐ赤高一の春色スポットで、そんな美しい場所に相応しくないカツアゲ紛いの事をやっている男、坂本。



「これが黒、これが白、これが紺。そんでこれが限定のピンク。全部三千円百円でいーぞ。」


「坂本さん、もう全部買ったじゃないですか、去年。持ってますよ。なぜか限定のはずのピンクも」



中央中出身のはずの坂本と鳩中出身のはずのヒコボーとの関係は一体なんなのだと気になって仕方がない。

ただ、善良な関係では無いというオレの予感はヒコボーの胃が痛そうな顔からして、ばっちりドンピシャだと思う。






【あいつは可愛い年下の男U】





「あれはオレらが中二の頃だったかな」


坂本から遅れて数分後、オレらの元にたどり着いた、疲れた表情の黒やんは語った。
この疲れた顔を見ると彼にとって坂本と同じクラスという事実はオレらが思っていた以上に直接的ダメージが大きいと分かって、さっきあれだけ笑ってしまった事がちょっと申し訳なくなってしまった。



「オレとらん、後輩の中でもヒコボーと一番仲良くしてて、坂本の前でもちょくちょく名前出してたんだよ、あいつオレらの周りにはあんま居ないタイプだったから坂本も興味持ってたらしくて、ある日いきなり鳩中にやってきた。」



「それで?」



黒やんは、そのときの記憶を鮮明に覚えてるらしく苦笑いでオレを見つめ、話を続けた。




「ケン、前赤高の集まりで坂本が白井に言った事覚えてっか?」


「え、何だっけ?」


「『なんか面白い事言って』ってやつ」



黒やんに言われ、オレもあの日の事を思い出した。
あの言葉になんか意味があるのか、オレはあのときそんなふうに意識して聞いていたわけじゃない。
黒やんの言葉の意味がよく分からなかった。



「でも、黒やんそのときまだ来てなかったよね?なんで知ってんの?」



「後から、らんに聞いた。らんもヒコボーん時と被ってたからよっぽど白井が気にくわないんだろうってウケてたんだよ」



「は?」



「最初、坂本はヒコボーの事を気に食わなかったんだよ。頭も顔も性格もいいとかそいつスゲーつまんないって」



前に黒やんから聞いた、坂本のつまんないは悪、という常識。
オレはそれを思い出し、その後どうなったのかが気になって仕方なかった。



「どこで調べたのか迷わずヒコボーのクラスに行って、それ言ったわけ。周りの友達も坂本明男を知ってたからビビりまくって離れて、坂本とヒコボーの一対一。」


続きを聞くのが恐ろしかった。でも、今の様子を見れば、坂本がヒコボーを嫌っているようには思えない。
オレはただ黙って向こうに居る坂本とヒコボーと、黒やんを交互に見た。



「フツーなら白井みたいな反応だろ。訳わかんねーし。でも、ヒコボーああ見えて負けず嫌いだから、とっさにやっちゃったわけだよ。やめとけばいいのに」



「何やったわけ?」



「カッパの真似。」



真実は、オレがまったく予想できなかった事で、静かに膨らんでいた緊張感はどこかに吹き飛んでいった。

その変わり、新たなパニックがオレを襲いはじめる、あのイケメンが?なんでまた?オレが呆然とヒコボーを見つめていると、黒やんが思い出すように言葉を付け足す






「坂本がカッパカッパ言い出し始めたのもそれからだったな〜」


黒やんが懐かしむように言った言葉に、オレはドキリとした。
いきなりの、なんて説明したらいいか分からない、不安感とざわめき。


頭で理解したのは、坂本をカッパにハマらせたのはヒコボーだという事。


その事を知っただけでなんでこんなに、胸がざわつくんだ。

頭と心に違和感がある、どうしたんだ、さっきよりテンションが落ちかかっているオレ。


だって、カッパといえば坂本だろ、それがカッパといえばは本当はヒコボーでした。になったのがそんなに嫌なのか?
いや、やっぱなんかおかしい。




「はは、じゃ、じゃー今は坂本ヒコボーの事大好きなんだ。」



こんな自分の雰囲気を悟られたくなくて、オレは適当な明るい声を作り、黒やんに冗談交じりで返した。



「あー、今は見つけたら纏わり付いて離れねえ。ヒコは会う度にどんどん逃げ腰気味になってるけど」



オレの冗談に合わせて返す黒やんの言葉に合わせて、二人を見たら、さっきより余計にざわつきがデカくなってオレは自分をひっぱたきたくなった。


さっまでは笑いながら見てた二人の光景が、今はなぜかまともに見れない。

胸のざわつきがわけわからなくて気持ち悪い。



この突然の痛さが、今自分が言ったセリフが全ての原因で答えだという事を


このときのオレはわずかほども視野に入れる事はなく、まだまだ自分の中のものの正体にに気付く事は出来なかった。

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