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17あいつは可愛い年下の男
一年の入学式、一部の二年生らはいろいろ忙しいみたいだけど、ほとんどの人は暇で、オレらも校庭の桜の下でぼんやりと、自分達の後輩自慢合戦に興じていた。



「今年は城中から凄い後輩くんだよ。オレらの代にも超有名でさ〜すっげー強くて、クールで無敵の一匹狼さんって奴?」


オレは我が子ようにみんなに熱弁した。
それに負けじと、東鳩山中学校、通称鳩中出身の黒やんとらんも対抗した。


「いやいや、こっちも凄い後輩がくんだよケン。鳩中のパーフェクトって言われててさー。」


「イケメンでさあ、意地悪して合コンに連れていくとみんなから嫌がられる嫌がられる。ヒコボー元気かなあ。」


らんが呟くと、坂本の目が不吉な輝きを放って食いついた。


「へーえヒコボー来るんだー」



また何か起こりそうで、ケン不謹慎ながらワクワクしてしまいます。





【あいつは可愛い年下の男】




入学式が終わり、教室でHRを済ませた新入生の元には、部活勧誘や中学校の先輩だった二三年がザワザワと群がる。


そこいらを歩いているとオレも何人かの後輩に出くわした


「あ、ケンさんちっす!」


「ヒデアキじゃん!お前も赤高かあ!お互いリスクでかいなっ!」



「またまたそんな事言ってー!それよりマサとかフミも赤高すよ。仲間ほとんど男子高で切ないですよーケンさん合コンすんなら誘って下さいね〜」



「オレもう大人になったから合コンはしなくなったの!ま、自分らで頑張れ!」


久しぶりに会った後輩からも一番に合コンで頼りにされるなんて。
オレ本当にチャラキャラだったんだな〜とヒデアキを見送りながら思った。
手島という合コンキングが居るから安心してたのに。


「で、さっきのがケンケンの凄い後輩?」


らんがわざとらしく「凄い」を強調しながら言ってくる。
こんちくちょーこの実はテンパー嘘だと思ってるな!


「違う違う!もっと背が高くってーもっとクールなんだよ!どこいんのかなー良樹は、目立つはずなのに」


「良樹〜?もしかして滋賀良樹のこと?」



良樹の名字を出したら、らんは知っているような反応をしてきた。



「うん、滋賀良樹だけど。」


「知ってる〜、オレらのとこでも強いって有名でさー、仙山に行ったかと思ってたわ〜」



ノンノン、確かに良樹は強いからその道でこの辺のNo.1仙山高校に行くと思われがちだけど、奴はそんな看板を好まない!クールなスナフキンなんだよ。
カッコイイ〜(※ケンは先輩です)



また、オレがらんに良樹の凄さを伝えながら歩いていると、らんが何か発見して「ケンケン!オレの凄い後輩が居た!」と、オレの手を引き走り出した。





人込みの中をくぐり抜け、辿り着いたのは、サラリとした無造作な黒髪の小さい頭にスラリとしたマネキンみたいな体型の背中


なんだ!この時点で香りが違う、赤高には似合わない知的さも醸し出すシルエット。


そんな近寄りがたいオーラにらんは微塵も躊躇せず飛び付いて目隠しをした。



「だ〜れだ!」



「・・・らんさん?」



らんとは真逆で躊躇いがちに呟いた声までかっこよくて、オレはショックを受けた!なんか分からないけどショックだ。



「さ〜すが〜!ヒコはらんさん大好きだからな〜」


「つーか、らんさん以外の人からこんな事された事ないっす」



らんに頭をわしゃわしゃ掻き混ぜられながら振り返った顔は爽やかにハニカンでいた。

いや、ハニカンでる事なんてどーでもいい!
顔自体が眩し過ぎる。



「ケンケン!これが鳩中の男をうつ病にさせまくったヒコボー。」


「どうも、坂井です」



長い睫毛を伏せ軽く会釈して微笑む姿は本当にパーフェクトだった。

これが鳩中のパーフェクトか〜、恐ろしいが付くイケメンだな、手強いぜ。とオレはヒコボーをまじまじと見つめながら思った。



「ケンケン!早く滋賀良樹見つけてうちのヒコボーと戦わせよ〜よ〜!」



「よし!待っててらん!今すぐ見つけるから!」



「オレ、グワガタとかじゃないんですけど。」



ノリノリなオレ達二人に、不安気に突っ込む姿も眩しいヒコボーこと坂井俊彦は、このとき実は胸が恐怖感でいっぱいだったと後で語ってくれた。


それは、らんと再開した事で、本能的にある人物警報が鳴ったからだ。



「あ、そーいえばらんさん、黒川さんは?」



「黒やんとあきお君はまだあいつらの教室だと思うけど」


「坂本さんと一緒・・」



坂本の名前が出たとたんに明らかに顔を引き攣らせたヒコボー。
これは何かあるな!とオレは直感で感じた。



本当はさっさと立ち去りたかっただろう、ヒコボーの元にこのニ秒後、意外に器がでかい彼が唯一赤高入学で不安に思ってる原因人物の声が届いた。



「ヒ・コ・ボ!はい、カッパT、三千円。」


もちろん、本当は二千円のはずのカッパTを持って迫ってる坂本明男の事です。

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あきゅろす。
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